NEC、2012年度上期決算は増収増益に~経常利益が大幅改善し黒字化達成
日本電気株式会社(以下、NEC)は26日、2012年度第2四半期累計期間(2012年4月~9月)の連結業績を発表した。
売上高は、前年比0.3%増の1兆4478億円、営業利益は前年比597.7%増の474億円、経常利益は前年同期から403億円改善の299億円、当期純利益は190億円改善の80億円となった。
NEC 代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏 | 上期概況のサマリー |
NEC 代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏は、「売上高は、ITソリューションやキャリアネットワークがけん引したことで、前年同期比で0.3%の増収、期初計画からは478億円の増加となった。また、液晶関連の特許を鴻海精密工業へ約95億円で売却計上したことも売上増に寄与した。なお、個人向け事業などの非連結化の影響を除くと約3%の増収となる」と説明した。「営業利益については、大幅増益となったITソリューションやキャリアネットワークを中心に、全セグメントで黒字化を達成した。この中には、130億円の構造改革効果も含まれる。そして、当期純損益も、営業利益の増加に加え、持分法投資損益の改善、およびレノボ株式の売却計上により、黒字に転換した」としている。この実績は、10月19日に実施した上方修正の数値からは大きな変化はないという。
上期実績のサマリー | セグメント別の上期実績 |
セグメント別業績は、ITソリューション事業の売上高は前年比7.8%増の5783億円、営業利益は221億円増の228億円。ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年同期比8.0%増の3918億円、プラットフォームの売上高は7.2%増の1866億円となった。
「とくに、ITサービスにおいて、通信業、製造業、流通サービス業などで堅調に推移したほか、豪州CSG社ITサービス事業の連結化により増収となった。ITサービスでは、ワークスタイル変革、パッケージ領域、IT基盤などを中心に、クラウド案件が活性化するとともに、スマートデバイスの業務活用など新しいビジネスモデルも立ち上がってきている」と述べた。プラットフォームは、大型案件によりハードウェア、ソフトウェアを中心に増収となった。「営業利益の内訳は、ITサービスが170億円強、プラットフォームが60億円弱となっている」という。
キャリアネットワーク事業の売上高は10.1%増の3120億円、営業利益は117億円増の270億円。国内事業が堅調に推移したことや、米国コンバージス社の事業支援システム事業を連結化したことなどにより増収を達成。海外事業については、「サービス&マネジメントや海洋システムで増収したものの、投資抑制の影響を受けたモバイルバックホールで減収になった」としている。営業利益は、国内事業の売上増および原価低減などにより、将来の成長に向けた先行投資増を吸収するかたちで増益となった。
ITソリューション事業の業績 | キャリアネットワーク事業の業績 |
社会インフラ事業の売上高は1.1%増の1419億円、営業利益は21億円増の82億円。「社会システム分野において、消防・防災の需要が維持したほか、航空宇宙・防衛システム分野が堅調に推移した」という。営業利益は、売り上げの増加や原価低減などより増益となっている。
パーソナルソリューション事業の売上高は14.6%減の3025億円、営業利益は22億円減の12億円。携帯電話の出荷台数減少により、モバイルターミナルが減収。「上期の携帯電話出荷台数は170万台で、当初の計画よりも30万台の下ブレになった」という。PCその他については、タブレットの立ち上がりやビジネスPCの増加があったものの、個人向けPCの非連結化の影響で減収となった。「個人向けPCの非連結化の影響を除けば、前年同期比9%の増加となる」としている。営業利益は、モバイルターミナルの売上減が影響し、大きく減少した。
社会インフラ事業の業績 | パーソナルソリューション事業の業績 |
その他事業では、液晶ディスプレイ用パネル事業の非連結化、および電子部品事業やエネルギー事業の減少などにより、売上高は12.0%減の1130億円となった。一方、営業利益は、液晶関連特許の売却などにより、100億円増の130億円と増益となった。
現在進めている構造改革の進捗について、遠藤氏は、「費用構造改革として、2012年度内に400億円の改善効果を確保できたため、人員削減計画を完了した。400億円の内訳は、事業構造改革およびグループスタフ効率化で200億円。特別転進支援施策の応募者数は、2393人となった。外部リソース削減で40億円。役員・管理職、一般従業員の月収削減など緊急人事施策で160億円となる」と説明した。
また、事業構造改革については、「携帯電話事業の抜本的な構造改革を推進している」という。具体的には、NECカシオモバイルコミュニケーションズおよびNEC埼玉の開発・生産体制のスリム化が完了し、約500人を削減。さらに、海外JDM(Joint Design Manufacturer)の本格活用をスタートしている。このほか、プラットフォーム事業では、スタフ部門、ハードウェア開発・生産体制のスリム化が完了。NECトーキン(電子部品事業)では、キャパシタ事業の再構築が完了し、タイ新拠点の立ち上げにより約3000人を削減。米国KEMET社との資本・業務提携も行っている。
業績予想のサマリー | セグメント別業績予想のサマリー |
通期見通しは、据え置きとし、売上高で前年同期比3.7%増の3兆1500億円、営業利益は前年同期比263億円増の1000億円、経常利益は同280億円増の700億円、当期純損益は同1303億円改善の200億円を計画している。遠藤氏は、「ITソリューションやキャリアネットワークなど、上期の事業モメンタムは良好であるが、景気の先行き不透明も踏まえて、期初計画の必達、復配の実現を目指す」と、通期予想の達成に意欲を見せた。
ITソリューション事業の通期見通しについては、売上高が前年同期比5.5%増の1兆2550億円、営業利益は272億円増の720億円を見込む。
「ITサービスは製造業、流通サービス業を中心とした投資の再開に加え、引き続き堅調な通信事業者などで、前年同期比5.5%の増収を見込んでいる。プラットフォームは、大型案件によって、前年同期比7.4%の増収を見込んでおり、とくに昨日発表した三井住友銀行向け勘定系システムの受注案件が、下期業績に一部貢献するものと期待している。営業利益は、ITサービスで570億円、プラットフォームで150億円を計画している」との見通しを述べた。