特別企画

ハードウェアオフロード技術を活用したWindows Server 2012 R2の新しい仮想化ソリューション【後編】

仮想化基盤に効果的なオーバーレイ型ネットワーク仮想化とNICによるオフロード技術

高速接続・ネットワーク仮想化をフルに活用してシステム統合をさらに強化

 これまでの説明からも分かるように、極めて高速なインターコネクト、柔軟なネットワークを提供するネットワーク仮想化、そしてこれらのパフォーマンスを最大限に引き出すハードウェアオフロード技術がようやくそろおうとしている。その先に見えてくるのは、さらなるシステム統合が実現された次世代型の仮想化基盤である。

 近年、マルチコアCPUと大容量メモリを搭載した高性能サーバー、そしてこれらの潤沢なサーバーリソースを最大限に活用できるサーバー仮想化ソリューション、さらには仮想環境に適したストレージシステムやネットワーク機器などが登場している。このため、多くの業務システムを仮想化し、物理サーバーを統合していく動きが活発化している。また最近では、サーバー統合にとどまらず、仮想化技術をクライアント環境にまで発展させたデスクトップ仮想化ソリューションも台頭している。デスクトップ仮想化ソリューションによって、エンドユーザーのデスクトップ環境さえも基盤サービスとして提供できるようになる。

 このように、企業を支えるITシステムが次々と仮想化技術によって統合されていく中で、いまだに統合されずにサイロ型で運用されているものもある。その代表例が、基幹業務を支えるミッションクリティカルシステムや大規模のデータベースシステムである。こうした高負荷のワークロードを持つシステムは、ほかの仮想化基盤と共有せず、仮に仮想化したとしても単独の仮想基盤上で運用するケースが一般的だ。

 しかし、用途ごとで仮想化基盤が分断している状態では、仮想化技術を導入するメリットが半減してしまう。仮想化のメリットは、十分に大きな仮想化基盤を構築し、そのリソースをすべてプール化し、その上で稼働している数多くのシステムがリソースを柔軟に融通しあえるところにある。仮想化基盤が用途ごとに分断されていると、それぞれの基盤内でしか融通しあえなくなってしまうのだ。

あらゆる業務システムを単一の仮想化基盤に統合していくことの重要性

 やはり、単一の仮想化基盤を構築し、その上でミッションクリティカルシステムやデータベースシステムを含む、あらゆるシステムを統合していけることが望ましい。例えば、仮想デスクトップ環境は、社員が出社した朝の時間帯にログインやOS起動、メールチェックが多数同時に走り、そのタイミングで負荷が上昇しやすい。その一方で、基幹系データベースは、夜間のバッチ処理で負荷が上昇する傾向にある。

 各システムを異なるシステム基盤で運用していると、それぞれのピーク時の負荷に合わせたシステム設計が必要になるが、24時間を通してみれば限られたタイミングしかリソースが十分に使われず、ほとんどの時間でリソースを持て余してしまう。

 これに対し、仮想デスクトップ環境と基幹系データベースを共通のシステム基盤で同時に運用していれば、朝の時間帯には仮想デスクトップ環境にリソースを割り当て、夜の時間帯にはデータベース環境にリソースを融通させるといったことが可能になる。その他にもさまざまな業務システムを統合していれば、24時間にわたってかなり高いリソース使用率を維持できる。これこそが真のシステム統合といえるのではなかろうか。

 このように、システムの用途を問わずに統合を進めていくには、さまざまなワークロードに対してオールマイティに対応できるシステム基盤が求められる。これまで取り上げてきた高速インターコネクトやネットワーク仮想化、そしてこれらを支援するハードウェアオフロード技術がそろうことで、これまでの仮想化基盤で統合が難しかった基幹系システムや大規模データベースシステムさえも統合の対象になる。単一の仮想化基盤に企業のあらゆるシステムが統合されれば、仮想化ならではのメリットを最大限に引き出せるのだ。

 友永氏は、とりわけ日本の顧客に向けて「今年3月に米国で開催されたONS(Open Networking Summit) 2014では、Microsoft Azureにおけるストレージシステムのコア技術として、40Gbit EthernetベースのRDMA技術(RoCE)を活用していることが明かされました。すでに世界中に通信回線が張り巡らされている現在、仮想化基盤やクラウドに対する取り組みはもはやグローバルでの競争です。もし日本のお客さまだけが使えない技術があれば、こうした競争にとって大きな足かせとなってしまいます。日本のお客さまには、InfiniBandや10GbE/40GbE、さらにはRDMAやオーバーレイネットワークのようなコストパフォーマンスに優れた新技術をいち早く取り入れていただき、競争力のあるビジネスを展開していただきたいと思っています。そのような最新のシステム環境において、Mellanox製品が提供するハードウェアオフロード機能はきっとお客さまのお力になれるはずです」と語っている。

伊勢 雅英