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グローバル化やソーシャル化が進む今のビジネスの課題とは?~富士通・山本正已社長

富士通フォーラム基調講演

 富士通株式会社は、5月16、17日の2日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて、「富士通フォーラム2013」を開催。初日となる16日午前10時から、同社・山本正已社長による「お客様とともに描く、これからのビジネスと社会 Reshaping ICT, Reshaping Business and Society」と題した基調講演が行われた。

富士通はこれから生まれ変わる?

Fujitsu Technology and Service Visionを手にする富士通 代表取締役社長の山本正已氏
ビジネスが直面する新たな課題

 これまでの講演のように、演壇の前で語るのではなく、壇上を左右に動きながら、最新デバイスを使って自らデモンストレーション。身ぶり手ぶりを含めて語る手法は、これまでの山本社長のイメージを変えるものとなった。

 山本社長は、冒頭に、「富士通が目指しているのは、ビジネスのチャレンジや社会の変革を、シームレスに支えるという点。富士通は、このほど、Fujitsu Technology and Service Visionをまとめた。これまでは製品を作ってから体系にまとめていたが、これからはFujitsu Technology and Service Visionをベースに開発を進める。富士通はこれから生まれ変わる」などとした。

 また、家電業界や自動車業界の事例を出しながら、「日本は世界の一部となる。グローバルな競争からは逃れられない。また、既存のビジネスを置き換える新たなサービスが登場している。またソーシャル化といった流れとともに、高度なサービスが大衆化するといった動きが出ている。考えられないところからイノベーションが生まれており、そこにチャンスがある一方、リスクもある。ビジネスが直面しているのは、スピードへの対応、複雑性へのマネジメント、新たな価値の創造という3つの課題である」として、掲げた3つの課題について説明した。

 スピードでは、「機動的なビジネスを実現するには、それを支えるICTも機動的で、柔軟性がなくてはならない。だが、既存のICT資産も重要である。富士通は顧客が持つ資産を生かしながら、機動的なビジネス展開を可能にする取り組みを実施している。これをモダナイゼーションと呼ぶ。仮想化でサーバーを6分の1に集約できた、アプリケーションの統合で半分に数が減ったといった例がある」と語った。

 また、「富士通のモダナイゼーションには愛があり、技術がある」とし、「愛というのは、既存のシステムを守りながら、最新のシステムでモダナイゼーションを実現することにある。統合型プラットフォームはその例となる。新規プロジェクトに必要なサーバーをわずか一日で配備できる。そして電力消費も抑えることになる」などと、その価値をアピールする。

 さらに、機動性があるタブレットの必要性と、それを支援するセキュリティサービスの提供が重要であることを示しながら、山本社長自らがタブレットを持ち歩いていることを示しながら、「端末にはデータが一切残らないようなっているため、タブレットをなくしてもデータが漏えいしない。安心して居酒屋に行ける」として、会場を沸かせた。

ビッグデータを活用した意思決定を

 複雑性では、データを活用した意思決定支援に触れ、「いまは、意思決定が難しくなっている。その課題を解決するために、富士通では、ビッグデータを活用した業務改革を支援している。金融機関ではビッグデータを活用した提案を行ったところ、成約率が10%上昇したという例が出ている。ひとりひとりの顧客に対して、最適なサービスを提供するには、現場で発生するデータをリアルタイムで収集し、活用する必要がある。工作機械、自動車業界などにおいては、稼働状況をリアルタイムで収集し、これをデータ分析と組み合わせることで、故障の予兆をつかんだり、次の製品開発につなげることができる」などとした。

 一方で、「リスクマネジメントでも複雑性に対応している」とし、サイバーセキュリティへの取り組みの具体的事例を説明。専門組織である富士通クラウドCERTによって、クラウド上の脅威に迅速に対応していることなどを示し、「技術、運用、組織の3つの面から仮想的な防御を提案している」と語っている。

 新たな価値の創造では、工場設備をタブレットのカメラで写すと、修理する個所や修理方法が画面に現れるといったデモンストレーションや、富士通研究所が開発した、紙の情報を簡単な操作でデジタル化できる技術を自らデモンストレーション。その上で、創薬シミュレーションの事例や、オープンデータの活用といった例をあげて説明した。

 「コンピュータの進化によって、シミュレーション可能な領域が広がっている。富士通グループは、こうした環境を最先端のコンピュータとして提供するだけでなく、クラウドを通じて利用できたり、さまざまなアプリケーションをそろえることで、トータルにサポートし、新たな価値の創造を支援する」(山本社長)。

」自社のテクノロジーと、世界のトップベンダーの製品を組み合わせた統合環境を提供できる」と語った、山本正已社長

 さらに山本社長は、「富士通はビジネスと新たなチャレンジを支援する。そのためには、スマートデバイスから、サーバー、ネットワーク、サービスをシームレスに統合したサポートとして提案することが重要になると考えている。富士通は、われわれが持つテクノロジーと、パートナーである世界のトップベンダーの製品とを組み合わせた統合環境を提供できる」と語った。

 また、「ビジネス全体で活性化し、さまざまなサービスが生まれることで、社会的な課題の解決にも取り組んでいく」とし、ここでは、先進医療における心臓シミュレーションの事例や、医療機関との連携により、いつでもどこでも快適な医療の実現を目指すほか、食の安全の実現にICTを活用する次世代農業を、クラウドで支援するといったことも紹介。このほか、地域活性化として、観光支援や震災復興支援、スマートシティの取り組みなどにもついても触れた。

 山本社長は、「ICTを活用した豊かな社会の実現に貢献したい。富士通グループは、人にやさしい豊かな社会を目指し、Human Centric Intelligent Societyの実現を、中期的ビジョンを掲げている。ICTの進化により、このビジョンの実現に向けて、着実に一歩一歩前に進んでいる。さらなる技術革新が災害に強い街づくりや高度な農業、新たな交通システム、画期的な医療、エネルギーや資源の課題を解決することにつながる」と語り、「富士通は豊かな社会の実現に向けて、新しい分野への挑戦を続けていく」と決意をみせた。

 最後に山本社長は、「今年の富士通フォーラムでは、Reshaping ICT, Reshaping Business and Societyとして、みなさまのビジネスを支える取り組み、ソーシャルイノベーションへの挑戦を数多く紹介している。ビジネスへの新たな挑戦において参考になれば幸いである」と締めくくった。

 富士通フォーラム2013は、同社最大のプライベートイベント。山本社長が言及したように、「Reshaping ICT, Reshaping Business and Society」をテーマに、同社の最新技術や製品、ソリューションなどを一堂に展示。山本社長の基調講演のほかに、2日間に渡って、82のセッションが行われる。

富士通フォーラム2013の様子

(大河原 克行)