「スケールアウトNASの考え方はまさにクラウド的、仮想化対応も強化」~アイシロン


ティム・グッドウィン代表取締役

 アイシロン・システムズ株式会社(以下、アイシロン)は7日、記者向けの説明会を開催。同社 ティム・グッドウィン代表取締役、武堂貴宏マーケティング部長が登壇し、ワールドワイドや国内でのビジネス状況などを説明した。

 まずグッドウィン氏が説明したのは、ワールドワイドでのIsilonの好調さだ。「1年前のIsilonは利益を出せず、行方がどうなるのかという心配されることも多かった」というが、2009年第4四半期に黒字化を果たして以降、「売り上げ、利益、キャッシュフローが急増」しているとのこと。ワールドワイドでのユーザー企業数も2010年に250社以上増え、1500社を超える数に達するなど、順調に採用が進んでいるという。

 この好調さの理由としてグッドウィン社長が挙げたのは、「急増する非構造化データへの対応を企業が迫られていること」。データ、特に非構造化データが爆発的に増大している現在では、簡単に拡張でき、管理の手間がかからないストレージが欲しいというニーズが強くなっており、それがこの好業績につながっている、というのだ。

 アイシロンではもともと、大容量データを扱う放送業などのメディア&エンターテインメント市場で強く、日本ではこの面でのニーズが依然として強いが、米国ではスケールアウトNASへのニーズが他市場でも高くなっているとのこと。グッドウィン社長は、「大量のデータを扱う遺伝解析などのライフサイエンス系、製造業のプロセス解析などでのニーズが強く出てきた」と、新しい市場にも訴求できてきたという点を強調した。


第3四半期の収支報告(ワールドワイド)業界別の売り上げ

 

スケールアウトNASのメリットを仮想環境に生かす

武堂貴宏マーケティング部長

 アイシロンの基本システムは、以前から変化がなく、創業以来一貫したメッセージを発信し続けている。それは、グッドウィン社長も述べたように、容易に拡張でき、管理にも手間がかからない、という点である。

 ヘッド部分とディスク部分が分かれている従来型のNASでは、「ディスク部分はスケールアウトできても、ヘッド部分はそうはいかず、処理能力が足りなくなったら置き換えなくてはいけない」(武堂氏)制約がある。

 あるいは、「置き換えが嫌だということであれば、横並びにシステムを増やすことになるので、管理ポイント、マウントポイントが増えていく」といった状況になり、複数のシステムが併存するため、管理の負荷がそれだけ増えてしまう。容量についても、分散したシステムに偏りが生じやすくなり、無駄が発生しやすくなると、武堂氏は説明する。

 しかしアイシロンでは、「すべてのノード(筐体)に、ヘッドに相当する部分があり、コントローラやネットワークインターフェイスが内蔵されているため、ディスク容量だけでなく、処理性能も一緒にスケールアウトしていける」(武堂氏)特徴を持つ。スループットと容量が同時に拡張されるので、従来型のNASと異なり、性能をリニアに伸ばしていけるわけだ。

各ノードにコントローラやインターフェイスなどのヘッド機能、ストレージ機能の双方が内蔵されているため、性能と容量をリニアに拡張できるのがクラスタストレージの特徴(例外として、容量だけを増やしたい顧客向けの「拡張ノード」、性能だけを増やしたい顧客向けの「Accelerator」も提供されている)
可用性を確保するため、最大4つまでのパリティを設定できる

 また現在では、1クラスタあたり最大144ノード、10PBの容量にまで拡張できるが、外からは1つの大きなディスクに見えるようになっているので、ボリュームをどう切ろうとか、面倒な作業に頭を悩まされることはない。可用性の面でも、4つのノードが同時に失われてもデータを復元できる「N+4」までの保護を設定でき、データ保護を徹底することもできる。

 このような特長を生かして販売を伸ばすアイシロンだが、さらなる次のステップとして、仮想化への対応を進めている。それが、9月に発表したiSCSIのサポートだ。

 「従来のSAN/NASでは、マウントポイントを固定する必要があって、1つのマウントポイントに対してできることは限られていた」(武堂氏)のに対し、アイシロンのスケールアウトNASは、仮想化技術を用いて1つの大きなボリュームとして構成されており、もともと、仮想サーバー技術との相性は優れていた。

 そのアイシロンのスケールアウトNASが、今回、さらにiSCSIをサポートし、ブロックアクセスへ対応可能になったことで、適用できる領域が増えたことに意義があるのだという。武堂氏は、「当社では従来、非構造化データにフォーカスしてきたが、データベース、アプリケーションの多くはSAN環境で利用されている。仮想化環境はその中間で、一番多いのはFC SANと聞いているが、iSCSIでの利用も増えているそうだ。iSCSIへの対応によって、スケールアウトのメリットを使っていただけるお客さまが増えたのではないか」と述べ、iSCSI対応の理由を説明した。

iSCSIのサポートによって、従来のカバー範囲【左】と比べ、より広い範囲【右】へ対応可能になった

 なおグッドウィン氏は、「クラウドでは、とても高いパフォーマンスを持ち、無停止で簡単に増やしていけるストレージが必要とされている。当社のスケールアウトNASの考え方はまさにクラウド的だ」と述べ、仮想化環境が多く利用されているクラウド・コンピューティングのインフラについても、スケールアウトNASのメリットを訴求していく考えを示している。

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