アイシロン、一般企業向け機能を強化したスケールアウトNAS製品群

日本法人は7月にEMCジャパンへ統合


EMCジャパン 代表取締役社長の山野修氏

 EMCジャパン株式会社とアイシロン・システムズ株式会社(以下、アイシロン)は20日、スケールアウトNAS「EMC Isilon」の新ハードウェア、ソフトウェアを販売開始したと発表した。また同時に、EMCジャパンがアイシロンを7月1日付けで事業統合することも発表されている。

 記者会見の冒頭で登壇したEMCジャパン 代表取締役社長の山野修氏は、EMCジャパンがアイシロン製品に力を入れる理由として、「今後、データが膨大に増えることが予想されているが、中でも非構造化データがその中心と見られている。そして、データが増えるに従ってパフォーマンスが維持できるか、拡張性が維持できるかを心配する声が増えた。今は良くても将来は大丈夫なのかという心配だが、スケールアウトNASはこれに対応できる」という点を指摘する。

 一般的なスケールアップのNASと異なり、スケールアウト型NASであるアイシロンのストレージでは、NASクラスタごとに単一ボリューム、シングルファイルシステムでの管理を行えるので、クラスタ内の台数が増えたとしても、導入時と変わらない簡素さでストレージの管理を継続可能。さらに、ストレージを追加すれば、容量と性能を直線的かつ同時に拡張していけるほか、信頼性も高く、一番高い保護レベルでは、最大4ノードが同時に壊れても修復できる、N+4の保護性を提供可能だ。

 山野社長はこうした点を踏まえ、「海外では普及率が高まっているが、国内でもスケールアウト型が増え、NASの本流になっていくのではないかと考えている。米国での統合は2010年12月に完了しているが、日本でも7月にアイシロンを統合。それ以降はアイシロン事業本部を設け、アイシロン製品のプロモーションをかけていく計画だ」と、今後の展開を説明した。

 またアイシロンの代表取締役、江尾浩昌氏は、メディア&エンターテイメント、インターネット/クラウド、ライフサイエンスといった従来の得意分野に加えて、「“その他”分野、つまり一般の企業での販売も伸びている。これは、企業内にも大容量の非構造化データが増えているため。こうした領域でも当社の強みを生かしたい」として、一般企業への食い込みを図っていく意向も示していた。


アイシロン 代表取締役の江尾浩昌氏EMCジャパンにおけるアイシロン製品の位置付け
アイシロンの業種別売り上げ。一般企業が含まれる“その他”が急増している企業内でのアイシロン活用のメリット

 

次世代ハードウェアを発表、一般企業向けソフトウェア機能も強化

発売される新ハードウェア2製品
アイシロン マーケティング部長の武堂貴宏氏

 今回発表された新製品は、ストレージハードウェアの「Isilon S200」「同 X200」、これらが搭載するストレージOSの新版「OneFS 6.5」、レプリケーションソフトの新版「SyncIQ 3.0」、キャパシティプランニング支援ツール「InsightIQ 1.5」の各製品。

 アイシロンでは、スケールアウトNASの基本となるIsilon Xシリーズ、高トランザクション処理やランダムI/O性能に最適化したIsilon Sシリーズなど複数の製品ラインを持っているが、Isilon X200がXシリーズの、Isilon S200がSシリーズの最新製品となる。

 これらのハードウェアについて、アイシロン マーケティング部長の武堂貴宏氏は、「単純にハードウェア性能を強化した、というモデルではなく、大きな変化がある次世代の製品だ」と、これらの持つ意義を強調した。

 Isilon X200は、最大で33GB/秒のトータルスループット、30万IOPSを実現するプラットフォームで、ノードあたり、3.5型SATA HDDあるいはSSDを12台まで、6~36TBの容量を内蔵できる。もう1つのIsilon S200は、最大で80GB/秒のトータルスループット、140万IOPSの高い性能を実現できるモデル。大量のトランザクションを処理するIOPS重視のアプリケーションなどでの利用に向き、ノードあたり2.5型SAS HDDあるいはSSDを24台まで、7.2~14.4TBの容量を内蔵できる。特にIsilon S200では、2.5型のディスクをアイシロンのストレージとして初めて採用し、従来よりも高密度化が可能になった。

 また両製品とも、従来モデルと比べて最大メモリ搭載量が大きく拡張されており、Isilon X200で最大48GB、Isilon S200では最大96GBの搭載が可能になったほか、搭載できるディスクの種類・容量も選択できるようになっている。

 こうした点について武堂部長は「ディスクアクセスがパフォーマンスのボトルネックになることが多いので、キャッシュとして利用できるメモリ量が多ければ多いほど効果的。また従来は、ノードごとに容量を決めて販売していたが、新製品では購入時に選択可能になった。通常の企業での利用が広がっている中ではさまざまな要件があるが、1つのプラットフォームで柔軟に応えていける点が大きい」と述べ、強化の理由を説明した。

 価格は、Isilon X200の場合で446万円(税別)から。なお、最小3ノード、最大144ノードで1つのクラスタを構成する点は従来と同じである。

 一方OneFS 6.5では、アイシロンの江尾代表取締役が指摘した、一般企業での利用拡大に対応するための強化が主に行われている。「例えば、WindowsとLinux、Macなどが混在する一般企業では、(Windowsが利用する)SIDとUIDが混在し、その変換がやっかいだったが、OneFS 6.5では自動マッピングに対応し、管理者の負担を軽減できる。また、従来Samba経由でサポートしていたCIFSにネイティブ対応したことで、パフォーマンスが向上する。こうしたWindowsを視野に入れているのは、企業での利用拡大を狙ってのことだ」と、武堂氏は話す。

 また、従来はメタデータ管理で利用していたSSDを階層化で利用できるようにしたことにより、「うまくSSDを使えば、tier 0でのデータ管理が可能になる」点も大きな強化だという。

 さらにSyncIQ 3.0では、スナップショットとの連携により、レプリケーション時間の短縮が図られている。「1つのボリューム内に何億ファイルも保存されているようなお客さまでは、レプリケーション時にデータ差分を見つけ出すのに長い時間がかかっていたが、スナップショットとの連携で、どこが変更されたかすぐわかるようになった。これによってディザスタリカバリの高速化が実現する」(武堂氏)。

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