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日立、2012年度第3四半期の連結決算は減収減益~通期業績予想を下方修正

営業利益率5%達成には引き続き意欲

日立 代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏

 株式会社日立製作所(以下、日立)は2月4日、2012年度第3四半期(2012年4月~12月)の連結業績を発表した。

 連結売上高は前年同期比5.4%減の6兆4687億円、営業利益は同12.7%減の2319億円、税引き前利益は同19.0%減の1756億円、当期純利益は同40.9%減の503億円となった。

 国内売上高は、前年同期比2%減の3兆7971億円、海外売上高は同10%減の2兆6715億円。海外売上高比率は41%となった。

 第3四半期単独では、売上高は前年同期比7%減の2兆1131億円、営業利益は同28%減の683億円、税引き前利益は同29%減の594億円、当期純利益は同41%減の202億円の減収減益となった。

 日立の代表執行役 執行役副社長の中村豊明氏は、「HDD事業の売却影響を除けば、第3四半期単独の売上高は前年同期比1%増、第3四半期累計では同2%増となる。四半期業績では、2009年度第3四半期以降、13四半期連続での最終黒字となっている。この第3四半期は、HDD事業や中小型液晶ディスプレイ事業の売却影響、日立金属におけるレアアースの大幅な価格下落、ルネサスでの債権放棄、日立ハイテクノロジーズにおける在庫削減などの要素があっても、黒字を出すことができた。『2012 中期経営計画』では、収益を出せる体質を目指してきたが、3年をかけた赤字体質脱却の目標は、おおむね達成できたと考えている」と語った。

情報・通信システムは増収減益、サービスは増収

 第3四半期累計の事業セグメント別業績では、情報・通信システムの売上高が前年同期比3%増の1兆2423億円。営業利益は同14%減の431億円となった。

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年同期比3%増の8471億円、そのうちソフトウェアの売上高が同8%減の1158億円、サービスが同5%増の7313億円。ハードウェアの売上高は前年同期比3%増の1468億円。そのうち、ストレージの売上高は同3%増の1468億円、サーバーは同7%増の375億円、PCサーバーおよびビジネス向けクライアントPCで構成されるPCは同14%減の177億円、通信ネットワークは同14%減の857億円。その他の売上高は同26%増の1073億円となった。

 なお、ストレージソリューション事業は、売上高が前年同期比5%増の2730億円となった。

 第3四半期には、通信ネットワークの売上高が減少する一方、サービスの売上高が上昇。「他社リプレース案件におけるコストオーバーランを解消することを目指したが、それをカバーできなかったのが減益理由。情報・通信システムは第3四半期までは増収減益だが、通期では増収増益を目指す」とした。

 電力システムの売上高は前年同期比15%増の6192億円、営業利益は前年同期の112億円の赤字から、140億円の黒字に転換。社会・産業システムの売上高は前年同期比9%増の8422億円、営業利益は同2%増の145億円。電子装置・システムの売上高は同7%減の7289億円、営業利益は同32%減の203億円。建設機械は売上高が同1%増の5465億円、営業利益は同18%減の321億円。

 高機能材料の売上高は前年同期比5%減の1兆62億円、営業利益は同19%減の462億円。オートモーティブシステムの売上高は同4%増の5928億円、営業利益は同3%減の259億円。デジタルメディア・民生機器の売上高が同6%減の6269億円、営業利益は前年同期の4億円の黒字から23億円の赤字に転落。金融サービスの売上高は前年同期比2%減の2602億円、営業利益は同3%減の198億円。その他部門の売上高は同37%減の8231億円、営業利益は同47%減の296億円となった。

 デジタルメディア・民生機器部門では、第3四半期単独では、黒字を確保。「薄型テレビの事業構造改革や、タイにおける洪水被害の影響がなくなったことによるもの。第4四半期は、特別な対策を実施し、構造改革に決着をつけることになり、来年はネガティブなものはなくなる。来年度以降は、白物家電がメインになるので、デジタルメディア・民生機器部門は黒字を出せるだろう」とした。

通期見通しは下方修正、本年度2回目

 なお、2012年度の通期見通しについては、10月公表値をさらに下方修正した。本年度2度目の下方修正となる。

 売上高は10月公表値から1000億円減少の8兆9000円、営業利益は600億円減少の4200億円、税引き前利益は700億円減少の3300億円、当期純利益は500億円減少の1500億円とした。営業利益は前年比増益を確保するが、営業利益率で4.7%となる。5%という目標を下回り、3年連続での2000億円台の最終利益達成も難しくなった。

 同社が2012年度を最終年度とした「2012 中期経営計画」では、売上高10兆円、営業利益率で5%超、最終利益で2000億円台の安定的確保といった指標を掲げていたが、これらの計画指標を下回ることになる。

 しかし中村副社長は、「営業利益率5%の達成はあきらめたわけではない。まだ2カ月残っており、経費削減などの緊急対策の実施や、小口案件の積み上げを行っている。さらに円安効果もある」とし、営業利益率5%達成に意欲をみせた。円安は営業利益ベースで通期320億円の上振れ効果が見込まれるという。

 情報・通信システム部門は、10月公表値の1兆7800億円の売上高は据え置いたが、営業利益は50億円減の1150億円と下方修正した。

 「情報・通信システムの売上高は、期初公表値に比べて200億円増を据え置いているが体質改善により、コスト構造を変え、支出が減少。ストレージやATMでは、円安効果も貢献することになる。ただ上積みするための対策を、もう少ししなくてはならない」などとした。

 さらに、「ハードウェアもSIも黒字を出せるものになっているが、リプレース案件では失敗した。受注する際に問題があったが、今後の案件では仕掛けやツールを変更して、システム的に管理できるようにしていく。今後の案件ではこうした問題は出ない。今後、銀行システムの構築などもあり、社会的影響を出さないように対策をしていく」などとした。

 セグメント別では、売上高および営業利益において、電子装置・システム、高機能材料、デジタルメディア・民生機器、その他の各セグメントで下方修正している。

 また、「アベノミクスの影響はまだ国内だけ。(2013年度)第1四半期への影響は少ないとみている」という。

(大河原 克行)