特別企画
ハードウェアオフロード技術を活用したWindows Server 2012 R2の新しい仮想化ソリューション【後編】
仮想化基盤に効果的なオーバーレイ型ネットワーク仮想化とNICによるオフロード技術
(2014/4/28 06:00)
エンタープライズITの世界では、仮想化基盤にさまざまなシステムを統合していく動きが活発化している。このような中で、ネットワークやストレージなどのI/Oボトルネックを解消するInfiniBandや10Gigabit Ethernet/40Gigabit Ethernet(10GbE/40GbE)のような高速インターコネクト、仮想化されたシステム同士を柔軟に接続していくネットワーク仮想化に注目が集まっている。
しかし、高速インターコネクトやネットワーク仮想化が導入された環境では、これらのI/Oを処理している物理サーバーのホストCPUが新たなボトルネックとなり、結果的にパフォーマンスを十分に発揮しきれない状況に陥る。そこで重要になってくるのが、ホストCPUが担っていた処理の一部をNIC(ネットワークアダプタ)へと移行させるハードウェアオフロード技術である。
今回は、仮想化基盤での採用例が近年急速に増えているMicrosoftのHyper-Vに着目し、とりわけWindows Server 2012 R2を取り巻くハードウェアオフロード技術の動向を追っていく。ここでは、日本マイクロソフト株式会社、メラノックス テクノロジーズ ジャパン株式会社、そしてハードウェアオフロード技術を取り入れているエンドユーザーの方に取材協力を得た。後編では、仮想スイッチやネットワーク仮想化のパフォーマンス向上につながるハードウェアオフロード技術を紹介していく。
ネットワークの高速化に伴って仮想スイッチ処理のオフロードが重要に
多くのシステムが集約されたサーバー仮想化基盤では、仮想サーバー同士の通信に仮想スイッチが使用されている。仮想スイッチは、ハイパーバイザが提供する仮想的なスイッチングデバイスであり、物理サーバーのホストCPUが仮想スイッチの処理をソフトウェア的に実行する。こうしたソフトウェアベースの仮想スイッチは、ホストCPUの介在とメモリ間のコピーが頻繁に発生し、データ通信量が増えていくにつれてホストCPUに大きな負荷がかかり、結果としてスループットの低下とレイテンシの増大を招く。
日本マイクロソフト株式会社 デベロッパー&プラットフォーム統括本部 ITアーキテクチャー推進部 エバンジェリストの高添修氏は、「近年、多くの仮想化基盤では、ネットワークの高速化に伴って、仮想スイッチに対する処理の負荷上昇が問題視されています。例えば、10Gbit Ethernetに対応したハードウェアベースのスイッチ機器には、膨大なネットワーク通信に耐えられる高性能なASICが搭載されています。それと同等のスイッチ環境をソフトウェアベースで実現しようとすれば、いうまでもなくサーバー側のホストCPUにきわめて大きな負荷がかかります。このような課題に対し、マイクロソフトは、ソフトウェア側の最適化によってホストCPUの負担をできる限り軽減する取り組みを続けてきましたが、これほどまでにネットワークが高速化された現在、用途によってはハードウェアオフロード技術も併用していくことをお勧めしたいです」と語る。