富士通、ビッグデータを活用するデータキュレーションのサービス化を推進


 富士通はビッグデータを活用するデータキュレーションに関する記者説明会を開催。富士通が推進するビッグデータを活用するためのデータキュレーションと、その事業化方針を説明した。

商品開発に役立てる、“ひとり一人に価値を返せる”ビッグデータ活用

富士通株式会社 インテリジェントサービス本部 インテリジェントコンピューティング室 シニアマネージャー 高梨益樹氏

 自らもキュレーターである、富士通株式会社 インテリジェントサービス本部 インテリジェントコンピューティング室 シニアマネージャー 高梨益樹氏は、「ビッグデータによって人や交通の流れなど都市の状態などより大きな対象を捉えることが可能になる。そういった解析データは公共事業などには活かされるものの、漠然とデータを集積しても人の役に立たない」として、富士通ではひとり一人に価値を返せるようなビッグデータ活用の推進を目指していると述べた。

 富士通では、BI/BAを担当してきた研究者、コンサルタント、プロダクト開発者、SEなどを集めて2011年1月にキュレーター組織を設立。キュレーターの専門スキルとしては、モデリングにおいては数学、統計学、金融工学など、アナリティスクスにおいては多変量解析、機械学習、最適化など、システムデザインにおいては並列分散処理、CEPなどが挙げられるという。

 2012年4月にはデータキュレーションのサービス化第一弾となる商品「データコンサルティング」を発表。ビッグデータ活用の入門編といった位置づけのみではなく、実際の商品開発に役立てるデータコンサルティングを行うサービスとなるが、標準的なプランでは目標設定に約2週間、モデリングとアナリティスクに約6週間の合計8週間の期間で、費用的には500万円程度になるとした。


商品そのものから取得するデータは事業者しか手にすることができない貴重な情報資源富士通は2011年1月にキュレーター組織を設立2012年4月に「データコンサルティング」を商品化した
データコンサルティングの進め方データビューイングデータビューイングの結果をもとに分析方針書を作成する

 高梨氏は、「データの中でも、商品そのもの、製品やサービスから直接得られるログは事業者しか得ることができない大量の事実データであり、価値がある」と説明。その例として、エアコンを挙げた。

 「エアコンは世界で数十社が作っており、非常にコモディティ化が進んでいる。コモディティ化を打ち破るために『よく眠れるエアコン』というものを作ろうという場合に、どういった指標を設けるか、眠りの指標化ができないと、製品スペックや要件が作れない。研究開発や商品企画の中で、ほんとうにこういう製品が作れるかというフィジビリティスタディをやるビジネス」だと説明。たとえば、眠れるエアコンなら、シーリングライトのセンサやテレビのセンサなどを使うといったデータ活用も考えられると述べた。

 デモでは、エアコンのユーザー操作と外気温、設定温度、人感センサーによる人の活動量のログをグラフ化して見せた。ログからはたとえば、人感センサーによって活動量が高い、人が動いているという場合に、エアコンを動作させると室温を下げるが、それがききすぎているのではないかといった考察が導き出せるとした。この場合、「人感センサーが効き過ぎているのでそれを緩和する」といった商品開発に結びつけることが可能だとした。

エアコンの稼働データから、利用者の使い方の場面を写像する新製品に必要な指標を作成する家電のログ活用による製品開発で競争力を強化

 高梨氏はまた、データキュレーターという、まだなじみのない仕事の役割について、「いままで少ないデータでやっている、経験値でやってきたところをデータを使うことで全然違うアプローチができる。データから語らせるものと、専門家の業務知識をぶつけることで新しいものがでてくる」と述べた。

 「いまのデータ活用に足りないのは、もっとデータに軸足を置いている人間なんではないか」、「業務知識ではなく、データに語らせる」(高梨氏)。

 商品化した「データコンサルティング」サービスについて、キュレーターは最短でも2カ月(8週間)で回すので、来年1年間で50~60くらいの案件を手掛けたいとした。

 また、「データコンサルティング」を利用する場合には、「こんなデータがあるんですけど、なにかできないですか」というアプローチはほとんどうまくいかないという。どちらかというと、新しいこういう商品を作りたいが、この商品を作るためにデータを活用したいというアプローチの方がうまくいくと述べた。

 今後は、モノづくりの端緒となるべきデータ活用モデルの検証を行い、検証した通りの製品・サービスの実現までをサポートする「プロフェッショナル」の提供も予定している。

キュレーター像製品・サービスの実現までをサポートする「プロフェッショナル」の提供を予定データを富士通の4本目の事業の柱に


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