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「ウェアラブル・アプリ」の省エネ化を容易に、富士通研が実現へ

「センシング・ミドルウェア」を開発

 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は5日、ウェアラブル機器向けにセンシング・ミドルウェアを開発し、省電力なアプリを簡単に提供できるフレームワークを構築したと発表した。

 保守、製造、流通といった現場では、ウェアラブル機器によってICTを活用できる場面の拡大が期待される。たとえばスマートデバイスと違ってハンズフリーで情報にアクセスできるため、端末操作のために作業を中断することなく業務が遂行できる。工場・倉庫・病院・店舗などでは、作業場所への誘導、作業に必要な支援情報の提供といった、人の行動や周囲の状況に合わせてタイムリーに情報を提供することで、現場における作業効率の向上が図られる。

ウェアラブル機器による現場作業支援の例

 ただし、ウェアラブル機器の多くはバッテリの電力で動作するため、長時間使用するには消費電力を押さえる工夫をアプリに実装する必要があった。たとえば稼働させるセンサーを必要最小限に絞り、こまめにそれぞれを電源制御するような省電力化は開発工数とノウハウが必要だし、センシング処理を低消費電力のマイコンに任せてスマート端末本体の消費電力を押さえる方法でも、処理内容自体は専用ファームウェアとして開発する必要がある。

 今回、こうした課題を解決し、低消費電力なセンシング・アプリを簡単に開発できるフレームワークを開発した。

 具体的には、アプリからのセンシング要求に対して、消費電力を抑えるように自動でウェアラブル機器へセンシングの処理を振り分けるミドルウェアを開発。加えて、センシング・ミドルウェアから送り込まれる指示に従って常時センシング処理を行うウェアラブル機器側のファームウェアモジュールも開発し、ウェアラブル機器が備えたセンサーと低消費電力のプロセッサを用いて、センサーデータの取得、加工、条件判定を低消費電力で長時間継続できるようにした。ミドルウェアから新たな指示が届くことで、ノードでの処理内容が変わるため、アプリに合わせてさまざまなセンシングを行えるという。

センシング・アプリ開発フレームワークの概要

 これらにより、常時センシングするアプリを、センシングや省電力化のノウハウがなくても簡単に開発できるようになり、「センシングを活用したソリューション構築に要する開発工数を従来の約10分の1に短縮しつつ、消費電力を3分の1以下に低減できる」(富士通)という。

 富士通研では、2015年度中に同技術の実用化をめざす。また、ウェアラブル機器を同技術に対応させるためのインターフェイス使用は機器メーカーなどに公開し、対応機器の開発を促進する予定という。

川島 弘之