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市場拡大の中で差別化が加速! ソフトウェア主導で実現するHCIの新たな付加価値とは

市場が急拡大する中での競争の激化により、HCI(Hyper Converged Infrastructure)ベンダー各社は自社の強みを生かしたソフトウェアによる新たな付加価値提供に本腰を入れるようになっている。競争をけん引するのが、ソフトウェアによる適切なハードウェア制御を通じてクラウドライクなオンプレミス基盤の実現にいち早く取り組んできたのがNutanixだ。同社が提供する新機能はどのようなものか。また、企業にどんな利便性をもたらすのか。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社の池亀正和氏と、株式会社ネットワールドの大倉和仁氏 が、進化するHCIの“今”について語り合った。(文中敬称略)

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 ソリューション推進本部 HCIソリューション HX(Nutanix) ビジネス開発マネージャーの池亀正和氏(左)、株式会社ネットワールド マーケティング本部 インフラマーケティング部 データセンター課 主任の大倉和仁氏(右)

アプリケーションによる差別化競争が本格化したHCI

――大規模化するほど複雑さが増す3Tier型(サーバー群と共有ストレージをネットワークファブリックで接続するシステム形態)の課題解消の策として、約10年前に登場したHCI。その利用が急拡大する中にあって、HCIは今、新たな進化の段階に差し掛かりつつある。

大倉 HCIの本来的な狙いは、仮想化技術でのリソースの統合管理を通じた管理性の向上、ひいては設計や拡張時の各種ファームウェア管理の煩雑さの解消にありました。Nutanixを皮切りに各社も製品を相次ぎリリースし、それらは仮想化ミドルウェアに違いはあれ、基本機能はそう変わりませんでした。

 しかし、HCI市場の競争激化を背景に状況は変わりつつあります。ベンダー各社が得意とする領域での差別化の進展がそれです。その意味で、HCI製品は管理性に主眼に置いた第一世代から、新たな付加価値を訴求する第二世代への移行が本格化しています。

 競争をけん引するのがNutanixです。同社はパブリッククラウド連携を柱に、“幅”と“深さ”の両面での新機能による価値提案にきわめて意欲的です。

池亀 Nutanixにとって、それは自然な流れでしょう。Nutanixの創業メンバーにはグーグルの大規模ストレージ環境を構築していたエンジニアがおり、クラウド同様の使い勝手をオンプレミス環境で実現することを目指して製品化されています。世代を問わない標準的なサーバーと「ソフトウェアによる制御」という、SDI(Software Defined Infrastructure)の設計思想が最も体現できているソリューション製品になっていると説明しています。

 物理的なアクセラレータを組み込んだHCI製品やハードウェア構成に依存する製品は、パーツの世代や、異機種間・異構成や異世代間の連携、アップデートの制約事項に問題が生じる事が予想できてしまいます。その点ソフトウェア主導のNutanixはソフトウェアを主体した設計の為、アップグレードや、増設、パブリッククラウド連携もし易い製品になっています。

最新OSから見るNutanixの進化の方向性

池亀 今後のオンプレミスの在り方を示すキーワードとして「Newオンプレミス」を中核とし、オンプレミスにクラウド環境を構築する事が注目されていくのではないでしょうか?

 その際、「堅牢性」「可観測性」「新たなビジネスアーキテクチャ」「利用者によるコントロールのし易さ」「サスティナビリティ」などの視点から採用するソリューションや製品の選定が行われていくと予想しています。

 Nutanixは現時点ですでに一定の成果を上げています。何点か上記で説明したNewオンプレミスに求められる要素を簡単に説明させてください。

 まず「可観測性」では、Webベースの管理ツール「PRISM」による、オンプレミスとクラウドを問わない仮想化基盤の状況把握、制御機能の提供、かつ数値等による客観的な可視化を実現しています。内部で起きている事を1つのView(ダッシュボード、レポート作成機能含む)で階層や、機器構成に依存しないで把握できる事はクラウドをオンプレミスに作る上で重要な要素だと考えます。これまで皆様は、サーバー用、ストレージ用、ハイパーバイザ用、接続機器用といった形で管理機能がそれぞれに存在していて問題解決の原因の特定に時間を要してしまうだけでなく、解決に時間や結果として多大な影響を与えてしまう事を既に経験されてきていると思います。

 「新たなビジネスアーキテクチャ」に関してはクラウドを利用していると事業者がHWのリフレッシュ(入替え)作業を実施していても利用者はそれに気が付かずに利用をし続けられると思います。これがオンプレミス環境でも同様にできなくてはならないという事になります。

 従来の構成ではストレージを刷新したらサーバーを付け替えるといった作業を計画からテスト、戻し作業、本番と気の遠くなる様な準備に時間を費やしてきましたがNutanixで構築する環境においてはクラウド同様にHWの追加や削除を利用者はまったく意識する事なく完遂する事ができてしまいます。他のHCI製品ではどうか?という部分において条件が揃えば近しい事ができますが、異機種・異構成・異世代の柔軟性がどこまで対応できるかによって差がでると考えております。

 ここでは長くなってしまうので最後に「利用者によるコントロールのし易さ」についてお話させてください。

 こちらは利用している環境を利用者はどこまでコントロールする事ができるのか?という視点の話になります。2点お話をしますが1点目は複数の環境を借りた場合です。ハイパーバイザ製品を統一して相互利用をより円滑にしていきたいと考え導入を決めるケースがありますが、事業者側の運用計画は個々に実行されていくと思います。気が付くと、複数の環境同士でバージョンの不一致状態が発生し、特に自社(オンプレミス)環境を事業者側にあわせると頻繁にアップデート作業の計画・実行が必要となり以前よりもコストがかかり、作業者の負荷も想像以上になっているというお話をお聞きします。もう1点はセキュリティパッチなどがリリースされた場合です。自社(オンプレミス)環境であれば緊急性などを考慮し即検証・即適用といった対応が可能ですが、事業者側の環境に対して適用要請を行ったところで、即適用になる保証はありません。マルチテナントのサービスであれば尚更で、利用者はセキュリティホールのあるインフラ上で大事な業務を運用し続けなくてはならないといった事が発生してしまいます。

 しかし、Nutanixで構築したオンプレミス環境のクラウドや、AWSにベアメタルのサーバーを借りてその上に、Nutanix環境を構築した場合、バージョンアップや、パッチ提供といったスケジュールは利用者がコントロールする事が可能となります。こういった部分も利用している環境がクラウドか?だけではなく、クラウドであってもコントロールは利用者ができるべきという部分を譲らずに持つ事も重要なのではないかと考えています。

Nutanixはハイパーバイザも含めてコントロール可能にすることでユーザーの運用性を高めている

――そんなNutanixの最新OSが「NutanixOS 6」だ。果たして進化の具体的な中身とは。

池亀 Nutanixはノード3台以上の構成で2つのレプリケーションファクター(RF2)を基本にしていて、ノード5台以上ではデータの3重化(RF3)も可能ですが、高速トランザクション処理が要求されるデータベースなどでは、レプリケーションファクターを1(RF1)にして速度を稼ぎたいとの要望が多く寄せられ、NutanixOS 6ではその声に応えています。

 もっとも、RF1(ノード間レプリケーションなし)ではデータの保護が不十分ですから、別の保護手段との併用が必要です。Nutanixでは、複数のクラスター間レプリケーション機構を用意しており、完全同期レプリケーションの「Metro Availability」を使えば、データとサービスの双方を二重化することが可能です。

大倉 VAD(Value add Distributor)である当社はNutanixOS 6がIntelやAMDの次世代プラットフォームをサポートした点にも注目しています。IntelとAMDのそれぞれで最大コア数は60コアと128コアまで増え、一世代前と比べてプラットフォーム性能は劇的に進化します。必然的に集約率が向上し、筐体台数の削減による設置スペースの効率化、それに伴うTCOや消費電力などのコスト抑制が見込めます。さらに各種インターフェースも進化しているので、HCIに新たな進化をもたらすと大いに期待しています。

“万が一”の対応を支援するSecurityとNetworking

――NutanixOS 6では、HCIの運用管理を支援する機能や付加価値を高めるアプリケーションの強化も行われている。まずはネットワーク仮想化を担う「Nutanix Flow」をご紹介しよう。

池亀 Nutanix Flowは、「Security」と「Networking」の2つの側面があります。このうちSecurityは、Nutanix上の仮想マシンのクラスター内外との通信を視覚的にきめ細かく可視化する機能です。

 近年になり外部脅威リスクの急増が指摘されますが、それらが厄介なのはセキュリティの穴を巧妙に探り当て、攻撃を仕掛けることです。Securityの利用により、管理者が従来気づかなかった穴になりやすい不要なアクセス経路を事前に可視化でき、論理的な切断など被害発生前に対応に乗り出せます。

 後者のNetworkingは、マルチクラウド環境のネットワーク整備を支援するL2仮想化機能です。災害対策の一環として、いまや多くの企業がDRサイトを運用しています。ただし、切り替えに際してはDNSレコードの書き換えなどが必要で、作業の煩雑さと時間が迅速復旧の“壁”になっています。一説には切り替えた後の対応(メインサイトへの切り戻しも含め)が面倒なので、できるだけメインサイトの復旧を優先させるという方針の会社も多いとか

 しかし、L2仮想化機能を使えば、本番サイトとDRサイトを含む複数クラスターにまたがる仮想ネットワークを整備でき、切り替えの自動化が可能です。現状は自社構成のクラスター間だけで利用できる機能ですが、近い将来はパブリッククラウドに設置したNutanixクラスターにも対応すると思われます。

大倉 加えて、ファイヤウォールの設定作業を簡素化できるのも魅力です。企業のセキュリティポリシーは一般に「全社」「各部」など、組織単位に用意され、設定作業もそれだけ複雑になります。それが、管理画面でのルールの事前のカテゴライズと、組織ごとのルールの割り当てという簡単な作業で済むようになり、ポリシーのより厳格な適用が実現します。

 テレワークの広がりに伴う通信量の急増により、通信の遅延などのトラブルが多くの企業で発生しています。現状分析に向け、新たに実装したポートミラーリング機能により、通信の中身まで踏み込み把握できるようにもなりました。

3台のVMで「止まらないファイルサーバー」を実現

――一方で、既存のファイルサーバーの代替、さらに管理高度化で期待を集める機能が「Nutanix Files」だ。

Nutanix FilesはNutanixクラスター上で直接動作するため、オーバヘッドが少なくOSの更新などのメンテナンス作業を削減できる

池亀 Nutanix Filesを端的に説明すれば、Nutanixの共有ストレージの一部をファイルサーバーとして利用する機能です。

 仮想環境上でファイルサーバーを運用するときの課題がOSの更新作業です。EOS(End Of Support)が必ず訪れ、都度、作業が発生します。手法は新OSによるファイルサーバーの新規立ち上げと、人手やツールでのデータ移行が主流です。

 移行作業中はデータへのアクセスが制限されますし、何らかの原因でアクセス権の継承に不具合が生じると、データにアクセスできなくなるリスクもゼロではありません。データの重要性が増す中、この状況は決して看過できません。仮想環境で構築したファイルサーバーとなると、データを移行する際に、一時的には最大で2倍のデータを格納する領域が必要なります。

 その現実解がNutanix Filesです。最低3台のファイルサーバーVMが共有データの窓口として機能する仕組みにより、うち1台の更新作業を実施しても、残る2台で機能を維持して「止まらないファイルサーバー」を実現します。ファイルサーバーの機能やNutanixのベース機能のアップデート時でもファイルサーバーVMごとの順次作業によって、データ移行を伴わずにアップデートが完了します。

 これは物理的に容量が足りなくなった際に1台ノードを追加する作業や、ハードウェアリフレッシュによる古い機器の取り外しといった作業もオンライン中に実施ができ仮想化されたストレージ領域は自動でストレッチを行い、データの再配置も自動で適用してくれます。

大倉 Nutanix Filesではファイル分析機能「File Analytics」も見逃せないでしょう。更新日時を基にファイルの利用状況を可視化でき、社内データのスリムアップにつなげられます。指定時間内に発生した同じ様なふるまい(削除や移動など)を発見したり、ファイル名から外部脅威と判断されたファイルを管理者に自動でアラートしたりと、セキュリティ対策にも力を発揮します。ファイルごとに「ライトは1回、リードは無制限」といったルールの適用により、外部脅威によるファイルの上書きや、誤った書き込みとなども防止できます。

 こちらは研究データや、小売業の電子ジャーナルの保管といった用途にも利用が可能だと考えています。これら通常のNAS環境であれば追加で導入が必要な高額な管理機能が標準機能として提供されます。

Nutanix File Analyticsは多彩な分析機能により、ファイルサーバーの運用管理を効率化し、セキュリティも高めてくれる
File Analyticsのダッシュボード画面

用途ごとの最適化を通じ50モデルでNutanixを採用 (2023年6月時点)

――このような機能の数々からも、Nutanixにおいてアプリによる周辺機能の拡充が今後も続くことは間違いのないところだ。では、国内で販売を担うレノボはNutanixをどう提供していくのか。

池亀 当社が提供するNutanixを採用したHCI製品が、Nutanix認定の「ThinkAgile HX」シリーズです。多様な用途別に現時点で50モデルを提供し、IoT向けのエッジ向けサーバー「ThinkEdge」シリーズでのNutanix対応モデルや、SAP HANAに対応した専用モデルも用意しています。この6月には、IntelとAMDの最新プラットフォーム搭載モデルを従来と同様、当社が国内で最初に出荷を開始しています。ここからもレノボのNutanixへの力の入れ具合を理解してもらえるはずです。

 企業利用を前提に、提供方法にも一工夫を凝らしています。当社やネットワールドのようなディストリビュータがライセンスを提供し、Nutanixがサポートする「認定ノードモデル」と、ハードウェアとソフトウェアを共に当社製品として提供し、サポートまでを一元化して行う「アプライアンスモデル」の両方を用意しているのがその代表です。当社は両モデルを提供する国内唯一のOEMメーカになります。

アプライアンスモデルでの日本語による一貫サポート

大倉 夜間や土日祝日に発生した重大ではない障害対応を望む場合、認定ノードモデルではNutanixのグローバルサポートチームによる英語での対応になります。しかし、アプライアンスモデルならレノボのプレミアムサポートが仲介し、英語を一切使わずに問題の解決まで支援します。ハード側とソフト側の責任の押し付け合によるトラブル解消の遅延も、これにより一掃されます。

 アプライアンスモデルではNutanixへのダイレクトパスが新たに用意され、ちょっとした質問や相談が直接行え、返事もより迅速に得られます。

ThinkAgile HXシリーズのアプライアンスモデルは、レノボのプレミアムサポートに窓口を一本化することで、手厚いサポートを提供

池亀 料金面でのレノボの新たな取り組みが、月額従量課金の新しい支払いをサービスにした「TruScale」です。TruScaleではユーザーのリクエストに応じた柔軟な料金体系を揃えており、物理サーバーの台数課金や仮想サーバーの稼働数、サーバーの電力使用量をベースに課金にするなど多様なサービスを提供しております。ハードウェアの平均使用率が低いほど、買い切り型の分割支払いよりコスト面で有利です。クラウド利用が広がる中、オンプレミスの売り手側からの新たな価値提供を目指して実現しました。またTruScaleではハードウェアはお客様の指定した場所に設置をしますが、HWレイヤーの監視はLenovoがリモートで実施する事が可能です。つまり、クラウドをオンプレミス環境で構築したあと、唯一のこされていたハードウェアの死活監視の部分もTruScaleをご利用いただく事でリフト&シフトの「シフト」の部分になりますが運用管理の視点で実現を後押しする事が可能です。

 最新モデルではライセンス形態がサブスクリプション型に見直され、アプライアンスモデルでもFiles専用ライセンスやVDI専用ライセンスの購入が可能になりました。結果、両モデルのライセンスや機能の差は一切なくなっています。

ThinkAgile HXの最新モデルでは、認定ノードモデルとアプライアンスモデルの間に存在した機能差を解消

――とはいえ、どんなに機能やサービスが優れていても、実際に導入するとなれば、必要なリソースやライセンス、スイッチなどの検討に悩まされる企業も実際のところは少なくない。

大倉 当社は、レノボ製品を含めて主要なNutanixソリューションを提供し、また、レノボプロフェッショナルサービスにより、企業の課題を踏まえたソリューション提案から、設計、構築、運用までの一貫した支援も手掛けてきました。そこでの蓄積を基に、当社であればHCI導入を多面的に支援できます。

 ただし、検討にあたっては「百聞は一見にしかず」というのも確かです。そこで当社では現在レノボと共同して実機に触れる機会を提供出来ないか検討を進めております。イベント内容など決まり次第、別途告知していきたいと考えております。

<お問合せ先>
株式会社ネットワールド
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