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シスコ、アプリケーションを中心としたSDNを実現する「ACI」

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は19日、アプリケーション中心のネットワークを実現する「アプリケーション セントリック インフラストラクチャ(ACI)」を発表した。

 「ACI」は、いくつかのコンポーネントから構成されるが、その中核となるのはコントローラ製品の「Application Policy Infrastructure Controller(APIC)」だ。「APIC」では、アプリケーションの要件に基づき、ポリシーベースでネットワークを制御する役目を担う。

 米Cisco Systems シニアバイスプレジデント グローバルデータセンター/バーチャライゼーションセールスのフランク・バルンボ氏は「APICがアプリケーション、インフラと緊密に“話す”ことにより、インフラはアプリケーションが何をしたいかを理解することができる。その結果、VLANやサブネット、IPアドレスなどを手動でマッピングする必要はなくなる」と、その価値を説明する。

 ネットワークを単に仮想化するだけでなく、ポリシーベースのアプローチにすることで、ネットワークエンジニアがいちいち手動で設定するような要素をなるべく省いて、容易に設定できるようにしているわけだ。ポリシーでは、アプリケーションが求めるセキュリティや帯域とQoS、ネットワークの範囲などを定義することになるが、すべて手動によるネットワーク設定と比べてどちらが容易かは、言うまでもないだろう。

 なお、ほかのコンポーネントやアプリケーションとの連携のためにRESTful APIが用意されるほか、既存のネットワーク自動化ツールやオープンソースコミュニティが推進するACI拡張(OpenStack、Open Daylight、仮想スイッチ、VXLANなど)との統合も実現するとしており、シスコではエコシステムの構築に力を入れていく考え。現時点で、CA Technologies、Citrix、EMC、F5、IBM、Microsoft、NetApp、OpsCode、Panduit、Red Hat、SAP、Splunk、Symantec、VCE、VMwareといった企業が、ACIのパートナーとして挙げられている。

米Cisco Systems シニアバイスプレジデント グローバルデータセンター/バーチャライゼーションセールスのフランク・バルンボ氏
ACIの特徴

 一方、ACI対応の物理スイッチとしては、シャーシ型ネットワークスイッチ「Cisco Nexus 9000シリーズ」と、スイッチ向けネットワークOS「NX-OS」のACIモード対応版を用意する。Nexus 9000シリーズは通常のスイッチとしても利用できるが、ソフトウェアのアップグレードと「APIC」の追加により、最適化されたNX-OSからACIモードのNX-OSへと円滑に移行可能としており、ACIを利用する場合の中核的なハードウェアになる。

 一方、Nexus 9000シリーズを単体のスイッチとして見た場合は、新しいASICの採用により、コストパフォーマンスや高密度、低消費電力といった特徴を持つ。8スロットタイプの「Cisco Nexus 9508」では、ラインレートで288ポートの40Gigabit Ethernet(GbE)を搭載でき、他社の倍のポート密度を提供可能というが、2014年にはさらに倍の576ポートへと拡張する予定。将来的な100GbEへの対応も予定されている。

 またバックプレーンフリー設計により、ポートあたりの消費電力を引き下げているほか、価格面でも、「新しいトランシーバー(Cisco QSFP BiDi Transceiver)を使えば、10GbEのマルチモードファイバーを40GbEでも利用できるので、既存のファイバーをはがして新しいインフラを張り直す必要はなく、移行コストを節約できる。10GbEの価格帯で40GbEを提供できる点が価値だ」とアピールした。

 このほか、仮想スイッチ「Cisco Application Virtual Switch(Cisco AVS)」もAPIの構成要素で、APICによる統合管理に対応している。

Cisco Nexus 9000シリーズ
ソフトウェアのアップグレードでACIに対応するという

石井 一志