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日立、現場作業者とAI・ロボットが現場で得た知見を組織全体で活用できる「AIデブリーフィング技術」を開発
2026年5月20日 12:09
株式会社日立製作所(以下、日立)は、現場作業者とAI・ロボットが現場で得た知見を、組織全体で活用できる「AIデブリーフィング(振り返り)技術」を開発したと発表した。
社会インフラや産業現場では、労働人口の減少や熟練者不足が深刻化しており、現場対応力の維持と技能継承が急務となっている。日立はこれまで、次世代AIエージェント「Frontline Coordinator - Naivy(以下、Naivy)」を開発し、現場の状況に応じた直感的なナビゲーションなどのタスク実行支援を通じて、非熟練者の心理的負担軽減や業務効率化を進めるとともに、Naivyを活用したリスク危険予知支援システムにより、現場の安全性向上にも取り組んできた。
一方で、AI エージェントやロボットの活用が進む現場ほど、作業者が判断の根拠を十分に理解しないまま作業が進むリスクがあるという。突発的なトラブルや例外的な事象に柔軟に対応するためには、作業の実行にとどまらず、手順や判断の背景にある「なぜ(根拠)」を理解し、個人の経験を組織全体の知見として蓄積・定着させる仕組みが不可欠となっていた。
そこで日立は、生産性・安全性と現場対応力の向上を支え、現場全体のタスク実行支援と知識深化支援を一体で提供するNaivyを中核とした「フィジカルAIオーケストレーションシステム」を構築し、知識深化支援を支える主要技術として、作業後の学びを整理・定着させる「AIデブリーフィング技術」を開発した。
Naivyに蓄積した現場固有のドメインナレッジを活用し、複数のロボットやAIのタスク実行をオーケストレーションする。さらに日立が培ってきた現場知見に基づき、施設の温度異常・機器故障など現場で発生する物理現象の因果関係をデジタル上で整理・可視化し、作業者・AI・ロボットに最適な形でフィードバックする。これにより、現場作業の確実な実行を支援する。
AIデブリーフィング技術は、ファシリテーターAI、ピアAI(同僚役)、エキスパートAIなど、役割の異なる複数のAIが協調し、作業者の「なぜ(根拠)」を起点に作業後の振り返りを進行する。作業データや手順と連動して、判断に至った因果関係や原理原則を整理し、作業者が自分の言葉で説明できる状態を支援する。これにより、経験を知識として定着させ、突発的なトラブルや例外的な事象にも応用できる現場対応力の向上につなげる。
空調保守業務を模擬した日立の社内検証では、従来の1対1によるAI対話(チャットボット形式)と比べ、知識定着テストのスコアが約70%向上した。さらに、DASH(Debriefing Assessment for Simulation in Healthcare)による評価やアンケートにより、学びの質や主体的に取り組む集中度の改善を確認したという。
さらに、作業の実行と振り返りで得られた学びを、個人の経験にとどめず、組織全体の知見として蓄積し、AIによる支援にも反映する。蓄積した知見は、次のタスク実行支援や教育に活用できる。これにより、人とAI・ロボットが実行と学習を繰り返しながら現場対応力を高めていく「知識深化」の循環を実現し、技能継承と持続可能な運用に貢献する。
今後、日立は、製造・建設・電力など幅広い現場業務を担う顧客やパートナー企業と連携し、単なる自動化・効率化にとどまらない「人とAIの共進化」による新たな現場価値の創出を目指す。具体的には、ユーザーの習熟度や作業内容、進捗状況に応じてAIの役割や支援レベルを動的に調整する仕組みに加え、多様なインタラクション機能の強化を進める。
また、フィジカルAI技術や、日立が掲げる「Integrated World Infrastructure Model(IWIM)」などを組み合わせることで、現場で得た経験の知見化と活用を広げていく。さらに、日立は、NaivyをLumada 3.0を体現する産業分野向け次世代ソリューション群「HMAX Industry」のソリューションとして展開し、今回開発した技術をその主要技術の一つとして位置付ける。これにより、産業現場や電力・鉄道など社会インフラの持続可能な運用と、人材育成や技能継承の変革に貢献していくとしている。

