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日立、熟練ノウハウを形式知化して品質保証業務を大幅に効率化するAIエージェントを提供

品質保証業務を大幅に効率化するAIエージェントの概念図

 株式会社日立製作所(以下、日立)は4日、膨大な過去の品質関連データから最適な知見を導き出し、製造業の品質保証業務を大幅に効率化するAIエージェント「品質ナレッジシステム」を、HMAX Industryのラインアップとして4月に提供開始したと発表した。

 品質ナレッジシステムは、機器故障などのトラブルが発生した際に品質保証部門が担う、過去のトラブル対応記録の検索、対応レポートの作成といった一連の業務を支援する。これにより、品質保証業務における情報収集に要する時間を大幅に削減し、問い合わせ対応の迅速化と、サービス品質の向上を実現する。

 具体的には、膨大な過去事例が蓄積されたデータベースを基に、熟練者がどのようなキーワードや順序で情報を探索し、判断してきたかといった業務プロセスを分析して、暗黙知として蓄積されてきたノウハウを形式知化することで、ベテラン技術者の経験や勘に依存していた判断をデジタルで再現する。これにより、担当者の経験値に左右されることなく、迅速かつ的確な判断を可能にする。長年にわたり日立が積み上げてきたドメインナレッジに先進AIを組み合わせたデジタルサービスとして、技能伝承や生産性向上といった製造業の課題解決に貢献する。

 品質ナレッジシステムの中核技術には、日立の専門組織「Generative AIセンター」が有するデータマネジメントやAI活用のノウハウを適用している。熟練者が有する100件以上の業務知見をAIに組み込み、プロンプトの改善やチューニングを重ねて、熟練者の視点を備えた独自のAIエージェントを構築した。これにより、経験の浅い担当者でも熟練者のノウハウを引き出せる「高精度な検索」や、質の高いドラフトレポートの迅速な作成による「顧客満足度の向上」、多角的な品質状況分析による「トラブル対応力と製品品質の向上」(今後、機能追加予定)といった、実効性の高い業務支援を実現する。

 経験の浅い担当者でも熟練者のノウハウを引き出せる「高精度な検索」は、自然言語での質問や、顧客からの問い合わせメールの文面から、過去のトラブル対応記録やマニュアルを高精度に検索できる。熟練者の経験や勘(暗黙知)に依存していた事象の判断プロセスを形式知化し、AIエージェントに組み込むことで、経験の浅い担当者でも迅速な初動対応を可能にする。

 質の高いドラフトレポートの迅速な作成による「顧客満足度の向上」は、事象、現象、対策方針などのキーワードを入力するだけで、経験の浅い担当者でも専門的かつ読みやすいドラフト版のトラブル対応レポートを迅速に作成できるようにする。レポート作成の属人化や質のばらつきを解消し、顧客へ迅速に報告・提供できるようになることで顧客満足度の向上を見込める。

 多角的な品質状況分析による「トラブル対応力と製品品質の向上」は、蓄積された膨大なトラブル対応レポートなどの品質文書に加え、機能仕様書などの情報を、AIエージェントが多角的に分析できる。担当者の視点に依存しない効率的な分析により不具合抑止策の立案をサポートするだけでなく、分析結果を開発部門へフィードバックすることで、製品自体の品質向上に貢献する。

 日立は、品質ナレッジシステムを、同社の社会インフラ向け制御システム開発の拠点である大みか事業所(茨城県日立市)において、自ら最初のユーザーとして実効性を検証する「カスタマーゼロ」の取り組みとして先行導入した。その結果、トラブル対応事例の検索時間を約9割削減し、対応レポートの作成時間を8割以上、不具合の原因分析時間を8割以上削減するなどの効果を確認した。こうした実績をもとに、顧客の品質保証業務プロセスに合わせた適用設計を実施し、品質ナレッジシステムの円滑な導入・定着を支援する。

 日立は今後、品質ナレッジシステムを、HMAX Industryのラインアップとして製造業向けに展開する。また、品質ナレッジシステムで得た技術者の知見、不具合情報や顧客からの問い合わせ情報といった知識モデル(ナレッジ)を活用して、設計から製造、保守に至る全工程にそれらのナレッジを循環させ、現場の知恵やひらめきをモノづくりの上流工程へフィードバックする好循環サイクルの確立を目指す。

 さらに今後は、品質状況の分析も行う機能を追加し、不具合抑止策の立案のサポートや、製品自体の品質向上にも貢献する。また、将来的にはOT領域との連携についても検討を進め、フィジカルAIとしての展開も目指すとしている。