富士通、クラウド環境のトラブル予兆検知ソフト「Proactnes II SM」


富士通のクラウドサービス体系

 富士通株式会社は20日、クラウド環境やネットワークのトラブル予兆を検知するソフト「Proactnes II SM V01」を発売した。

 同製品は、クラウドサービスとその利用者をつなぐネットワークに対し、通信レスポンスやデータ量(パケット)を監視・分析するソフト。物理・仮想サーバーのリソース監視も可能で、クラウド環境における障害発生個所の特定やトラブル予兆の検知を総合的に実現する。

 具体的には、データセンターの出入り口(責任分解点)近でサービス供給状況を監視・分析し、データセンター内とデータセンター外のどちらのネットワークに障害発生個所があるかをリアルタイムに判断。障害の原因追及が難しい通信トラブルを迅速に切り分け、早期復旧を可能にする。

リアルタイムに障害切り分け。データセンターの出入り口(責任分解点)の内外どちらに障害発生個所が存在するか判断できるのが特長

 また、データセンター内のネットワークを流れるデータ量と、仮想サーバー・マシンに割り当てられたCPU使用率の相関をとらえることも可能。これにより、異常な動作をしている仮想サーバーを割り出せる。「正常時には、入力パケット数とCPU負荷率の推移は同調するが、異常時にはこの同調が崩れ、何かしらの異常が検知される。ここから、トラブルの予兆を検知することが可能だ」(ネットワークソリューション事業本部 サービスビジネス事業部 PRI.P.プランナの高橋英一郎氏)。

 仮想システムのリソース監視を実現するために、「仮想システム構成情報の収集機能」を備える。仮想マシンと物理サーバーの構成情報が自動で作成され、ダイナミックに物理サーバー間を移動する仮想マシンも追尾可能。これらの機能を組み合わせることで、データセンターの「外のネットワーク」「内のデータセンター」「仮想マシン」「物理サーバー」の4カ所で障害を切り分けられる。

システムトラブルの予兆検知例仮想システム(物理・仮想サーバー)の構成情報を自動収集

マルチテナント環境では顧客ごとのシステムの状況を監視できる特定のシステムにてレスポンス遅延が発生している様子。ネットワーク障害の可能性を探るため、接続端末数や責任分解点の内外でのパケットロス数などを調べられる

ネットワークに異常が見られなかった場合、サーバーの異常を疑う。まずは構成を確認。図のような構成図が自動的に作成される。仮想マシンを移動した場合もダイナミックに追尾してくれる特定の仮想マシンでアラームが発生しているのを確認。さらに詳細情報にドリルダウンし、原因特定を行う
富士通の「オンデマンド仮想システムサービス」でも導入済み。SLA 99.99%の目標に貢献している

 なお、同製品には、2月に富士通研が発表した「クラウドコンピューティングのための障害検出技術」が活用されている。同技術は、仮想システムからの情報分析力と情報収集力を向上させることで、仮想システムの障害予兆の検知から障害原因の絞り込み、さらに障害解決までの一連の処理を実行するもの。富士通の館林システムセンターにも導入済みで、同社のIaaS「オンデマンド仮想システムサービス」で目指すSLA 99.99%の安定稼働を支えているという。

 富士通では、高いSLAが求められるパブリッククラウド事業者やプライベートクラウド向けに提供する方針。課金は監視対象の物理サーバー台数単位。1物理サーバーあたりの価格は、基本ライセンスが30万円(税別)から、サーバー構成情報収集ライセンスが15万円(同)から、故障検知ライセンスが15万円(同)から。各ライセンスは独立した個別のソフトとして提供される。「3つに分けて提供するのは、できる限りマルチベンダー対応させるため」(高橋氏)と説明している。

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