NEC、2010年度連結決算は前年比13.1%減収に~震災による影響大きく


 日本電気株式会社(NEC)は10日、2010年度(2011年3月期)の連結決算を発表。連結売上高は、前年比13.1%減の3兆1154億円、営業損益は同13.6%増の578億円、経常損益は同99.9%減の0.4億円、当期純損益は前年から239億円悪化し、125億円の赤字となった。

 2月25日に発表した業績予想に比べ、売上高はマイナス846億円、営業利益はマイナス100億円、当期純損益はマイナス125億円割り込む結果となった。

 遠藤信博代表執行役社長はこの業績について、「NECエレクトロニクスが連結子会社ではなくなったこと、国内IT投資復調が予想よりも遅れたことに加え、2月25日の予想を下回ったのは震災による影響が大きかった」と説明している。

 NECでは東日本大震災で、NECネットワークプロダクツ(旧社名:NECワイヤレスネットワークス)の本社工場、一関工場、NECインフロンティア東北、NECトーキンの4工場が被災している。NECネットワークプロダクツについては3月14日に、その他の工場は3月23日に生産を再開し、現在ではほぼ100%近くリカバリーしているという。


代表取締役執行役員社長の遠藤信博氏2010年度連結決算 概況サマリー
2010年度連結決算 売上高増減2010年度連結決算 営業損益増減
2010年度連結決算 セグメント別実績

 セグメント別では、ITサービスはアウトソーシング/サポートサービスはクラウド思考のサービス展開、SaaSメニューの拡充などにより堅調に推移したものの、SIサービスは国内IT投資の回復遅れ、大型案件の減少により売上高は前年比7.2%減の8042億円。営業利益は売り上げ減、グローバル関連事業拡大に向けた投資増や不採算案件により318億円減の214億円にとどまった。

 プラットフォーム事業は、仮想化によるシステム統合、企業・官公庁およびデータセンター向け運用管理などソフトウェア事業が好調。ハードウェア事業は、サーバー製品は伸長したもののシステム更改の端境期であったことから減収、企業向けネットワークも前年並みだったが前年比0.6%増の3758億円。営業損益は原価低減と開発非効率化により106億円増の89億円となり、黒字化を達成した。

 キャリアネットワーク事業は、国内はCATV事業の補正予算案件対応、LTE、フェムトセルなどのワイヤレスブロードバンドアクセスの売り上げ拡大により増収となったが、海外事業は海洋システムの大型プロジェクトが一部翌期に延期となり、パソリンクが為替の影響に加え、事業環境の回復遅れなどにより減収となり前年比3.5%減の6054億円。営業利益は下期に増収増益に転じたことで通期でも94億円増の407億円と増益となった。

 社会インフラ事業は、航空宇宙・防衛システム分野が減少したものの、交通・消防など社会システム分野が増加したことにより、売上高は前年並み(前年比0.7%増)の3188億円。営業利益は71億円減の146億円となった。

 パーソナルソリューション分野は、モバイルターミナルは既存の携帯電話機が販売不振であったものの、事業統合効果により増収となり、パソコンその他は、パソコンの出荷台数がマイナス2万台の271万台とほぼ前年並みだったもの、パブリックディスプレイ、デジタルシネマプロジェクタなどの海外事業により増収となり、3.9%増の7665億円。営業損益は、スマートフォンなど新端末の開発費用増と既存携帯電話機の販売不振により、マイナス208億円のマイナス19億円の赤字となった。

 その他は、売上高はNECエレクトロニクスが連結子会社でなくなったことで、63.0%減の2447億円となったものの、営業損益は同じ理由で逆に改善し、522億円増の73億円となった。

 この業績について遠藤社長は、「2010年度はPC事業のレノボ・グループとの戦略的提携など海外に打って出ることができるプラス面はあったものの、スマートフォンの対応遅れなどスピード感が足りなかったと私自身が感じている。中期経営計画V2012の注力領域であるC&Cクラウド戦略の推進、グローバル事業の拡大、新事業の創出をよりスピードをあげて実行する必要がある」と分析している。

2010年度連結決算 当期純損益増減2010年度連結決算 成果と課題

 

2011年度は売上高3兆3000億円、営業利益900億円を目指す

2011年度事業運営方針
2011年度連結業績予想

 2011年度の事業方針としても、「V2012の施策拡大に向けてクラウド、グローバル化、新規事業の創出を、スピードをあげて進める。また、品質改善と費用効率化をさらに進めて利益の最大化を進める」(遠藤社長)ことをあげている。

 具体的な業績予想としては、売上高は対前年同期比5.9%増の3兆3000億円、営業利益は322億円増の900億円、経常利益は550億円増の550億円、当期純利益は275億円増の150億円としている。

 セグメント別では、ITサービス事業は、売上高は0.7%増とほぼ横ばいの8100億円、営業利益は116億円増の330億円。クラウドサービスの展開、災害対策ソリューションの提案強化、グローバル市場の開拓と共に、不採算案件の抑制、ソフトウェアファクトリの活用などSI革新の推進とサービスデリバリの効率化によって収益性改善を進める。


2011年度 セグメント別 通期業績予想2011年度 ITサービス事業予想

 キャリアネットワーク事業は、売上高は25.5%増の7600億円、営業利益は163億円増の570億円。データトラフィック増加が進んでいることからこれをビジネスチャンスととらえ、海底ケーブルの増強を進め、国内では10年度にリリースした製品の拡販と受注済みプロジェクトを着実に遂行し、中南米でキャリアクラウド事業を展開するなど海外も含めた新規事業の創出と早期立ち上げを進める。

 パーソナルソリューション事業は、パソコンがレノボとの協業により非連結事業となるため、ビジネス市場向けの130万台を出荷目標台数とし、スマートフォンの売り上げ拡大により売上高は0.2%増の7650億円、営業利益は169億円増の150億円。スマートフォンの事業拡大、タブレット型端末事業の本格立ち上げなどを計画している。

2011年度 キャリアネットワーク事業予想2011年度 パーソナルソリューション事業予想
中期経営計画 V2012に向けた2011年度の事業環境

 中期経営計画であるV2012に向けた施策として、2011年度の事業環境として(1)スマートフォンの急増、(2)あらゆる情報が電子化され、クラウドで処理するデータ量が爆発的に増大、(3)クラウドコンピューティングの人・モノの接点となるクラウド端末群で、「いつでもどこでも」、「リアルタイム」なクラウドサービスが実現の3点をあげる。

 「これまでデータになっていなかったデータが、センサーによってデータ化されるeデータが爆発的に増加していく。このデータがクラウドによって処理され、これまでのSaaSのようなクラウドサービスとは全く異なるスマートシティのようなクラウドサービスが今後増加していくことになるだろう。NECは無線などネットワークサービスの技術、さらにITシステム開発などで他社にはない強みを持っている」(遠藤社長)

 さらにRFIDを利用したモバイルクラウドサービスや、クラウドを経由することでスマートフォンやPCなどさまざまな端末から同じデータにアクセスできるC&Cクラウド・ワークスタイルの実現を目指す。


クラウド化のさらなる発展NECが提供するクラウド

 端末としては、AndroidベースLifeTouch NOTEのクラムシェル型の2画面タイプなど新端末を提供し、注力分野を(1)電子書籍・新聞、(2)教育、(3)電力・住宅、(4)流通・小売り、(5)生活支援の5分野として、ニーズに応える商品群を実現する。

 昨年度初めての製品を投入したスマートフォンについては、NEC独自の薄型・軽量化技術、カシオ日立モバイルコミュニケーションズとの統合による技術を活用し、グローバル展開をはかる。「国内では数機種のスマートフォン新製品を投入するほか、ベライゾン・ワイヤレス向け端末を提供する」(遠藤社長)


新端末および垂直統合ビジネスの展開強みを活かしたスマートフォン展開
グローバル5極体制での取り組みの加速

 グローバルビジネスについては、4月1日にブラジルに中南米事業の統括会社を設立したことで、5極体制が整ったことから、アジアと中南米を中心にグローバルビジネスを強化する。

 クラウド事業は、2010年度実績はネットワーク事業を中心に4500億円程度だが、V2012で掲げている売上高1兆円規模を目指し、2011年度は6500億円を目標とする。

 遠藤社長は、「2011年度の成果が、V2012・グループビジョン2017の方向性に大きな影響を及ぼす。スピード感ある展開を行い、今回の業績予想をボトムとして必達を目指し、営業利益900億円、当期純利益150億円を実現する」と経営スピードの向上と売り上げ予測実現する姿勢を強調した。

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