日本HP、仮想シャーシ機能を備えたブレードスイッチや“日本向け”シャーシスイッチを発売
3層構造を脱したフラットなネットワークを推進
日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は25日、ネットワーク製品のラインアップに、中小規模向けのシャーシ型スイッチ「HP 12504 Switch Chassis」(以下、HP 12504)、およびブレードサーバー「HP BladeSystem」向けのインターコネクト「HP 6125Gブレードスイッチ」「HP 6125G/XGブレードスイッチ」を追加すると発表した。いずれも、ネットワーク管理を容易にする仮想シャーシ機能「HP Intelligent Resilient Framework 2」(以下、IRF)に対応しているのが特徴という。
■フラットなネットワーク構築のための重要な要素技術「IRF」
IRFとは、ひとことで言うと、複数の物理スイッチを仮想的に1台のスイッチとして取り扱う技術。論理的には1台のスイッチとして見えるため、物理スイッチ1台1台を設定するのではなく、1回で1組の設定を行えるほか、冗長化についてもSTPやVRRPといった、複雑な設計を必要とする従来の技術を利用する必要がない点が特徴。しかも、STPやVRRPでは数十秒~数秒かかる障害時の経路切り替えが、IRFでは数ミリ秒で完了するため、その上で利用されるアプリケーションに対しても影響を最小化できる。
また、もともとは米HPが買収した米3Com(H3C)の技術であり、エッジスイッチからトップオブラックスイッチ、コア向けのシャーシ型スイッチまで幅広い機種で対応しているのもポイントで、旧3Com製品に限ればその8割をカバーしているという。
各ネットワークベンダーは現在、仮想化やスケールアウトが進み、サーバー間(イースト-ウエスト)のトラフィックが激増する今のデータセンター環境に対応できなくなった旧来の3層構造のネットワークから、1層あるいは2層のフラットなネットワークへの変化を推進しているが、日本HPではこのIRFを、ネットワークのフラット化に向けた大きな要素技術の1つとしてとらえ、推進していく考え。
日本HP サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリスタンダードサーバー・ネットワーク製品本部の宮本義敬本部長は、「“伝統的な”3層構造では変化に追随できず、ネットワークがボトルネックになってしまっている。当社では、IRFと、1ポートを分割して利用できる『HP バーチャルコネクト』を柱として、シンプルなネットワークを提供していきたい」と述べ、今後の方向性を示していた。
日本HP サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリスタンダードサーバー・ネットワーク製品本部の宮本義敬本部長 | IRFの概要 | IRFの優位性 |
■“日本向け”の小型シャーシスイッチと初のIRF対応ブレードスイッチ
そのIRFに対応した新製品のうち「HP 12504」は、シャーシ型レイヤ3スイッチ「HP 12500シリーズ」のローエンドモデルで、10Uサイズの小型筐体で提供される。従来の同シリーズでは、40U、22Uの大型製品のみが提供されていたが、日本HP サーバー&ネットワーク製品統括本部 インダストリスタンダードサーバー・ネットワーク製品本部 HPネットワーク製品企画部 マネージャーの伊佐治俊介氏「日本市場を考えて、中小規模のデータセンターでもスモールスタートできる製品がラインアップに追加された。(利用しやすいように)電源も100Vに対応している」という点を強調する。
具体的には、ラインカード1枚、10Gigabit Ethernet(GbE)×8ポートから開始し、最大構成では10GbEを128ポート(ノンブロッキングの場合は最大64ポート)まで拡張可能。IRFによって、最大4筐体までを1つのスイッチとして取り扱えるので、小さな構成で導入しても、構成を随時成長させていけるとした。なおラインカードは従来の「HP 12500シリーズ」用をそのまま利用可能で、将来的には40GbE、100GbEやFCoE対応なども見据えているとのこと。
筐体の価格は94万7100円で、10月25日より販売を開始する。
「HP 12504」の特徴 | 「HP 12500シリーズ」用ラインカードの1例 |
一方の「HP 6125G」「HP 6125G/XG」は、HP BladeSystemに内蔵できるインターコネクトスイッチ。ほかのネットワーク製品と同じネットワークOS(Comware OS)の環境を提供でき、ブレードスイッチとしては初めてIRFに対応したことで、最大10台のスイッチを1つの仮想的なスイッチとして運用できる。
2製品の違いはインターフェイスの種類で、「HP 6125G」はGbEダウンリンク×16、1GbEアップリンク×最大8ポート(うち2ポートはIRF接続用として10GbEで利用可能)を搭載。「HP 6125G/XG」はGbEダウンリンク×16とGbEアップリンク×4、10GbE対応SFP+×4(IRF接続用として利用可能)を搭載する。価格はそれぞれ22万5500円、57万7500円。
伊佐治氏は、「例えば物理集約やスケールアウト環境では、コア+アグリゲーションとして『HP 12500シリーズ』とIRFを利用しつつ、ブレードサーバー側の『HP 6125G』によってエッジのネットワークを集約する、といった2階層のネットワークが構築可能。一方サーバー仮想化やVDIの環境では、ブレードサーバー側で『HP バーチャルコネクト』による仮想化を行い、直接、『HP 12500シリーズ』のコア層へ接続する1階層のネットワークが適している」と、これらの製品の活用法を説明。シンプルなネットワーク構築が可能になるとアピールしていた。
「HP 6125G」「HP 6125G/XG」の特徴 | 今回の新製品を利用することで、2層あるいは1層のシンプルなネットワークが構成できるという |