特別企画
企業向けオンラインストレージのススメ【後編】
日米2つのクラウドストレージ
(2014/3/7 06:00)
前回は、なぜ企業向けのオンラインストレージが必要なのかということと、その例の1つとしてトレンドマイクロのSafeSync for Enterpriseを紹介した。この製品はオンプレミス型のオンラインストレージだが、今回は、クラウドサービスの代表として、ワールドワイド、国内でそれぞれ高いシェアを持つ、米国Box社の「Box」と、日本ワムネットの「GigaCC」を紹介する。
ワールドワイドで使われるクラウドストレージ、BOX
Boxは、米Boxが提供しているクラウドストレージサービスだ。
利用する場合は、PCやスマートフォンにBoxの専用クライアントソフトをインストールするか、WebブラウザでBoxにアクセスして利用できる。自動的にファイルを同期する機能の利便性を考えると、Box専用クライアントソフトをインストールした方が便利だが、このあたりは企業のポリシー次第になるだろう。
現在、Windows、Mac、iOS、Android、Blackberryなどのデバイスに対応している。さらに、OutlookやThunderbird、Mac Mailクライアントに対応したプラグインもBox社から提供されている。これらのプラグインを利用すれば、添付ファイルをBoxにアップロードして、ファイル自体を添付するのではなく、ファイルをBoxのURLとして送信するため、容量の大きなファイルを外部のユーザーと簡単にやりとりすることもできる。
また、PDFやPowerPointなど100種類のファイルフォーマットをクラウド側で解析して、Webブラウザや専用アプリで閲覧できるようにしている。例えば、アドビのPhotoshopがインストールされていないPC、Androidスマートフォンなどで、PhotoshopのPSDファイルを閲覧できるのは便利だ。
セキュリティ面では、ファイルにアクセスできるユーザーアカウントを細かく設定することができる(フルアクセス、アップロードと閲覧のみ、アップロードのみなど)。さらに、パスワードの長さや文字種類を強制するパスワードポリシー機能、ログイン時間制御などの機能も用意されている。ID統合に関しては、Active DirectoryやLDAPなどとの連携をサポートするため、企業内のIDがBoxでもそのまま利用できる。
多くの企業で利用されるために、Box社では、クラウド環境のセキュリティや可用性に対しては多くの投資を行い、高いレベルを維持しているという。
実際、AES256ビット暗号への対応、SSAE16(Statement on Standards for Attestation Engagements No.16) TypeIIにマッチしたデータセンターの運用を行っているほか、地理的に分散されたデータセンターの設置など、企業がビジネスで利用する上では必要とされるセキュリティレベル、データセンターの運用レベルを高いレベルで満たしている。
なおSSAE16 TypeIIは、米国公認会計士協会が定めた、受託業務を行う会社での内部統制の有効性を評価している基準だ。米国では、ビジネスにクラウドサービスや外部のデータセンターを利用する上で、サービスを提供している企業に高いレベルでの内部統制を要求している。特に、金融機関がクラウドサービスを利用する上では、非常に高いセキュリティ性と管理性を必要とされる。SSAE16 TypeIIはある意味、米国公認会計士協会がお墨付きを与えているものと考えることができるだろう。
またBox社では、トラステッドアクセス、2要素認証、デバイスごとのアクセス制御、コンテンツポリシー、メタデータ管理、eディスカバリーなどの機能を他社に先駆けて機能追加しているという。
Boxの最大の特徴は、PCやスマートフォンでファイルを同期させるクラウドストレージサービスというだけでなく、さまざまなアプリケーションと連携し、セキュアにファイルを保存・閲覧するプラットフォームとして考えられている点だ。
すでに米国では、Boxをセキュアなストレージプラットフォームとして利用した、モバイルアプリやクラウドアプリがさまざま登場してきている。これらのアプリは、有償/無償を含めてBoxのサイトから検索し、利用できる。
例えば、スマートフォンで撮影した写真に対し自動的に補正を加えてBoxにアップするアプリ、スマートフォンの通話を自動的に録音して音声データをBoxにアップロードするアプリなど、さまざまな種類のアプリ、連携するクラウドサービスなどが紹介されている。
ビジネス向けクラウドサービスとの連携についても、BOXでは広く対応している。各種APIを公開しているため、多くのクラウドサービスと統合されたサービスが提供されているのだ。例えば、Oracle Fusion Applications、Salesforce、Google Appsなどでは、画面上にBoxのストレージが表示されるため、ユーザーはSalesforceを利用しながら、Boxのクラウドストレージをそのままシームレスに利用することができる。
Boxは米国のサービスだが、昨年秋に日本法人ができ、マクニカネットワークスなどと販売代理店契約を結んだことで、日本での普及も進んでいくだろう。ただ、Box自体のクラウドストレージ環境は米国に存在するため、データを日本国内のデータセンターに置きたいというニーズがある企業にとっては使いにくいだろう。
また、Boxをプラットフォームとして利用しているさまざまなアプリやクラウドサービスなどのほとんどが、米国の企業から提供されているので、アプリが日本語化されていなかったり、アプリに対しての紹介が日本語になっていなかったりする点なども、解決していかなければならない点だ。
ただ、Boxジャパンや販売代理店のマクニカネットワークスによれば、今後日本のアプリ開発者やクラウドサービスを提供している企業と連携し、日本においても、セキュリティ性の高いクラウドストレージプラットフォームとして展開するという。今後の取り組みに期待したいところだ。
なおBoxでは、有償のビジネス(3~500ユーザーまで:ストレージ容量は1000GB、ただし契約単位)、エンタープライズ(3ユーザー~無制限:ストレージ容量は無制限)を企業向けに展開するが、無料プランのパーソナルも用意されているので、これで試してみることは可能だ(ビジネス、エンタープライズもマクニカネットワークスでは無償評価版を用意している)。