特別企画
仮想環境に特化して設計された新世代ストレージ「Tintri VMstoreシステム」【後編】
Tintriのデータ保護・運用管理機能、将来の動向について
(2014/2/21 06:00)
買収された経験を持つData Domain出身者がTintriをどうとらえているか?
このように順風満帆なTintriに対し、筆者が個人的に気になっているのは、同社がスタンドアロン企業としてこれからも生き残っていけるかどうかである。特に優れたテクノロジやソリューションを持つ新興のストレージベンダーは、大手ベンダー(IT総合ベンダーもしくはストレージ専業ベンダー)に買収されるケースが目立つからだ。
筆者が2003年から2009年まで寄稿していたストレージ専門の連載記事を振り返ると、主要なところではクラスタ型のストレージ構成をいち早く提唱した3PARがHewlett-Packardに買収され、独自のスケールアウト型アーキテクチャで急成長を遂げたIsilon Systemsと高度なデータ重複排除技術を持つData DomainがEMCに買収され、スケーラブルなiSCSIストレージを提供するEqual Logicがデルに買収され、ビッグデータ分野の先駆け的な存在だったNetezzaがIBMに買収され・・・といった具合でもはや書き切れないほどの買収劇を目の当たりにしてきた。新興のストレージベンダーが買収されずにスタンドアロンで存在し続けるケースはほとんどなく、筆者の取材先がどんどん減ってしまってもはや廃業の危機にひんしている!?
それは冗談として、Tintriは近年のストレージ業界においてとても目立った存在であり、その関係から大手ベンダーに買収される可能性は飛び抜けて高いと筆者は想像している。
実は、本稿の取材でご協力いただいたティントリ 職務執行者社長の河野氏と同社 技術本部長の村山氏は、Data Domainの日本法人を立ち上げた張本人でもある。つまり、自身が携わった新興ベンダーが大手ベンダーに買収されるという過程をすべて経験してきた『生き証人』なのだ。
河野氏は、Data Domainが買収されたときの正直な気持ちを「当時、Data Domainの先進性に心底からほれ、技術者の村山とともに日本法人の立ち上げに参加しました。力を尽くしたかいもあって会社が着実に成長していったわけですが、そのような中で現地法人の判断によってEMCの傘下に入ることが決まり、Data Domainの事業はEMCの一部門として継続されることになりました。自分たちの力で育て上げてきた会社ですから、個人的にはどこにも買収されることなくスタンドアロンのままで存在し続けてほしかったというのが本音です。しかし、スタンドアロンの状態がお客さまにとって必ずしも魅力的であるとは限りません。大手ベンダーの一部門として運営されたほうが、資金調達が容易になってビジネスをもっと広げられるかもしれませんし、買収元のソリューションと高度な連携がとれたり、流通やサポートを強化することだって可能でしょう。実際、Data Domainは、EMCのプライマリストレージ製品に対する高度なバックアップソリューションをシームレスに提供できるようになるなど、お客さまにとって良い結果をもたらしています」と説明する。
完成度の高いソリューションを武器にこれからも急成長を遂げていく
2008年に産声を上げたばかりのTintriだが、今後もスタンドアロン企業として成長し続けることを強く望んでいる。河野氏と村山氏は、EMCの傘下に収まったData Domainを卒業し、2012年にTintri日本法人(ティントリ)の立ち上げに参加した。
河野氏は、Tintriに対する強い思いを「しばらくの間は、EMCの中でData Domainの事業を支援してきましたが、それと同時に小さな会社を大きく育てていくビジネスにまた携わりたいという気持ちも沸き起こっていました。そのようなときに運よく出会えたのがTintriという会社でした。現在、日本法人を立ち上げて1年半ほどが経過しましたが、Data Domainのときと変わらないくらいにほれ込んでいます」と語る。
これからも、エンタープライズITを支える多くのワークロードが次々と仮想化されていく。Tintriは、そのような将来像をしっかりと見極めながら、仮想環境に最適なストレージソリューションの開発を積極的に進めていく。
河野氏は、最後に「2012年に米国で開催されたVMworld 2012では、VM-awareと称する仮想環境向けのストレージソリューションを数多く見かけましたが、2013年のVMworld 2013ではかなり少数に絞り込まれている印象でした。そのうちの一社がTintriですが、ソリューションとしての完成度では他社を抜きんでています。日々のビジネスでは非常に大きな手応えを感じていますし、Tintriはこれからも急成長を遂げていけると確信しています。VMstoreがサポートするハイパーバイザーも、現状のVMwareだけでなくKVMも近いうちにサポートを予定していますし、Hyper-Vに対応するための開発作業もすでに着手しています。これからのTintriにぜひともご期待ください」と強い自信を見せる。