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日立、2015年度連結決算は増収減益 2016年度は“収益性にこだわった経営を”

 株式会社日立製作所(以下、日立)は13日、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績を発表した。売上収益は前年比2.7%増の10兆343億円、営業利益は同1.0%減の6348億円、税引前利益は同0.4%減の5170億円、当期純利益は同20.8%減の1721億円となった。

 日立の代表執行役執行役専務 CFO、西山光秋氏は、「社会・産業システム、情報・通信システム、オートモーティブシステム部門などが前期を上回った。一方で、建設機械部門が新興国の景気低迷の影響を受けて前期を大幅に下回った。また、情報・通信システム部門および建設機械部門を中心に、前年を上回る事業構造改革関連費用を計上した。9部門中5部門で増益、4部門で減益となった」と総括した。

日立 代表執行役 執行役専務 CFOの西山光秋氏
2015年度連結決算の概要

 2015年度は同社が取り組んできた「2015中期経営計画」の最終年度でもあるが、「2012年度には調整後営業利益率が4.7%であったが、2015年度には6.3%を確保できた。目標は7%超であったものの、収益性が着実に高まり、改革の手応えを感じている。営業キャッシュフローは、2012年度に5034億円であったものが、2015年度には8431億円と過去最大となった。キャッシュの創出力がついている」とコメント。

 「課題としては、情報・通信システムにおけるプロダクト事業において、マーケットの変化への対応が遅れた点。さらに社会・産業システムでも、マーケットのシュリンクへの対応が遅れている。BU(ビジネスユニット)制をもとにした新たな組織体制により、経営のスピードアップを図り、迅速な対応を図る」と述べた。

2015中期経営計画の総括

 2015年度の国内売上収益は前年並みの5兆2315億円、海外売上収益は前年比5%増の4兆8027億円。海外売上比率は48%となった。

 「アジア、中国の需要減が大きい。一方で、北米および欧州は買収による効果で増収となった。海外売上比率は前年度に比べて1ポイント上昇。高機能部品事業などが海外でのビジネスが減速した一方、情報・通信システムが国内で積み増したことも影響している。2016年度には海外売上高比率で50%を目指す」としている。

国内・国外の売上収益

 事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年比4%増の2兆1093億円、調整後営業利益は前年から61億円増の1413億円、EBITは同30億円増の1091億円となった。

 そのうち、システムソリューションの売上収益は前年比4%増の1兆2879億円、調整後営業利益は前年から238億円増の1015億円。プラットフォームの売上収益は前年並の1兆194億円、調整後営業利益が前年から180億円減の396億円となった。また、ストレージソリューション事業の売上収益は、前年比5%増の5100億円となった。

 「情報・通信システムは、プロダクト関連が低調だが、サービス、ソリューションが堅調。営業利益率は、リーマンショック以降、最大に改善した」とし、「2014年度以降、金融関係、公共関係が好調。特にマイナンバー関連の大型商談があった。この需要は。2016年度まで続くだろう。その後、需要は一巡するが、フィンテックやセキュリティなどのニーズが新たに出てくると考えており、国内IT投資は引き続き堅調だろう」と見通した。

 一方、社会・産業システムの売上収益が前年比13%増の2兆3331億円、調整後営業利益が前年から75億円減の813億円。電子装置・システムの売上高は前年並の1兆1276億円、調整後営業利益は前年から55億円減の670億円。建設機械の売上高は前年比7%減の7583億円、調整後営業利益は前年から372億円減の226億円。高機能材料は売上高が前年比2%増の1兆5640億円、調整後営業利益は前年から50億円増の1259億円。

 オートモーティブシステムの売上高は前年から7%増の1兆11億円、調整後営業利益は前年から144億円増の619億円。生活・エコシステムの売上高は前年比10%減の6810億円、調整後営業利益は前年から45億円減の238億円。その他サービス(物流・サービスなど)の売上高は前年比2%減の1兆2527億円、調整後営業利益は前年から106億円増の525億円。金融サービスの売上高は前年比3%増の3653億円、調整後営業利益は前年から62億円増の452億円となった。

 オートモーティブシステムは売上高が初めて1兆円に到達。生活・エコシステムでは、空調事業の再編の影響があり減収減益となったが、「この再編の影響を除くと、白物家電事業は増収増益になった」という。

事業部門別の業績

2016年度は収益性にこだわった経営を

 2016年度の通期業績見通しは、売上収益が前年比10.3%減の9兆円、営業利益は同14.9%減の5400億円、税引前利益は同16.8%減の4300億円、当期純利益は同16.2%減の2000億円とした。営業利益率は6%を目指す。

 「中国や資源・産油国を中心とした経済成長鈍化など不透明な状況が継続している。1兆円の減収のうち、為替の影響で3800億円減、日立物流の再編で4900億円減、日立キャピタルの再編で1350億円減、空調事業の再編で700億円減を見込んでいる。円高やポートフォリオの変更によって、9セグメント中6セグメントが減収となる。これまでは、トップラインを増やしていくことで収益を拡大してきたが、ポートフォリオの見直しを行い、共通プラットフォームを各分野で活用することを優先し、業績は一時的にはシュリンクする。2016年度は、収益性にこだわった経営を行っていく」とした。

 なお、2016年度見通しのなかには、日立物流および日立キャピタルの持分法適用会社化の影響をすでに織り込んでいる。

2016年度連結決算の見通し

 事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年比3%減の2兆400億円、調整後営業利益は前年から16億円増の1430億円、EBITは前年から251億円減の840億円とした。そのうち、金融、公共、産業・流通、社会インフラ(電力、交通、通信)向けシステムインテグレーション、ハードウェア、ソフトウェアの販売、保守、メンテナンス、コンサルティングなどを含む「フロントビジネス」の売上高は前年比1%減の1兆4200億円、調整後営業利益は前年から5億円減の1200億円。サーバー、ストレージ、通信ネットワーク関連機器、関連ソフトウェアサービスなどの「ITプラットフォーム&プロダクツ」の売上収益は前年比5%減の7500億円、調整後営業利益が前年から70億円増の270億円としている。

 「情報・通信システムにおいては、サーバー、ストレージなどのプロダクト部門で構造改革費用を盛り込んでいることでEBITが減少する。また、ピークが過ぎたマイナンバー関連の受注が縮小することになるだろう。構造改革の収益性改善効果により、増益を目指す」とした。

 社会・産業システムの売上収益が前年並の2兆3400億円、調整後営業利益が前年から186億円増の1000億円。電子装置・システムの売上高は前年比5%増の1兆1800億円、調整後営業利益は前年から20億円減の650億円。建設機械の売上高は前年比5%減の7200億円、調整後営業利益は前年から113億円増の340億円。高機能材料は売上高が前年比4%減の1兆5000億円、調整後営業利益は前年から60億円増の1320億円。

 オートモーティブシステムの売上高は前年並の1兆円、調整後営業利益は前年から19億円減の600億円。生活・エコシステムの売上高は前年比10%減の6100億円、調整後営業利益は前年から78億円減の160億円。その他の売上高は前年比49%減の6450億円、調整後営業利益は前年から415億円減の110億円。金融サービスの売上高は前年比36%増の1300億円、調整後営業利益は前年から302億円増の150億円とした。

2016年度 事業部門別の業績見通し

 2016年度は、事業構造改革を継続。事業構造改革関連費用として800億円を計上。3000人の削減をする計画であり、効果として550億円を見込むという。

 「構造改革費用の800億円のうち、50%弱が情報・通信システム部門となる。国内外の拠点の見直しおよび海外でのプロダクトの構造改革がある。800億円のうち、人員対策で300億円、固定資産などの減損で500億円を予定している」とした。

 日立では2016年度から新たな中期経営計画をスタートするが、この内容に関しては、5月18日に同社の東原敏昭社長が発表する予定である。

 日立では、「キャッシュ創出とプロフィットにこだわる経営」を促進する考えであるほか、IT×OT(オペレーショナル・テクノロジー)による「社会イノベーション事業の拡大」に取り組む姿勢をみせている。

 「2016年度には売上高がシュリンクするが、縮小を恐れずに、対策を行い、社会イノベーションに向けた成長戦略を推進する」と語った。

大河原 克行