トピック
共創力こそが競争力に結実する
積年のノウハウ活かし触媒に徹して変革を加速
- 提供:
- 日本アイ・ビー・エム株式会社
2022年6月24日 09:00
デジタルテクノロジーの開発に世界の英知が結集し、とりわけクラウドやAIといった領域では級数的な勢いで進化が続いている。それらは我々にとってどんどん身近なものになっており、ビジネスや日常生活に大きな影響を与えているのは周知の通りだ。巧みに活用すればビジネスを加速する原動力になる。──どうすれば生産性を抜本的に高められるのか。どうすれば顧客に豊かな体験を味わってもらえるのか。企業は日々知恵を絞り、チャレンジを続けている。旗印はデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。
中には二の足を踏む企業も少なからずあったようだが、一連のコロナ禍を経験する中でデジタルの威力とポテンシャルに否応なく気が付かされた。これまでの常識や概念にとらわれることなく、これからはどうあるべきかを究めていけば、複雑な課題を一つひとつクリアして、より豊かなものを創っていくことができると実感。まさにそれがニューノーマルである。
企業間の化学反応を触媒が加速する
過去の延長線上ではなく、新機軸を探っていこうとする時に、一社でできることには自ずと限界があるだろう。様々な専門性やバックグラウンドを備えた企業同士が交わり、議論や創意工夫を重ねることで“化学変化”が起こりやすくなり、結果として問題解決の糸口をつかむことができる。価値観の多様性こそがクリエイティビティの源泉なのだ。
そこに着目し、共創力こそが競争力に結実するとの想いで、具体的アクションを起こし始めたのが日本IBMである。根底にあるのは「日本企業がDXを加速させていくには、お客様とサプライヤー、異業種、同業種といった全関係者がアイデアや知識、経験をオープンに共有し、AIをはじめとする先進的なテクノロジーを身に付け、枠を超えて有機的に共創することが不可欠」との信念だ。
いわば「テクノロジーを活用した共創モデル」を推進するために、日本IBMはビジネス・パートナーとの共創機会に加え、お客様や関係企業との共創を促進する機会の提供を拡充している。IBM自身が企業間の化学反応を加速させるための触媒(カタリスト:Catalyst)になろうとのアプローチだ。その先駆けとなっているのが「IBM地域DXセンター」「コンテナ共創センター」「パートナーソリューション共創センター」である。
それぞれがミッションを持ちながら、大局的な観点に立った互いのコラボレーション、すなわち「共創間共創」にも力を注ぐという。本稿では、ここに軸足を置き、前出のセンターを統括するキーパーソン3人に、価値創造<Let’s Create & Be a Catalyst>への想いを伺った。
3つの共創センターが目指すもの
──IBMでは共創センター間の共創、すなわち“枠を超えた”共創により、豊かな日本ひいては持続可能な社会を実現すべく、自らがカタリストとなるのはもちろん、新たなカタリストとなる人材や機会を創出しようとしていると伺いました。まずはIBMが目指すこの共創間共創について、その活動状況や展望をあらためてお聞かせください。
井上: 私からはIBM地域DXセンターについてご紹介させていただきます。こちらは2022年1月21日にプレス発表させていただいた新組織で、ニューノーマルな働き方が進み、なおかつ首都圏と地域の格差がなくなりつつある中で、地域に根付いた企業との一層の協業を通じて地域創生に寄与し、その先で日本の社会をより豊かにしていくことをコンセプトとしています。北海道から仙台、沖縄へと展開を進め、今年後半には九州地域への拡大を図っていきます。そして今後の3年間でこの活動に関わる人材の数を、日本IBMグループ社員はもとより地域のIT企業も含めて約2.5倍に広げる計画です。
また、後ほどコンテナ共創センターやパートナー共創センターについても詳しい話があると思いますが、この2つの共創センターと連携しながらオープンなテクノロジーを提供して開発手法そのものの変革を後押しするほか、IBMならではの付加価値をもった製品やソリューションをお届けしていきます。こうした取り組みを通じて、新たな技術導入・メソドロジー実践によるDXを主導していく人材の育成という点においても地域への貢献を果たしていきたいと思っています。
今野: DXに深く関連するクラウド事業を担当し、またコンテナ共創センターの所長を務めている立場からも、私たちが住む日本や日本企業の生産性の低さやデジタル化の遅れが多方面から叫ばれている状況は、常日頃から非常に悔しく感じてきたことです。コンテナ化についても海外と比べると5年以上遅れているという指摘もなされています。
ただ、そうした中でも各種調査会社のレポートによれば、日本のコンテナ化も本番利用において30%を超えてきた状況にあります。この流れを受けてコンテナ共創センターとして日本全体のコンテナ化の機運を高め日本全体のDXを推進するために、昨年度からベンダーの枠を超えた取り組みを開始しました。まずは無償のコンテナ環境を提供したり、月1回の勉強会を実施したりといった支援メニューを提供したところ、非常に多くのSIerやパッケージベンダーの皆様から申し込みをいただきました。それから1年が経過した現在、このコミュニティの参加メンバーは約60社の700名以上に達しています。
そして今年重点を置いているのはユーザー企業の支援です。DXを推進する上では内製化が重要な鍵を握っており、IT子会社を含めたお客様サイドでのコンテナ技術者の育成が不可欠です。Windowsベースのコンテナの支援メニューも充実させることで、コミュニティ会員を100社、1000名以上に拡大することを目標としています。
西: IBMの目指す共創間共創のあるべき姿は、グローバルスタンダードのオープンなテクノロジーをベースにローカルの知見を組み合わせていく「グローカル」をコンセプトとしています。そうした中で私が統括するパートナー共創センターでは、SIerをはじめとするパートナーの皆様と一緒になってソリューションを生み出していくことを目指しています。日本では気づかなかったグローバルでのテクノロジーの活用法があれば、逆に日本特有の活用法といったものもどんどん出てくる可能性があります。この両面のアプローチを融合させ、シナジーを発揮する共創活動の場になりたいと考えています。
現在約30人の体制でチームを組み、さまざまなSIerとのセッションを開始していますが、近い将来に100名体制への拡大を図り、より広範なソリューションの創出に臨みます。そのためにも地域における人材育成や、グローバルスタンダードのオープンなテクノロジーであるコンテナを活用していく体制が必須であり、IBM地域DXセンター、コンテナ共創センター、パートナー共創センターの3つのセンターが緊密に連携していきます。
日本企業のDXに欠けているピースとは
──先ほど今野さんからもお話があったように、DXはどの企業にとっても喫緊の課題でありながら、遅々として進んでいないケースも少なくないと感じています。IBMのグローバルでの実績に照らして国内市場を俯瞰した場合、日本企業にはどんなピースが欠けているとお考えですか。
井上: 日本は社会全体としてコロナ禍を経ていきなりニューノーマルの時代を迎えたがゆえに、「変革をせざるを得ない」というまずは受け身の形でDXが進展していることにそれぞれの業界で限界が生じている気がしています。
今野: コロナ禍がDXを加速したのはグローバルも同じですが、すでに「DX第2章」というべきステージに入っている点で大きな違いがあります。欧米を中心とした企業はユーザー部門の中に技術者を含めたDX推進チームを持っており、デジタル技術を活用した重要な業務の変革が実際に進んでいます。これに対して日本では、「DX第2章」移行への壁にぶつかっている企業が多く存在します。「IT/DX組織 vs 業務部門」といった対立もあり、組織融合や枠を超えた業務変革をもっと進めていく必要がありそうです。
西: 率直なところ日本企業のDXは、あたかも「家の外壁の色を塗り替える」といった表面的な取り組みからスタートしたのが実態です。本来ビジネスをデジタライズするためには、裏側にあるプロセスや運用、ガバナンスのすべてを見直さなければならず、その基礎ができていなければDXの次のステップに進むことができません。逆に言えば、そこに向かうための知識と経験、ノウハウの提供は、私たち3つの共創センターにとっても重要なミッションだと考えています。
DXを主導する人財をどう育成するか
──その意味でも“人財”の育成は極めて重要な取り組みとなりますね。慢性的なエンジニア不足という悩ましい問題も抱える中で、より効率的にDX人財の裾野を広げていくためにどのような考えを持っていますか。
井上: 昨今、「リスキル」や「リカレント」といったキーワードを見聞きする機会が増えました。IBMではそうした“Re”に着目した人財育成だけに限らず、今持ってるスキルにプラスアルファして最先端の技術を身に付けさせる「クロススキル」という人財育成のアプローチも、伝統的な学びの文化の中で脈々と続けてきました。そうした中で培ってきたノウハウを、地域を含めた幅広い企業に提供できることもIBMならではのバリューになると考えています。
今野: 慢性的なエンジニア不足という問題は実はIBMも同じ状況にあり、リスキルやリカレントの前段階でダイバーシティが非常に重要であると考えてきました。多様性を受け入れる文化が根底にあってこそ、ベテランも若手も関係なく一緒になって最先端の技術を学び、DX人財を育成することができます。そうした中から実際に「スーパーSE」とも言うべきDXと基幹系の両方に精通したハイスキルな技術者も生まれています。
共創間共創の先に起こる新たな可能性の息吹
──さらに共創間共創の先にIBMがどんなことを展望しているのか、ぜひお聞かせください。たとえば場合によってはコンペティターにもなり得る、社外のプレーヤーとの共創も視野に入っているのでしょうか。
今野: 実は競合の概念は次第にあいまいになりつつあり、IBM社内でも「我々の競合相手ってどこだろう?」と議論すると、一人ひとり違う答が返ってきます。さまざまな局面で競合もするけれど協業もするケースが増えているのです。
先に述べたようにコンテナ共創センターでは毎月勉強会を開催しているのですが、そうした中で先般もマイクロソフトやヴイエムウェアの方に講師をお願いしました。技術者同士はまったく違和感なく自然な形でジョインし、「ぜひ今度また一緒に良い仕事をしましょう!」とエールを交換しており、共創間共創における新たな可能性の息吹を感じます。
西: DXを推進している当事者同士は、意外にお互い相手のことを競合とは思ってなかったりします。パートナー共創センターにおいても、これまで競合関係にあったSIerの間でさまざまな協業の話が進んでいます。2022年1月18日にプレス発表したNECとの協業もその1つです。この取り組みは、NECのローカル5Gを活用した新たなインフラ保全ソリューションを開発するというものです。また、NECでは、2022年6月9日にネットワークを活用したオープンな共創の場を示す「NEC CONNECT」のコンセプトに基づき「NEC CONNECT 5G Lab」を開設しました。今後、そのような施設とも連携してNECとIBMが互いに持つネットワーク・IT運用技術の組み合わせによる協業を更に加速していく計画です。
こうしたことが可能となったのは、オープンな共通プラットフォームのもとで、お互いの技術者が同じ言語で話せるようになったからに他なりません。共通プラットフォームの上にプラグインする形でお互いの得意技を載せていけるという世界観が共有された今、お客様の重要なプロセスに直結した社会・ビジネス課題解決策の選択肢を増やしていく、それらを安全かつ堅牢な基盤で運用し、より大きなデジタル化をスピーディかつ効率的に推進していく未来を描いています。仮に前述したような「家の外壁の色を塗り替える」ような表面的なDXに互いが終始していたならば、こうした議論には多分ならなかったと思います。
──最後にそれぞれのお立場で、この1年で少なくともこれだけは実行したい、やり遂げたいという具体的なアクションがあればお聞かせください。
西: 皆様があっと驚くようなアライアンスを発表したいと思っています。単なる個別業務の課題解決ではなく、共通プラットフォームを活用してSDGsや地域活性化など、さまざまな社会問題の解決に貢献していくことがパートナー共創センターの目標です。
今野: コンテナ共創センターとしても、コンテナを活用して日本のDX推進に貢献する実際の事例をお客様やパートナー様と共に数多く創り、そして発信していきたいと思います。また、現在はオンライン環境で実施しているセンターの取り組みも、各地域での活動や対面での交流を計画中です。ご期待ください。
井上: IBM地域DXセンターとしても、47都道府県のすべての地域のお客様やパートナー様からお声がけをいただけるよう、カタリストとしての認知度を高めていきます。今年予定しています九州地域の開設においても、共創のスピードを高め、コンテナ共創センターやパートナーソリューション共創センターの技術を最大限活用し、多くのパートナー様、お客様に、IBMの技術を体現、経験していただくハブとなる場としても進めてまいります。アクションはまだ緒に就いたばかりですが、着実に歩を進めていきたいと思います。
──皆さんの言葉の端々から“熱”が伝わってきました。各センターでの共創、そしてセンター間の共創、どちらの活動からも目が離せませんね。本日はお忙しいところありがとうございました。
<関連リンク>
・IBM地域DXセンター設立のプレスリリース
・コンテナ共創センターの詳細
・パートナー・ソリューション共創センターの詳細