日本マイクロソフト、品川オフィスの電力消費可視化ソリューションを一般公開


2月に本社オフィスを品川に移転

 日本マイクロソフト株式会社は28日、同社の品川本社オフィスで行ってきた省電力化の取り組みを紹介し、構築した電力消費可視化ソリューションで用いられているソースコードと技術情報を12月上旬に一般にも無料で公開することを明らかにした。

 日本マイクロソフトでは、2012年2月にオフィスを品川グランドセントラルタワーに移転したことに合わせて、2012年までにエネルギー消費量30%削減(2007年度比)を目指した環境への配慮の取り組みを実施。電灯や空調の消費エネルギー削減、ID管理による複合機の無駄の削減、仮想環境の推進などを行ってきたが、3月の東日本大震災発生以降はさらに取り組みを強化したという。

 例えば、電灯はLEDを活用するとともに、オフィスフロア内の会議室にはモーションセンサーによる自動消灯を導入。机上面照度をビル標準の900~1000ルクスから350ルクスに設定したが、震災後はさらに25%削減し250±50ルクスに設定。明るさが必要な場合には補助電灯を使えるようにすることで、作業に支障が出ないようにしている。

 また、新オフィスでは従業員2500人の約6割にフリーアドレスを採用し、どの席でも自分あての電話が受けられるソフトIPフォンを導入している。これにより、夏の最も消費電力の大きい時期に、エリアやフロア単位でオフィスをクローズすることができ、消費電力を大幅に下げられたという。

 フリーアドレスの導入に合わせて、PCからのプリントアウトもオフィス内のどの複合機からでも行えるシステムを導入。PCからはプリントサーバーを出力先として印刷し、各複合機ではICカードリーダーによる認証を行うことでプリントアウトができる仕組みで、出力資料の撮り忘れなど、紙の無駄の削減にもつながっているという。

 これらの新オフィスの移転に合わせた取り組みに加え、震災後にはWindows PC自動節電プログラムを全PCに適用するなどの取り組みを行った結果、品川オフィスでは昨年度対比で23.1%消費電力を削減。大手町・調布・大阪などほかのオフィスでも20%以上の削減を達成した。

品川オフィスで行っている環境への配慮の取り組みLED活用とセンサーによる自動消灯を導入
フリーアドレス導入に合わせ、IDカード認証によるプリント環境を導入複合機の消費電力量や紙の削減にもつながった
震災前の段階で消費電力を従来比34%削減震災後にはさらに追加の節電策を実施

 さらに、電力消費量を可視化する取り組みとして、品川オフィスには移転時から各フロアの分電盤に計測モニターを設置。各計測モニターからのデータをネットワーク経由で収集してSQL Serverに集約し、Windows Azure上にデータを公開するサービスを構築した。

 サービスはSilverlightで構築されており、ウェブブラウザーから消費電力の変化を確認できる。消費電力は各フロアや部署単位でも見ることができるため、どの場所で電力を使っているかといったことが確認でき、さらなる省電力化対策がとりやすくなり、社員の意識も変化するというメリットがあったという。

 また、センサーから収集できるデータは、さまざまなメーカーやモデルによって単位や通信方式、データフォーマット、データ収集タイミングなどに違いがある。このため、センサーごとに「コネクター」と呼ぶモジュールを作成することで、それぞれの違いを吸収する仕組みになっている。また、データはRSETにより取得できるようになっているため、Silverlight以外の技術でユーザーインターフェイスを作ることや、ほかのシステムとの統合も容易に行える。

 マイクロソフトでは、この電力消費可視化ソリューションで用いているすべてのコードと技術情報を、12月上旬から一般にも無料で公開する。SQL AzureまたはSQL Serverにデータをストアすることが条件となるが、それ以外は企業などで自由に利用できる。マイクロソフトでは今後、この技術を活用するためのハンズオンセミナーなどを実施するとともに、パートナー企業との連携によるソリューション化、マイクロソフトのほかの海外法人への紹介なども行っていく。

 日本マイクロソフト業務執行役員最高技術責任者の加治佐俊一氏は、5月に公開した「Windows PC節電プログラム」は19万ダウンロード、110万を超えるページビューがあり、「プログラムを実際に適用した人だけでなく、コントロールパネルから簡単に省電力の設定ができるというアナウンスもできた」と説明。「震災後の電力不足に対し、夏は節電の努力でしのいできたが、冬の節電も知恵を絞りながら工夫が必要。今後も原発の問題などもあり、節電の取り組みは継続していかなければいけない」として、あらためて節電の必要性を訴えた。

マイクロソフトのオフィスに導入した電力消費可視化ソリューション日本マイクロソフト業務執行役員最高技術責任者の加治佐俊一氏
各フロアの分電盤に計測モニターを設置ネットワーク経由で消費電力のデータを集約
各機器の違いをコネクターで吸収ソリューションを一般にも無料で公開する
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