特別企画

不動産業なのに○○がない!? INVESTORS CLOUDがITで創った前人未踏のビジネスモデル

リーマン・ショックで倒産寸前、切り開いた活路

 古木氏が不動産業界に入ったのは20歳の頃。最初はアパート経営を提案する不動産会社の管理部門でアパートの巡回清掃員を担当した。しかし、本当にやりたかったのは営業だったらしく、「休日に飛び込み営業をやったりしていました」という。

 その姿が評価され、営業部に異動。年間20棟を売るトップセールスを達成したのだが、「次第に飛び込み営業の非効率さや、自分でよいと思えない物件も販売しなければならない矛盾に限界を感じるようになっていました」(同氏)。

 選んだのは独立の道だった。2005年から個人事業で建設業・不動産業を開始し、2006年に株式会社インベスターズ(旧社名)を立ち上げた。「飛び込み営業の非効率さ」を解消するため、「ネット集客」の仕組みを構築したところ、2006年に約1億円、2007年に約12億円、2008年に約20億円と順調に売上は伸びていった。

 ところが2008年9月15日、リーマン・ショックが世界を襲った。世界的金融危機からは日本市場も逃れられず、「結局、2008年は売上20億円だったのですが、そのうち10億円が在庫で10億円の借金という状況。地価は暴落し、銀行の融資が受けられないため土地も買えず、それまでの在庫型モデルが一気に限界を迎えてしまいました」。

 会社は倒産の危機に。当時の苦しみは想像を絶する。だが、結果的にこれが転機となった。「なぜ、こんな状況に陥ってしまうのか。もう一度、経理を見直してみることにしました。すると、この業界はキャッシュフロー経営が実現できていないことが問題だと気づきました。キャッシュフロー経営のためには在庫を仕入れない、仕入れないならどうするか。思いついたのがインターネットで土地と顧客をマッチングする仕組みでした」。当時は、それ以外に道はなく苦肉の策だったという。

 2008年から少しずつエンジニアを雇い、システム構築に着手した。2010年に一通りの機能が完成した。「この2008年から2010年までは本当に大変でした。やろうとしていることはシンプルなのですが、不動産に信用不安があって、まず顧客の理解が得られない。さらに難題だったのが銀行の理解です。この業界では土地と建物の完成在庫に融資してもらうのが一般的ですが、無在庫型モデルでは土地と建物に二段階でそれぞれ融資してもらわなければならず。粘り強く銀行に説明して、特別な融資プランを作ってもらいました」。

 2010年からは順調にことが回り始めた。「資金繰りが不要になったおかげで経理面が楽になりました。また、在庫型モデルの場合、希望立地があっても、自社の在庫をさばく方が優先されてしまいますが、今では土地に合わせて1棟1棟建築するため、立地に見合った最適な物件を提供できるようになりました。魅力ある土地情報も増えてきて、販売もスムーズに進んでいます」。

 今後の予定としては、現在はクローズドで運用されている「みんなのアパート経営」を12月にもオープン提供するという。それに併せて、スマホアプリも公開。さらに来年度は、中古物件やリノベーションの事業も立ち上げるという。「今後もITを徹底して活用していきたいですね」。

12月にスマホアプリを公開する予定。物件情報が確認できるほか、インベスターズクラウドの営業担当とのやり取りも可能となる

 同社のユーザーは年収1000万円ほどのサラリーマンが多い。「サラリーマンでも手軽に始められるアパート経営」といったキャッチコピーも踊り、実際にユーザーの声を聞くと未経験から始めた人も少なくない。「2015年1月1日より施行される相続税改正が後押しして、アパート投資に踏み出す人も増えている」という。節税対策として、一度検討してみるのはいかがだろうか。

川島 弘之