日本HP、迅速なITシステム構築を支援するアプライアンス製品群「HP Converged System」

第1弾としてBIソリューション2製品を発売


 日本ヒューレット・パッカード株式会社(以下、日本HP)は12日、次世代ITインフラストラクチャの実現に向けた戦略「HP Converged Infrastructure」の中核となる製品群「HP Converged System」を発表。その第1弾として、BI環境を迅速に構築できるアプライアンス製品「HP Vertica Analytics System」、「HP Business Data Warehouse Appliance」の2製品を発売する。

 同社では、ITによって企業や政府機関における瞬時の対応を支援する戦略「Instant-On Enterprise」を推進しており、その主要ソリューションとして「HP Converged Infrastructure」を展開している。そして、「HP Converged Infrastructure」を体現する製品群として、「HP Converged System」、「HP Converged Storage」、「HP Converged Data Center」という3系統のラインアップを提供していく計画を打ち出している。今回、このうち「HP Converged Systems」を日本においても提供開始するという。


執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏IT・クラウド基盤製品の事業ビジョン

 「HP Converged Systems」は、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを統合し、インフラから最上位のアプリケーション層までを包含して、顧客が必要とするシステムリソースを最適かつ迅速に配備することを支援するシステムアプライアンス製品群。執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂氏は、「『Instant-On Enterprise』を実現するためには、イノベーション、アジリティの確保(時間短縮)、プロセスの最適化、リスク管理という4つの要素が重要になる。この中で、アジリティにフォーカスしたアプライアンス製品群が『HP Converged Systems』だ。アジリティとは、市場環境などの変化をいち早く察知し、迅速にシステムを構築、変更する能力のことであり、『HP Converged Systems』では、システムの立ち上げを従来の3か月から3時間に大幅短縮できるほか、データ分析処理速度を従来の800倍に高速化することができる」としている。

 また、杉原氏は、「『HP Converged Systems』は、HP Converged Infrastructureのコンセプトをアプリケーションのレベルまで拡大させ、サーバー、ストレージ、ネットワークを統合し、よりシンプルなIT環境の実現を目指すものだ。これによって、日本におけるIT・クラウドで、最も早く、品質のよいIT環境を提供し、震災後の復興・経済・医療・原発問題など、先の見えない社会情勢・環境の中で、日本復興の足がかりを支援していく」との考えを示した。


エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 統括本部長の上原宏氏「HP Converged Systems」で提供される3種のアプライアンス製品群

 「HP Converged Systems」のアプライアンス製品群は、ユーザーのニーズに応じて「HP VirtualSystem」、「HP CloudSystem」、「HP AppSystem」の3種の形態を用意する。エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 サーバーマーケティング統括本部 統括本部長の上原宏氏は、「従来の“密結合”のアプライアンス製品は、組み合わせ検証やテスト工数が不要で、電源を入れればすぐに利用できるというメリットがある一方で、指定のプロダクト以外は利用できない、既存環境と連携できないなどのデメリットも多い。これに対して、当社では、2009年11月に“疎結合”のクラウドアプライアンス製品として『HP BladeSystem Matrix』をリリースし、多くのユーザーから賛同を得ることができた。そこで今回、このラインアップを拡充し、新たに3種のアプライアンス製品群を展開する」と説明している。

 「HP VirtualSystem」は、シンプルな仮想化環境によって構成されるリソースプールを必要とするユーザーのためのシステム。ブレードサーバー、ストレージ製品、ネットワーク環境などの基本的なコンポーネントと、仮想化ソフトウェアが最適な形で組み合わされている。

 「HP CloudSystem」は、用途に合わせた多様なシステム・プラットフォームを自在に配備可能なクラウド環境の構築を志向するユーザーのためのシステム。「HP VirtualSystem」で提供されるコンポーネントに、HPのクラウド環境向けソフトウェアソリューション(「Matrix Operating Environment」および「HP Cloud Service Automation」)を組み合わせることで、プライベート・クラウドだけでなく、パブリック・クラウドを含めたハイブリッド・クラウド環境を一元的に管理することが可能となる。なお、今回の発表にともない「HP BladeSystem Matrix」の名称を「HP CloudSystem Matrix」に変更し、「HP Converged Systems」のラインアップの一つとして提供する。

 「HP AppSystem」は、特定の用途をもったアプリケーションを、最適な性能とアーキテクチャで、必要なときにすぐ利用できる環境を求めるユーザーのためのシステム。アプリケーション環境までを含めて一つのインフラとして扱い、アプリケーションの最適な運用のために必要なコンポーネントを包含している。今回、「HP Converged System」の第1弾として発売されるアプライアンス製品「HP Vertica Analytics System」と「HP Business Data Warehouse Appliance」は、この「HP AppSystem」のラインアップに含まれるという。


サーバーマーケティング統括本部 ビジネスクリティカルシステム製品本部 製品企画部の寺崎孝氏「HP Vertica Analytics System」の概要「HP Business Data Warehouse Appliance」の概要

 「HP Vertica Analytics System」は、膨大な量のデータを、リアルタイムに分析する必要があるユーザーのための、データウェアハウス用途のアプライアンス製品。今年3月に買収を完了したVertica Systems社の技術を活用したもので、検索速度に強みをもち、膨大なデータを扱うことのできるスケールアウト型やカラム型のデータベースエンジンと、その性能を最高に引き出すためにチューニングされたハードウェア環境で構成される。

 「HPの計測結果では、ロウ型のデータベースエンジンを使用している一般的なRDBMSでは37分6秒かかる検索を、同製品では2.78秒と、約800分の1のスピードで処理することができる。また、並列処理のアーキテクチャのためノード数が増えてもリニアな性能向上が期待でき、データ容量の増大にともなう性能の劣化はほとんどない」(サーバーマーケティング統括本部 ビジネスクリティカルシステム製品本部 製品企画部の寺崎孝氏)という。

 クオーターラック(容量10TBまで)、ハーフラック(20TBまで)、フルラック(50TBまで)の3つのモデルから選択でき、スケールアウトアーキテクチャのため、容量の追加が必要な場合にも柔軟な拡張が可能。各モデルとも、必要なサーバー、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアを組み込み、設置サービスおよび保守サービス(1年間)まで含めて提供する。価格は1億1606万4900円から。7月12日より発売開始する。

 「HP Business Data Warehouse Appliance」は、5TB規模までのデータウェアハウスを必要とするユーザー向けのアプライアンス製品。Microsoft SQL Server 2008 R2および同製品に最適化されたハードウェアプラットフォームをセットアップ済みの状態で提供する。また、HPとマイクロソフトとの密接なパートナーシップに基づき、最高の性能が出るようにあらかじめ全コンポーネントの構成が行われ、十分な検証のもとにチューニングされているという。これにより、ユーザーはインストール作業無しで導入後すぐ利用開始できるほか、運用開始後も、ソフトウェアとハードウェアの窓口が一本化されたサポートを受けることができる。

 さらに、中堅規模ビジネスにフォーカスを当てて最適化された構成と価格体系により、安く、速く、安心なデータウェアハウス環境を、迅速に構築することが可能となる。価格は665万7000円から。7月14日より発売開始する。

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