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セキュリティー対策に悩む中小企業に“ちょうどいい”UTMを! バッファローが出した答えとは?

 株式会社バッファローは、法人向けVPNルーター「VR-Uシリーズ」において、UTM(統合脅威管理)機能を追加する拡張ライセンスパック「VR-UTMシリーズ」を発表した。

 VR-Uシリーズは、10GBASE-Tに対応した有線VPNルーター「VR-U500X」(60,280円(税込)※ )と、Wi-Fi 6に対応した無線VPNルーター「VR-U300W」(38,280円(税込)※ )が発売されている。そこで最新のファームウェアに更新し、VR-UTMシリーズのライセンス(1年ライセンスで21,780円(税込)、5年ライセンスまで用意)を購入することで、UTM機能を利用できるようになる。

<3月1日 追記>
※VPNルーター「VR-Uシリーズ」本体は、2024年4月1日に価格改定の予定。

 バッファローでは今回のUTM製品を「中小企業にちょうどいいUTM機能対応ルーター」として打ち出している。そこで、中小企業におけるセキュリティー事情と、そこでのUTMに対するニーズ、それに対してバッファローが目指したものについて、バッファロー 事業本部 法人マーケティング部長 富山強氏に話を聞いた。

株式会社バッファロー 事業本部 法人マーケティング部長 富山強氏

中小企業はUTMの必要性を認識していても約75%が未導入

 コンシューマー向け機器のイメージが強いバッファローだが、法人向け事業でも中小企業を中心に多くのシェアがあると、まず富山氏は説明した。

 バッファローは現在、全国13拠点に、法人向け事業の営業部門を配置している。主要な拠点にはフィールドエンジニアも配置し、技術的なサポートをしている。

 法人事業ではエンドユーザーへの直接販売は行っておらず、ほとんどパートナー経由での販売。そのため、販売パートナーへの販売支援や技術支援を行う「VARパートナープログラム」も設けており、登録ユーザー数で約11,000名、登録事業所数で約4,200社にのぼる。

 このようにバッファローが法人向けにネットワーク機器などを販売する中で、セキュリティーについて、SOHOや中小企業も差し迫った対策が必要な状況にあると考えていた、と富山氏は語る。「ランサムウェアも、以前は比較的大きな企業が被害を受けていました。しかしここ数年は、中小企業の被害も増えていて、本当に身近な課題だと感じています」(富山氏)。

 中小企業では、情報システム専任の担当者がいないなど ITリテラシーがそれほど高くないところも多い。そのため、ネットワークセキュリティー対策が脆弱なこともしばしばある。

 「最近のセキュリティートレンドでは境界線防御だけじゃ不十分という話もあります。ただし中小企業ではその前にまず、脅威を受ける境界線、外との出入口のガードを固める必要があると考えています」と富山氏。「近年では特に、さまざまな経路で脅威が入り込む可能性があるので、そこを可能な限り適切に塞いでおくために、UTMが有効だと考えています」。

中小企業のランサムウェア被害状況

 バッファローは、中小企業のセキュリティーに関する調査を実施した。それによると、中小企業の8割以上が「セキュリティー対策の重要性が高まっている」と実感していると回答している。また、さまざまなセキュリティー対策がある中でも、73.4%がネットワークセキュリティー対策として「UTMが有効」と回答している。

 ただし問題は、UTMの重要性を認識していても、75.2%がUTMを未導入と回答していることだ。理由としては、初期導入コストやランニングコストが高いから、といった声が挙げられている。

 「対策としてどういうものが有効であるかある程度分かっているけれど、さまざまな懸念があって踏み込めないというのが、日本の中小企業が抱えるセキュリティー上の大きな問題じゃないかと思います」と富山氏は語る。

中小企業の73.4%はUTMが有効と考えつつ、75.2%が未導入

「中小企業にちょうどいいUTM」として低価格かつルーターのワンパッケージに

 バッファローは、このようなSOHOや中小企業にとってUTMの導入ハードルが高い課題を解決する「中小企業にちょうどいいUTM」として、VPNルーターのUTMライセンスパックを発売した。

 導入ハードルを解消するポイントとしては、まず価格がある。バッファローの法人向けVPNルーター「VR-Uシリーズ」は4~6万円台。そこにUTMのライセンスを追加するだけで、UTM機能を利用できる。ライセンスは1年から5年までの5種類を用意。1年ライセンスで21,780円(税込)、5年ライセンスで105,600円(税込)と、比較的導入しやすい価格だ。

 「UTM専用機も検討はしました。しかし、中小企業に新しい機器を買っていただき、さらにそれをほかのネットワーク機器と組み合わせてというのは、なかなかハードルが高くなります。使いやすく運用しやすいということで、ルーターのワンパッケージで提供するのがいいと考えています」(富山氏)。

UTMライセンスパックの特徴と価格
※VPNルーター「VR-Uシリーズ」は2024年4月1日に価格改定予定。

 この価格でもUTMで一般的な機能は網羅している。IDS/IPS(不正侵入検知/不正侵入防止)や、Webフィルタリング&アプリケーション制御、Webレピュテーションだ。

 Webレピュテーションとしてブロックする先の情報の参照元として、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機)のものを使っているのも特徴だ。「日本のお客様に必要な日本の脅威について、より適切で検知率の高いセキュリティーを実現できるのではないかと思っています」(富山氏)。

 バッファローには「商品は世界基準で 商売はしょうゆ味で」という原則があるという。この言葉は、商品は世界基準に則したものにし、売り方やサポートサービスは日本市場に最適化したものにするという同社の企業姿勢を指すものだ。海外の仕様をそのまま持ってくるのではなく、国内エンジニアが自社開発で日本のお客様に合わせた独自のローカライズをする「しょうゆ味の開発」を行っており、これはその工夫の一つだという。

UTMライセンスパックのUTM機能

クラウド型管理サービス「キキNavi」で、販売パートナーによるサポート展開を狙う

 運用管理や、インシデントが発生したときの対応も、中小企業にとってはハードルとなる。そこでバッファローは、クラウド型のリモート管理サービス「キキNavi」(無料)を用意し、遠隔地からでもインシデント発生状況を見られるようにした。脅威の種類ごとに、発生日時や検出回数、発生したデバイスなどを可視化できる。緊急性の高いものについては、メール通知もできる。

 前述したように、バッファローの法人顧客においては、販売パートナーがサポートなどの窓口となる。キキNaviにより、そうしたパートナーがUTMの運用管理やインシデント対応を請け負うこともできるようになる。

 「キキNaviを提供することで、販売店様がそれを付加価値として展開できるようにするというのも、キキNaviのコンセプトの一つでした。販売店様とお話して、ぜひ進めていきたいと思っています」(富山氏)。

クラウド型のリモート管理サービス「キキNavi」

UTMを有効にしても通信速度が落ちにくいようチューニング

 もう一つ、VR-UシリーズのUTM機能でバッファローがこだわったのが、通信速度が落ちにくいことだ。

 UTMは通信内容を検査するため、どうしてもUTMを入れない状態に比べると通信速度が落ちる。バッファローが事前に販売パートナーにヒアリングした際にも、速度低下についての懸念が多かったという。

 「UTMを入れたりファイアウォールを有効にしたりすると、ものすごく速度が落ちてユーザーさんからクレームが来る。できる限り速度低下のないものがいい、という声を多くの販売店さんからお聞きしました」(富山氏)。

 既存のVR-Uシリーズを使う以上、大企業向け製品のようにハードウェアスペックによってカバーするというわけにもいかない。「2か月ぐらいかけて、200回を超えるトライアルアンドエラーを繰り返して、速度が維持できるようチューニングしました」と富山氏は語る。

 それにより、UTM無効のときに比べて、VR-U500Xで約76%、VR-U300Wで約75%の通信速度を維持したという実験結果となった。「とある他社さんのルーターで同じ条件で実験したところ、速度が半分以下に低下するということがありました。VR-UTMの速度の落ちにくさは、当社開発者の徹底的な品質へのこだわりを示すもの」と富山氏は優位性を主張した。

UTM有効時のスループット低下を抑えた

これまで選択肢のなかった新しいUTM市場を作る

 このようにバッファローではVR-Uシリーズで中小企業の導入しやすいUTMを目指した。新たにUTM市場に参入したわけだが、これについて富山氏は「エンタープライズ向けUTMの市場を取りに行こうとはまったく思っていません」と狙いを説明する。

 上で紹介したように、中小企業では、セキュリティーの重要性やUTMの必要性を理解していても、未導入が75.2%となっている。「エンタープライズ向けのUTMは、必要とするお客様にはいいのですが、今回対象とした中小企業のお客様にとっては機能もコストも過剰なケースがあり、その場合は選択肢に入ってきません」と富山氏。「選択肢のなかった市場に、中小企業のお客様に必要十分なものを国内で提供することで、新たなUTM市場を作っていけると考えています」。

 一部の販売パートナーには、開発中製品の事前テストに協力してもらった。そうしたパートナーからは、まさに「ファイアウォールと高価なUTMの隙間を埋めるというコンセプトのとおり、価格や機能はちょうど良い塩梅だと思います」「規模の小さな事務所や営業所へ提案できる価格帯で、弊社でも運用管理可能な製品だと思いました」「ルーター・UTM・Wi-Fiアクセスポイントがオールインワンで、コンパクトで安価でパフォーマンスもよい。小規模のお客様へ提案していきたい」と、コンセプトどおりの反応をもらっているという。

 最後に改めて富山氏は、従来のUTM製品を「海外のハイブランドの服」にたとえて説明。そしてバッファローのUTMの目指すところを「日本人の体格に合い、品質とコストパフォーマンスを備えた、一般の人が着るのに満足度の高い服」にたとえて、「そういうポジションになりたいと思っています」と語った。

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☆特集ページ(バッファロー)
バッファローのUTM機能対応ルーター
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