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日本IBM、PureApplicationを“エコシステム化”する最新版、パターン・デプロイメントを導入

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は17日、「PureApplication Software V2.1」を発売した。VMwareが稼働するハードウェアをサポートし、IBM PureApplicationのパターン・デプロイメント技術、ワークロード、ライフサイクル管理機能を利用できる。

 PureApplication Software V2.1は、現行システム・インフラの課題を解決することを念頭に開発された。新機能としてChef、Dockerをサポート。Chefでは豊富なレシピを活用し、パターンの一部をレシピで記述することなどによる、パターン開発負荷の軽減を狙う。Dockerでは、デプロイ時間、起動時間の短縮、集約率の向上、シームレスなワークロードの移動、豊富なDockerイメージの活用などにより、パフォーマンスポータビリティの向上を狙う。

 また、サードパーティクラウドをサポートし、現段階ではMicrosoft Azureのサポートを実現した。

PureApplication Software V2.1の特徴
オープンテクノロジーへの取り組み

 さらに、現行システムの問題点を解決するために、「現行システムは、案件・システムごとに個別設計を実施した結果、縦割りのシステムが乱立。類似作業が多いにも関わらず、効率的な統合管理を行うことができず、担当者のスキルレベルへの依存といった問題を抱えている。クラウド化、仮想化を進めたものの、20年前と内容的な変化はないことが多い。この課題に対し、管理対象を極力削減し、共通項目をまとめる標準化と、人手による管理作業を削減する自動化を実現する、パターン・デプロイメントを導入した」(日本IBM IBMシステムズ・ソフトウェア事業部 アプリケーションプラットフォーム・テクニカルセールス 部長の小島賢二氏)ことがトピックとなる。

日本IBM IBMシステムズ・ソフトウェア事業部 アプリケーションプラットフォーム・テクニカルセールス 部長の小島賢二氏
PureApplicationエコシステム
パターン・デプロイメントとは
パターン定義の具体的なイメージ
パターンを構成する重要な要素

 すでにパターン・デプロイメントを採用した事例も出ている。みずほ銀行では、IBM Power Systemsでプライベートクラウドを構築する際、パターン・デプロイメントを活用。従来は2カ月かかっていた構築期間を、2、3日と大幅に短縮した。株式会社ふくおかフィナンシャルグループでは、約1年でグループ3行が利用するCRMシステム刷新を実現した。

事例

 日本IBMでは、PureApplication用に最適化された、デプロイしてすぐに使えるパターンを、現段階で220以上提供している。IBMの主要アプリケーションのパターン化は完了しており、ビジネス分析/データウェアハウス、データマネジメント、ソーシャルコラボレーション、ソフトウェアデリバー/ライフサイクル管理、コマースソリューション、セキュリティ/リスク管理/コンプライアンス、アセット/ファシリティ管理、モバイル開発、コネクティビティ/ビジネスプロセス管理/ビジネスルール管理などでは、すでにパターンが利用できる。

 「一度、パターン化を済ませることで、プライベートクラウド、パブリッククラウドのどちらでも使用可能となり、ハイブリッドクラウドへの対応が行いやすくなる」(小島氏)ことから、ハイブリッドクラウドの活用促進にもつながると分析している。

パターン対応IBM製品
パターンのハイブリッドクラウドへの応用

 今後の方向性として、パターン活用によってインフラのデリバリーモデル変革を実現し、「現行のウォーターフォール型の開発モデルを、スモールスタートで継続的に開発を続ける、継続デリバリー型への移行へと変革する可能性もある。これが実現できれば、現行の属人性の高いシステム開発から、システムそのものではなく、パターンを保守して、環境を作り直す開発体制へと移行できる可能性がある」(小島氏)と指摘。スマートフォンアプリを利用する感覚で、ハードウェアを立ち上げ、望むアプリケーションをダウンロードして活用することがエンタープライズシステムでも実現する可能性があるとしている。

インフラのデリバリーモデル変革
パターンを保守して環境は作り直す

 なお日本IBM 執行役員 IBMシステムズ・ソフトウェア事業部長の渡辺公成氏は、「今回の新製品は、オープンテクノロジーであるChef、Dockerを包含し、さらにパターン・デプロイメントの活用というビジネスモデルに大きな影響をもたらすもの。パターン・デプロイメント活用によって、パターンから仮想システムを自動構築し、従来は2カ月程度かかっていた構築期間を、2、3日に短縮する。IBMの主要ソフトウェアはほぼパターン化を完了し、SAP、日本のKCCSマネジメントコンサルティングのThe Ameba、ワークスアプリケーションズ製品など、日本からも19社、27ソリューションのパターンを公開している」と述べた。

 価格は、PVU(プロセッサ・バリュー・ユニット)課金で、1PVUあたり4万4300円からとなる。なお、現行ではIAベースのみに対応しているが、第2四半期中にPowerベースのものにも対応する予定となっている。

日本IBM 執行役員 IBMシステムズ・ソフトウェア事業部長の渡辺公成氏

三浦 優子