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日立の2012年度連結決算、事業構造改革の影響で減収も、コスト構造改革により増益達成

 株式会社日立製作所(以下、日立)は10日、2012年度(2012年4~2013年3月)の連結業績を発表した。

 連結売上高は前年同期比6.5%減の9兆410億円、営業利益は同2.4%増の4220億円、税引き前利益は同38.2%減の3445億円、当期純利益は同42.4%減の2377億円となった。

2012年度の連結決算
日立の代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏

 日立の代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏は、「事業構造改革の推進にともない売上高が減少した一方で、財務基盤の改善やコスト構造プロジェクト『Hitachi Smart Transformation Project』の推進により、営業利益は増益を実現できた。なお、HDDおよび中小型ディスプレイ事業の売却影響を除けば、連結売上高は前年から218億円の微減にとどまり、営業利益は452億円の増加となる。今年度からは、さらなる高収益化に向けた事業構造の改革を進めていく」との考えを示した。

2012年度 事業部門別の売上高
2012年度 事業部門別の営業利益

 事業部門別の業績では、情報・通信システムの売上高は前年比1%増の1兆7865億円、営業利益は29億円増の1046億円。国内のサービスに加え、海外のストレージソリューションやATMが堅調に推移したほか、為替影響などにより若干の増収となった。

情報・通信システム部門の概況

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年比1%増の1兆2356億円。営業利益は同12%減の756億円。そのうちソフトウェアの売上高が同6%減の1606億円、サービスが同2%増の1兆750億円。ハードウェアの売上高は同2%増の5509億円、営業利益は同88%増の290億円。そのうち、ストレージの売上高は同5%増の2024億円、サーバーは同2%減の503億円、PCは同10%減の292億円、通信ネットワークは同13%減の1227億円。その他の売上高は同18%増の1460億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が同8%増の3790億円となった。

 電力システムの売上高は前年比9%増の9046億円、営業利益は638億円改善の299億円と黒字転換。社会・産業システムの売上高は同9%増の1兆3138億円、営業利益は110億円増の602億円。電子装置・システムの売上高は同8%減の1兆143億円、営業利益は206億円悪化の293億円。建設機械は売上高が同5%減の7560億円、営業利益は85億円悪化の546億円。

 高機能材料の売上高は同7%減の1兆3364億円、営業利益は185億円悪化の584億円。オートモーティブシステムの売上高は同1%減の8068億円、営業利益は16億円悪化の354億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同5%減の8185億円、営業損失は55億円改善の53億円の赤字。金融サービスの売上高は同4%減の3402億円、営業利益は9億円悪化の292億円。その他部門の売上高は同35%減の1兆1110億円、営業利益は325億円悪化の401億円となった。なお、2012年4月より、コンポーネント・デバイス部門を廃止しており、従来同部門に含まれていた事業については、その他部門に含めている。

2013年度の概観

 2013年度通期見通しについては、売上高は前年比1.8%増の9兆2000億円、営業利益は同18.5%増の5000億円、経常利益は同23.4%減の4250億円、当期純利益が同28.3%増の3050億円とした。

 事業セグメント別では、情報・通信システムの売上高は前年比2%増の1兆8200億円。営業利益は153億円増の1200億円とした。

 「海外のストレージソリューションや国内サービスが好調に推移していることに加え、新たなサービスや製品の販売拡大を推進することで、増収を見込んでいる。また、営業利益については、サービスにおいて、昨年度に発生したプロジェクトの赤字を収束させることで、増益となる見通し」(中村氏)としている。

2013年度 事業部門別の売上高の見通し
2013年度 事業部門別の営業利益の見通し

 電力システムの売上高は前年比17%減の7500億円、営業利益は149億円悪化の150億円。社会・産業システムの売上高は同4%増の1兆3700億円、営業利益は57億円増の660億円。電子装置・システムの売上高は同7%増の1兆900億円、営業利益は176億円増の470億円。建設機械は売上高が同6%増の8000億円、営業利益は273億円増の820億円。

 高機能材料の売上高は同2%減の1兆3100億円、営業利益は255億円増の840億円。オートモーティブシステムの売上高は同2%増の8200億円、営業利益は55億円増の410億円。デジタルメディア・民生機器の売上高は前年並の8200億円、営業利益は53億円改善のブレイクイーブン。金融サービスの売上高は同3%減の3300億円、営業利益は8億円増の300億円。その他部門の売上高は4%増の1兆1500億円、営業利益は49億円増の450億円とした。

 1ドル100円台に入るなど円安が進んでいる影響については、「海外から仕入れる材料費や電力料金などについてはマイナスだが、年間で、1円で約50億ドルの為替感応度があることを考えると、トータルではプラスになると考えている。また、1ドル100円台で推移することは、日本経済にとってもよい材料になるだろう」(中村氏)と述べた。

(唐沢 正和)