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ニチイ学館と日本マイクロソフト、医療機関向けITソリューションの提供で協業

第1弾として、Kinectの技術を生かした診療支援サービスなどを提供

 株式会社ニチイ学館と日本マイクロソフト株式会社は1日、医療機関向けビジネスについて業務提携を行うと発表した。ニチイ学館では、ITを活用した医療機関向けのサービスを日本マイクロソフトと共同開発し、順次提供していく予定。

 慢性的な人材不足や業務負荷の増大などに対応するために、医療機関におけるITの必要性は以前より指摘されていたが、「残念ながら、医療におけるIT化は10年は遅れているといわれており、2010年時点で、電子カルテの導入はわずか14%、オーダリングシステムも26.4%にとどまっている」(ニチイ学館 代表取締役社長の齊藤正俊氏)のが現状だ。

 そこでニチイ学館ではこうした状況を打開するため、日本マイクロソフトと提携し、ニチイ学館の持つヒューマンパワーと、日本マイクロソフトのITパワーを融合し、医療分野でのIT化促進を図るとした。

 日本マイクロソフトをパートナーとして選択した理由については、「技術力と幅広い製品、販売実績、豊富な海外医療の事例といった大きな資産を持っている」(齊藤社長)と評価。「柔軟性が高く、医療機関ですでに導入されている既存システムとの連携が容易である。また、汎用性が高く、PC以外のスマートデバイスにも対応しやすい点も強みと感じている」といった日本マイクロソフトの技術力と、ニチイ学館のノウハウ、人材力をあわせ、個々の医療機関のニーズに即したシステムと人材を提供する。

ニチイ学館の齊藤正俊社長【右】と日本マイクロソフトの樋口泰行社長【左】
ニチイ学館の医療分野におけるノウハウ、人材力と、日本マイクロソフトのITの力を組み合わせ、業界特化型のソリューションを提供するという

 適応領域は、まずは3つの分野を想定する。そのうち「経営支援サービス」では、医療機関の経営健全化をサポートするため、経営データの見える化と分析を適切に行えるように支援。また「医療支援サービス」では、医師や看護師の業務負担を軽減し、コミュニケーションを活性化して供給体制を整備する。3つ目の「地域連携サービス」では、医療機関と介護施設、利用者宅間の情報連携などを行っていく。

 日本マイクロソフトの代表執行役社長、樋口泰行氏は「医療機関の経営においては、収支を意識した取り組みが活発化しており、そのためには経営データの見える化が必須。そこではSharePointやSQL Serverが有効に働く。一方、非接触型デバイスを活用した医療支援では(人の動きをそのまま取り込むナチュラルインターフェイスの)Kinectを生かせるし、地域の医療連携については情報共有基盤が重要になるので、LyncやSharePointを軸にした開発を行うことになる」と述べ、自社の製品が医療機関向けITソリューションにおいても力を出せると強調する。

主に3つの分野でソリューションを提供するという

 なお最初のサービスとしては、Kinnectの技術を活用した手術室向け非接触型画像操作システム「Opect」が、10月1日より提供開始される。従来、手術中の執刀医が患者のさまざまな情報を閲覧するには、執刀医自らが減菌器具を外し術野を離れて端末を操作するか、サポートスタッフが執刀医に変わってPC操作を行う必要があったが、Opectでは「どこにも触れず」「術野を離れず」「画像を操作」できる点が特徴で、執刀医自らが容易に操作できるという。

 すでに東京女子医科大学では先行して導入され、相応の効果を上げているとのことで、ニチイ学館では、手術件数が多い大病院、脳外科・外科・整形外科系を中心とした医療機関を対象として販売を進める計画だ。価格は49万8000円。

 このほか、12月下旬には医療機関向けのクラウド型グループウェア「メディクラウド」を製品化する。Office 365とWindows Azureを基盤に、医療現場でニチイ学館が培ったノウハウを盛り込むことで、医療機関に特有のニーズを満たせるという。

 具体的な機能としては、通常のグループウェアが持つメール、掲示版、文書管理、Web会議などの機能を提供でき、円滑な情報の発信と共有が可能なほか、今後はさらに医薬品検索、患者の声、診療報酬チェックといった機能が追加される予定である。予定価格は、初期費用が31万5000円、基本システム管理費用が月額1万500円からで、別途クラウドサービス利用料が必要になる。

 なおニチイ学館では、両製品についてそれぞれ3億円の売り上げを見込んでいる。

診療支援サービス「Opect」
経営支援サービス「メディコネクト」