富士通研、場所に応じた最適なサービスをスマート端末に提供する基盤技術


 株式会社富士通研究所(以下、富士通研)は15日、スマートデバイスとクラウドを融合し、場所に応じて最適なサービス(アプリケーションや情報)を提供するロケーションアウェアサービス基盤技術を開発したと発表した。

 スマートデバイスで利用できるクラウドサービスが増える一方で、ユーザーが必要なサービスを選び、必要な情報にアクセスするための負担もまた増大している。こうした状況には、時々刻々と変化するユーザーの場所や状況に応じてタイムリーにサービスを切り替えていくようなロケーションアウェアサービスが効果的だが、実現するためには、測位機能や場所の判定機能、場所に応じたサービス配信機能などを個別に開発する必要があった。

 そこで今回、スマートデバイスからのセンシング情報に基づいて、ユーザーの場所を特定し、場所に応じてあらかじめ登録したサービスを端末に送り届けるロケーションアウェア基盤技術を開発した。

概要

 特徴は、端末からのセンシング情報をクラウドに集約し、あらかじめ定義した場所情報と比較して、場所への出入りを判定。この情報をもとに、あらかじめ定義したサービスを選び、端末へ能動的に配信・実行する。これにより、時々刻々と変化するユーザーの場所や状況に応じてタイムリーにサービスを切り替える統合システムを、端末や通信レイヤを意識することなく構築できるという。

 併せて、さまざまな測位エンジンをプラグインできるロケーション管理技術も開発。

 昨今、屋外でのGPS測位技術に加え、屋内での測位を実現する手法がいくつか開発されている。例えば、GPS信号を屋内に拡張する技術や、無線LANアクセスポイントを活用する技術、端末の加速度・ジャイロなどのセンサーを活用した技術だ。しかし、どんな場所でも安定的に測位する単一の技術はまだ確立されていない。

 そこで新しいロケーション管理技術では、状況に応じてこれらの測位エンジンを使い分けるとともに、測位した位置(座標)を、もう一段抽象化した場所(あらかじめ定義した部屋などの領域)への出入り情報に変換。位置が分かるさまざまなデバイスやセンサーの情報を組み合わせることが可能となり、また、測位技術とは独立して上位のサービスを開発することが可能になるという。

アーキテクチャ

 これらの技術の活用例としては、医療現場で、看護師が病室に入った際にその病室の患者情報や必要な処置などをスマートデバイスに提示することが可能。また、自社オフィスでは業務アプリケーションだけの利用、移動中には業務デーや顧客情報は削除、顧客先では顧客データにアクセスできるといった制御が実現するとしている。

 今後は、位置情報を活用した新しいクラウドサービス「SPATIOWL」への実装を進め、2013年以降、順次実用化する予定。

関連情報
(川島 弘之)
2012/5/17 06:00