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NEC、2012年第3四半期決算は増収増益で黒字転換~すべてのセグメントで計画を上ぶれ

川島勇取締役執行役員兼CFO

 日本電気株式会社(以下、NEC)は1月31日、2012年度第3四半期(2012年4月~12月)の連結業績を発表した。

 第3四半期累計の業績は、売上高は前年同期比2.7%増の2兆1698億円、営業利益は前年同期の14億円の赤字から718億円の黒字に転換。経常利益は前年同期の219億円の赤字から517億円の黒字に、当期純利益は前年同期の975億円の赤字から、114億円の黒字となった。

 また、第3四半期単独の業績は、売上高は前年比7.9%増の7220億円、営業利益は前年同期の82億円の赤字から244億円の黒字に転換したほか、経常利益は前年同期の115億円の赤字から218億円の黒字に、当期純利益は前年同期の865億円の赤字から34億円の黒字となった。

 NECの川島勇取締役執行役員兼CFOは、「第3四半期累計では、すべてのセグメントで計画を上ぶれしており、特に、ITソリューションとキャリアネットワークが大きく上ぶれしている。結果として、計画を上回る動きとなっている。営業利益、経常利益、当期純利益のすべてで黒字化した。第3四半期も当期黒字に転換した。売り上げ増に加えて、構造改革効果もある」などと総括した。

2012年度第3四半期の概況サマリー
構造改革の進ちょく状況
セグメント別の実績

 第3四半期単独のセグメント別業績は、ITソリューション事業の売上高は前年同期比9.6%増の2809億円、営業利益は110億円改善の74億円。

 ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年同期比11.2%増の1954億円、プラットフォームの売上高は同6.3%増の855億円。

 ITサービスでは、製造業、流通・サービス業などで堅調に推移したほか、豪CSG社のITサービス事業の連結化が貢献。プラットフォーム事業では大型案件により増収となった。営業利益はITサービスが約65億円、プラットフォームが約10億円だという。

 「営業利益はITソリューション全体で約20億円想定を上回った。ITサービスでは売上高で70億円計画を上回り、営業利益では20億円上回った。だが、プラットフォームでは、海外事業を中心に売上高で50億円下回り、営業利益は想定通りとなった」と語った。

 キャリアネットワーク事業の売上高は前年同期比7.7%増の1526億円、営業利益は前年同期から83億円増の165億円。国内事業において、移動系を中心に堅調に推移したほか、海外事業はサービス&マネジメント、海洋システムが増収要因となった。

 社会インフラ事業の売上高は前年同期比19.6%増の837億円、営業利益は前年同期から46億円増の59億円。航空宇宙・防衛システム分野が好調に推移した。

 パーソナルソリューション事業の売上高は前年同期比5.3%増の1496億円、営業利益は前年同期から82億円増の52億円となった。モバイルターミナルは売上高が前年同期比25.4%増の745億円、PCその他が同9.1%減の751億円。営業利益はモバイルターミナルが約30億円の黒字、PCその他も約20億円の黒字となった。

 モバイルターミナルでは、携帯電話端末の売り上げ増、NECモバイリングの携帯販売事業の好調により増収。PCその他では、ビジネスPCは堅調だったが、PC以外の連結子会社において、前年同期に特需があった反動があり減収となった。携帯電話事業を中心とした構造改革効果も増益に寄与したという。

 「第3四半期の携帯電話の出荷台数は80万台と前年実績を10万台下回っている。だが、NECカシオモバイルは第3四半期は黒字となっている」

 その他事業においては、エネルギー事業の減少などにより、売上高は前年同期比6.5%減の551億円、営業利益は前年同期から21億円増の44億円となった。

 構造改革の取り組みについては、第3四半期で130億円、第3四半期までの累計で260億円の実績があり、当初計画通りに進ちょくしているという。2012年度に400億円の構造改革効果を見込んでいる。

通期業績予想は据え置き

業績予想サマリー
セグメント別業績予想サマリー

 なお、2012年度の通期業績見通しについては、10月26日の公表値を据え置いた。

 売上高は前年比3.7%増の3兆1500億円、営業利益は前年から263億円増の1000億円、経常利益は同280億円増の700億円、当期純利益は同1303億円増の200億円。「通期計画を確実に達成するとともに、さらなる上積を目指したい」と語った。

 また、セグメント別の業績予想も据え置いている。

 セグメント別の通期見通しは、ITソリューション事業の売上高は前年比5.5%増の1兆2550億円、営業利益は272億円増の720億円。ITソリューション事業のうち、ITサービスの売上高は前年比4.7%増の8550億円、営業利益は570億円、プラットフォームの売上高は7.4%増の4000億円、営業利益は150億円を計画している。

 「国内IT投資は回復基調にあるが、民需を中心にした動向に注視していく必要がある。2013年にかけては、2%の成長をイメージしている。製造業、流通・サービス業、通信事業者向けと、新規業績連結によりITサービスの売上高目標は達成が可能だろう。プラットフォームでは、海外および国内のハードウェア事業でリスクがあると考えている。営業利益計画はクリアしたい」とした。

 また、「クラウド事業については、前年に比べて成長しており、数100億円レベルの事業規模になる」という。

 キャリアネットワーク事業の売上高は前年比15.3%増の6950億円、営業利益は24億円増の530億円。「売り上げに関しては海外事業を中心にリスクがあるとみているが、営業利益計画は第3四半期までの水準をみれば保守的」とした。

ITソリューション事業の概況
キャリアネットワーク事業の概況

 社会インフラ事業の売上高は前年比13.5%増の3750億円、営業利益は28億円増の190億円。「受注が順調な航空宇宙・防衛システム分野の増加により、第4四半期もしっかり追い込んでいく。営業利益目標は保守的な水準ととらえている」という。

 パーソナルソリューション事業の売上高は前年比7.7%減の6100億円、営業利益は90億円増の100億円。モバイルターミナルは売上高が同1.7%減の2960億円、PCその他が同12.8%減の3140億円。「携帯電話は年間430万台を目指しているが、10%強の未達のリスクがある。また、営業損益の目標についてもリスクがある。NECカシオモバイルは、第3四半期に続いて、第4四半期も黒字を見込んでいるが、上期の赤字が残るリスクがある」としている。

社会インフラ事業の概況
パーソナルソリューション事業の概況

 その他事業においては、売上高は前年比15.2%の2150億円、営業利益は49億円増の160億円としている。「台湾鴻海グループへの液晶ディスプレイ技術の特許売却益があり、それを含めると保守的な目標だと考えている」と語った。

 そのほか、「アベノミクスにおいては、セキュリティやビッグデータなど約2割の領域で当社のビジネスが関連すると考えている。これをどうビジネスに結びつけるかが鍵になる」としたほか、「円が1円安くなると5億円のプラス影響があるが、これは年間を通じた場合のものであり、本年度業績では、円安の影響はそれほど受けない」などとした。

 一方、同社ではルネサスエレクトロニクスへの保証金のうち、38億円を債権放棄することも発表した。

事業ポートフォリオの見直し

(大河原 克行)