弥生、7月にSaaS版「弥生オンライン」のクローズドβ、9月に正式リリース


 弥生株式会社は14日、事業説明会を開催した。弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一氏は、今後の事業スケジュールに関して、延期されていた弥生会計のSaaS版については、7月にクローズドβ開始、8月にオープンβ、9月に正式リリースする予定を明らかにした。

弥生オンラインは9月に正式リリース

弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一氏

 2008年4月の“弥生 as a SaaS宣言”から4年。2010年11月には1回目のクローズドβを実施したが、その結果、「現状のままではビジネスとしての早期立ち上げは難しい」との判断になり、製品コンセプトの見直しを行った。

 サービスインが延期された背景には、コンセプトの練り直しのほかにも、.NET Frameworkによる現行製品群とAzureで開発の人的リソースと資産であるコードの共有により高い相乗効果が見込めることでAzureでの開発を決めたが、サーバー側のAzureは2010年1月に正式版がリリースされ、またクライアント側はSilverlight使用と、どちらも新技術なのでエンジニアの確保が困難といった問題もあったという。

 クローズドβの際に、会計事務所のニーズは「弥生会計を使えない人でも使えるもの」だったという。こうした声を受け、現状は(1)会計ソフトを利用する人、(2)会計事務所へ丸投げする人の選択肢になるのに対して、「半自計化」というコンセプトを打ち出し、サービスの見直しを図った。

 見直し後の「弥生オンライン」では、事業者が入力した日報データを、会計事務所の「弥生会計AE」に取り込むことが可能になる。事業者は、業種別に用意された伝票入力画面に単純な入力を行うだけで済み、入力された情報は自動で仕訳データに変換される。事業者側は、仕訳や勘定科目といった会計知識を必要とせず利用でき、ほぼリアルタイムで売り上げやキャッシュフローを把握できる。

 会計事務所側はデータ入力の手間が省け、仕訳変換ではある程度の手直しは必要となるものの、可能な限り自動的に仕訳に変換するため、記帳代行業務などを行う必要がなくなり、より付加価値の高い経営アドバイスなどの業務に集中できるという。

 今後「弥生オンライン」サービス正式提供までのスケジュールは、7月2日にPAP会員(弥生のパートナー会計事務所)限定の招待制でクローズドβを開始。7月24日に発表会を行い、8月初旬にPAP会員限定でオープンβを実施。2度のβ実施を経て、9月初旬に正式リリースを行う。正式リリース後のサービスの申し込みはPAP経由となり、弥生へ問い合わせを行えば、PAP会員を紹介する形となる。

 弥生のPAP会員は5月末現在で会員数4469。順調に伸びているという。

「やよいのオンライン」開発環境弥生が直面したカベ


1回目のクローズドβの結果を受けてコンセプトを見直した事業者にも、会計事務所にもメリットのある仕組みがコンセプト


市場は回復期を過ぎ、成長基調へ

 岡本社長は2012年度上半期(10月~3月)について、引き続きマーケットシェアを伸ばすことができ、5月までのPOSデータで本数シェアは前年の48.4%から53.7%となり、初めて50%を超えたと述べた。また、金額シェアでも前年の67.9%から68.9%へとシェアを伸ばした。

 岡本社長はこの結果について、「2008年~2009年はリーマンショックの影響で市場が縮小したが、2010年春ごろから回復してきている。現在は回復ではなく、純粋な成長だと考えている」とコメント。

 また2012年度の通期見通しについては、ほぼ昨年10月に立てた計画通りの着地を見込んでおり、2010年度で回復、FY11年度で最高利益を上げたが、2012年度はさらに売り上げを伸ばし、過去最高の数字を更新できるだろうと見ているとした。

マーケットシェアが引き続き向上回復から成長へ


Windows 8の対応~難しいRT版への対応

 通常版Windows 8への対応については、「現行製品の弥生12シリーズでは当然動作検証を行い、次期製品の弥生13(仮称)シリーズでは対応するが、Windows RTについては、何ができるかを検討している状況」だとした。

 「Win32 APIはARMベースのWindows RTでは動作しないと見られ、MetroスタイルアプリはWinRT APIを利用して、新規開発する必要がある。この問題については、弥生1社の問題ではなく、多くのISVベンダーに共通の悩み。」(岡本社長)

 また、Metroスタイルアプリは、Windows RT を含むWindows 8では稼働するが、Windows 7以下では動かない。このため、弥生製品をそのままMetroスタイルアプリにするのは極めてハードルが高く、一部機能を切り出してMetroスタイルアプリ化する、あるいは、弥生製品と一緒に使ってうれしいようなMetroスタイルアプリの開発を検討しているという。

Windows 8対応の方針と検討課題


法令改正の影響

 岡本社長は、今後2~3年は、非常に影響の大きい法令改正が続く見込みだとして、2013年1月からの施行が決定済みの「復興特別所得税」、2014年1月からの「白色申告の記帳義務化」、現在国会審議中で2014年4月にも実施される可能性がある消費税率8%へのアップなどを上げた。

 岡本社長は、こうした法令改正が続いた場合、弥生社内のシミュレーションでは新規顧客や古いバージョンからの買い換え需要で、売り上げは5倍に増える可能性があると述べた。そうなると、短期間に5倍に増えた顧客のカスタマーセンターの対応が現状のままでは追いつかないため、いまから対応を検討する必要があるとした。

 顧客対応という点では、2013年4月にはSQL Server 2000、2014年4月にはWindows XPがそれぞれマイクロソフトのサポート終了となるため、既存顧客には早期の対応を促していきたいとした。


弥生の起業支援

 起業支援に力を入れる理由について岡本社長は、「日本の事業者数は、人口が減るよりはるか以前から減ってきている。2006年の総務省の統計によれば、起業が年間22万2288件であるのに対して廃業が27万3282件で起業よりも廃業が多い。起業は、日本経済が今後発展していくために必要であると同時に、起業される方は、弥生にとって即見込み客となる」と説明。

 これまでは地方自治体や起業支援NPOなどと協力してセミナーや講座を行ってきたが、今後はより面的に展開し、より多くの起業家を支援していくとした。

 具体的には、起業に興味のある潜在層にも興味をもってもらえるようゲーム感覚で起業家としての資質を診断できる特設サイト「皆藤愛子みんなの起業診断所」を5月7日にオープン。PVは1カ月余りで3万を超え、診断数も3000人ほどに上るという。

 また、起業支援プラットフォーム「ドリームゲート」と協業し、開業と事業継続の支援サイト「開業計画NAVI」を5月29日にオープンした。事業継続性を「安全率」という指標を用いて診断するコーナーや、事業計画作成サポートツール、事業計画事例集などを提供する。

 「弥生のスマートフォンアプリコンテスト」も起業支援のひとつとして実施。「弥生と一緒に使ってうれしいコンテンツ」をテーマに、iOSまたはAndroid対応アプリを募集した。受賞アプリについて、権利を弥生側に一部でも譲渡するといった規定はなく、「純粋な応援金」として実施しているという。

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