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M2Mで肥料・水量を最適化する農業クラウド「ZeRo.agri plus」

土壌や環境に優しい「養液土耕栽培」を実現

 株式会社ルートレック・ネットワークスは、M2Mプラットフォームによる養液土耕システム「ZeRo.agri plus」を5月7日より提供する。中規模施設栽培市場に最適な“ICT農業”を実現するという。

 同社はスモールスタートが可能な農業クラウド「ZeRo.agri」シリーズを展開している。導入した各地のハウス(施設)栽培農家から、(1)定植時期が異なる栽培、(2)複数施設での異なる作物の栽培、(3)同一施設内の日当たり・気温・水はけなど条件の違いによる栽培調整、(4)リモートからの営業指導などの課題を提示され、それに応えるため、新たに「ZeRo.agri plus」を開発した。

ZeRo.agri構成例

 ZeRo.agri plusは、同社が明治大学黒川農場との産学連携として開発したもので、同社のM2Mプラットフォーム「ZeRo」を用いて、明治大学黒川農場が研究を進める環境保全型農業「養液土耕栽培」(土壌に作物を栽培し、灌漑水に肥料を溶かして、水と肥料を同時に必要なだけ供給する栽培方法。肥料の利用効率化、環境保全効果などが得られる)の高度化を支援する。

 上述の課題に応えるため、1台の「ZeRo.agri」で最大6カ所の培養液供給を独立制御できるように区画(系統)を作り、区画ごとに設置した土壌センサーの情報に基づき、培養液供給量を自動で適正化する。

「培養液区画制御機能」構成例

 日々の運用は、タブレットでセンサーのグラフ確認と水分量の目標値を補正するだけ。システムが各種センサーの測定値から、日射量や土壌の状態を自動分析し、培養液供給量を調整してくれる。

 一定間隔で作物に必要なだけの灌水・施肥を行う養液土耕栽培により、土壌の塩類蓄積が軽減され環境保全が可能になるほか、作物の生育を安定化させやすく収量の増加や品質の安定化が見込めるとのこと。

 併せて、「タブレットカメラアプリ」を搭載し、タブレットのカメラ機能を利用して、作物の生育状況および災害管理メモを残す機能を実装。栽培に関するメモはすべてクラウドに自動保存されるため、営業指導員が現場にいなくても生育状況を把握し、リモートからでも栽培のアドバイスを行えるようになる。

 クラウドに蓄積された測定データや培養液供給量データはグラフ形式での閲覧やExcel形式でのダウンロードが可能。組織的農場運営にも役立つという。クラウド基盤としてはMicrosoft Azureを活用している。

 価格は、初期費用が120万円(税別)から、利用料が月額1万円(同)から。「ZeRo.agri」関連事業全体で今後3年間に10億円の売り上げを目指す。

 なお、今回の「ZeRo.agri plus」提供に伴い、点滴灌水資材メーカーのネタフィム・ジャパンとの協業も。節水と収量アップを実現する点滴栽培は日本ではわずか1%程度の普及率。両社は養液土耕栽培の日本での普及を目的に、販売協力、マーケティング協力、日本および海外市場への販促活動を行っていく。

川島 弘之