日本オラクル、プライベートクラウドに向いた統合ストレージ「Pillar Axiom 600」
日本オラクル株式会社は31日、ストレージ製品「Pillar Axiom 600」の国内提供を開始すると発表した。もともとは、米Oracleが買収した米Pillar Data Systemsの製品で、アプリケーションの優先度に応じて優先制御(QoS)を提供できる点が特徴。同社では、プライベートクラウド基盤などへの適用を見込み、販売を進めるという。
「Pillar Axiom 600」は、FC SAN、iSCSI SAN、NAS(NFS/CIFS)として利用可能な統合ストレージ。サーバーとの接続インターフェイスを備え、コントローラに相当する「Slammer」、ディスクを格納する筐体(エンクロージャ)の「Brick」、管理サーバーである「Pilot」の3つのコンポーネントから構成され、「Slammer」は最大4台、「Brick」は最大64台までのスケールアウトに対応する。また「Brick」には、SATA GDD、FC HDD、SSDの各ディスクを搭載する3種類がラインアップされており、ユーザーはこれらを組み合わせてストレージシステムを構成することになる。
Pillar Axiom 600 | Pillar Axiom 600の構成要素 |
システムズ事業統括 ビジネス推進本部 担当ディレクターの阿部恵史氏 |
最大の特徴は、QoS(優先制御)機能により、リソースの割り当てとパフォーマンスを動的に変化させられる点。ビジネスの価値などに応じてあらかじめ決められたポリシーにより、CPUの稼働率、容量やキャッシュの分配をストレージ側が自動で行って、優先度の高いアプリケーションが必要とするSLAをきちんと担保するのだという。
こうしたリソースの配分ポリシーについては何種類かのテンプレートが用意されており、「例えばデータベースなら、インデックスにはSSDを、テンポラリにはSATA HDDを割り当てる、シーケンシャルのリードが多い傾向ならキャッシュを大きく割り当てるなど、特性に合ったリソースの配分が可能」(システムズ事業統括 ビジネス推進本部 担当ディレクターの阿部恵史氏)。もちろん、特性にあった調整をユーザー側が行うこともできる。
このような「Pillar Axiom 600」の仕組みは、従来のストレージのような、先に来たI/Oから順番に処理していくというアプローチとはまったく異なるもので、QoS機能がSLAを担保することから、多数の異なるアプリケーションが統合されたとしても、ビジネス上の優先度の高いアプリケーションは、性能を劣化させずに動作しつづけられることになる。こうした点を受けて阿部氏は、「QoSやモジュラー構造による拡張性などの価値を生かせる、プライベートクラウド基盤としての利用に向く」と製品をアピールした。
提供されるQoSを、阿部氏は飛行機の座席クラスを例にとって説明した | QoSの動作の仕組み |
ただし、システムが性能を担保してくれるといっても、負荷の高いシステム同士を同居させたくない、異なる部門は独立させてセキュリティを確保したい、といったニーズはあるだろう。そこで「Pillar Axiom 600」では、「Brick」単位で物理的なドメインを構成し、ドメインごとに独立して利用できるようにしており、こうした点もプライベートクラウドでの統合基盤に向くとのことだ。
またデータの安全性については、分散型RAID機能によって確保されている。「Pillar Axiom 600」では一般的なストレージと異なり、RAIDコントローラの機能はストレージコントローラ部の「Slammer」ではなく、エンクロージャ部である「Brick」側に搭載されているので、例えば「1つの「Brick」内だけでRAIDグループが構成されているのであれば、リビルド時の負荷はほかの「Brick」に波及しない」(阿部氏)とした。なお、RAIDレベルは10/50に対応する。
最大で64個の物理的なドメインを構成できる | 分散型RAIDの利点 |
このほか、日本オラクルのラインアップに加わったことにより、同社のソフトウェア/ハードウェア製品との連携が図られているのも強み。データベースマシン「Oracle Exadata」が持つ圧縮機能のサポート、Oracle VMとの連携など、さまざまな製品との間で連携を進めるとした。
価格は最小構成で675万9606円から。日本オラクルでは、プライベートクラウド基盤としての導入を働きかけるほか、「当社製品との最適化の強みを生かして、オラクル製品を利用している、他社ストレージのアイランド環境を統合する用途でも訴求していく」(阿部氏)とのことだ。
他の自社製品との連携機能 | 注力ソリューションと市場 |