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AWSジャパン、2026年新戦略「日本のために、社会のために、その先へ」を発表
「フィジカルAI」開発支援プログラムを始動
2026年1月28日 06:15
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は27日、事業戦略について説明。AWSジャパンの白幡晶彦社長は、「2025年は、お客さま、パートナー企業、開発コミュニティとともに日本のDXを加速し、生成AIの実用化を推進し、先進的なユースケースの共有や内製化の推進など、さまざまなイノベーションの創出に向けて情報発信をしてきた」と振り返る。
一方、「2026年は思いを新たにするターニングポイントの1年である」と位置づけ、「日本で事業を開始して以来、掲げてきた『日本のために、社会のために(For Japan, For Society)』という言葉に未来志向の思いを込めて、新たに『日本のために、社会のために、その先へ(For Japan, For Society Leaping Ahead)』とした。短期的な利便性の追求や、部分的な効率化の追求ではなく、長期的な視点を持って、いま何が必要なのかを見通すべきだと考えている」と、新たな基本姿勢を示した。
白幡社長が新たなターニングポイントと語る背景には、2026年にAmazon Web Services(AWS)が2006年の創業から20年目の節目を迎えるだけでなく、AWSジャパンにとっては、2011年の東京リージョンの開設から15周年、2021年の大阪リージョンの開設から5周年を迎えることも見逃せない。
「日本のお客さまのイノベーションを日本のリージョンで支え始めてから15年が経つ。スタートアップ企業やエンタープライズ企業、公共団体など、数多くのお客さまとともに変革の道を歩んできた。だが、日本のデジタル改革はこれから本番である。これから15年先、30年先の成長に向けて、AWSジャパンとしてもさまざまな投資を行っていく」と宣言した。
そして、これまで進めてきた「技術への投資」、「人と社会への投資」に加えて、2026年は、新たに「信頼性への投資」を掲げ、3本柱で日本への投資を推進する考えを示す。
ひとつめの「技術への投資」は、白幡社長が自らが説明。「国内AI・クラウドインフラへの投資」と「AI技術への投資」の観点から言及した。
国内AI・クラウドインフラへの投資では、2024年1月に発表した2027年までに150億ドルの国内投資計画を推進していること、それ以前の100億ドルの投資を合わせることで、東京リージョンおよび大阪リージョンが、最も堅牢で安定したインフラとして、日本の企業などのイノベーションに貢献していることを示した。また、これらのリージョンが、日本固有の自然災害リスクである地震や火山噴火などに対応したレジリエンスに優れたデジタルインフラになっていることを強調した。
「AWSは、世界39リージョンを展開しているが、日本のリージョンへの投資が優先されており、Amazon Bedrockは、米国に次いで日本で提供を開始した。また、Oracle Database@AWSも、東京リージョンでの提供が優先された。東京リージョンは、アジアで最大のサービスが提供されているリージョンでもあり、USリージョンと比較しても差がない。日本では数十万を超えるお客さまが、AWSを活用してデジタルイノベーションを推進している。2026年も日本のお客さまのために、さまざまなサービスの提供を予定している」などとした。
もうひとつのAI技術への投資では、Amazon Bedrockが10万以上の企業などで利用され、多くのユーザーのAI利用を促進していることや、アプリケーションや基盤モデル、専用半導体を包括的に提供していることに加え、自律型AIエージェントの「フロンティアエージェント」の提供、独自のフロンティアモデルである「Amazon Nova Forge」の構築、計算性能で4.4倍、エネルギー効率で4倍となる「Trainium3 Ultra Servers」を発表したことに触れた。
さらに、2023年からは、国内におけるAI開発を促進するための独自プログラムを開始し、287社を支援。経済産業省のGENIACでは26社を支援。グローバルプログラムで選ばれた日本のスタートアップ企業5社も支援したという。
ロボティクスへのAI活用を加速する「フィジカルAI開発支援プログラム」
今回の説明会では、AWSジャパンが新たに提供するプログラムとして、「フィジカルAI開発支援プログラム by AWSジャパン」を発表した。
AWS上で、Vision-Language-Action(VLA)をはじめとしたロボット基盤モデルなどを開発する日本の企業・団体を対象に、データ収集や前処理、モデルトレーニング、シミュレーション、実環境へのデプロイまでの一連のパイプライン構築を支援することで、ロボティクスへのAI活用を推進することを目指す。
具体的には、フィジカルAI領域のスペシャリストによる技術支援や、AWS上での開発に活用できる総額600万ドル規模のAWSクレジットの提供、ロボティクス・生成AIコミュニティの形成、Go-to-Market支援を行う。
「Amazonでは、全世界の倉庫などで約100万台のロボットが稼働している。世界最大級のロボットの製造元であり、運用者である」としながら、「産業用ロボットで世界的にも大きな影響力を持つ日本のロボット産業の強みを生かすことができるプログラムであり、日本のお客さまとの対話の中で生まれたものとなっている。ロボットにAIを活用する際の課題を解決することができる」とした。
同プログラムの支援期間は2026年3月初旬から6月まで。2026年7月中に成果発表会を開催する。応募締め切りは2026年2月13日となっている。
「フィジカルAI開発支援プログラム by AWSジャパン」に関して、ビデオメッセージを寄せた経済産業副大臣の井野俊郎氏は、「高市内閣では、17の成長戦略分野において、AI・半導体を最初の項目に位置づけている。今後は、ロボットや自動運転を支えるフィジカルAIの発展が重要である。このプログラムが、日本の産業競争力強化につながることを期待している。官民連携により、デジタル技術の社会実装を進めていきたい」と語った。
日本の経済成長を加速させる「人と社会への投資」
「人と社会への投資」では、AWSジャパン 常務執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏が説明を行い、「日本の経済成長を加速させるためには、国際競争力の強化に向けて技術活用を加速するとともに、人材育成に投資する必要があると考えている」と切り出した。
そして、AWSジャパンが、デジタル人材の育成支援策として、2017年以降、国内80万人を対象にクラウドスキル研修を提供してきたほか、2025年には旭川高専および富山高専と包括連携協定を結び、地域デジタル人材に貢献。全国7都市でのデジタル社会実現ツアーの開催、地域創生・社会課題解決を支援するAIプログラミングコンテストの実施、AWSエンジェル道場による内製化推進支援などに取り組んできたことを紹介した。
また、クラウド技術の民主化に向け、20年間にわたって、誰もがクラウドサービスを利用できるように支援。AWSが提供する240サービスを活用することでイノベーションを促進してきたことを示した。さらに、生成AIやAIエージェント、フィジカルAIの実用化の支援にも乗り出し、生成AIのユースケースを公開する「GenU」を、2023年からスタート。アプリケーション開発支援ツールのオープンソース化につなげていることに触れた。
加えて、ソフトウェア開発においては、AI駆動型デザインサイクル「AI-DLC」を推進。品質を犠牲にすることなく、迅速にソフトウェアが提供できるようになるという。
そのほか、デジタル社会の早期実現に向けた連携では、自治体のガバメントクラウドへの移行を技術面から支援。「安全性、堅牢性、拡張性、コストパフォーマンスに優れたクラウドサービスを提供し、デジタル庁をはじめとした各省庁、地方自治体、パートナー企業と連携しながら、ガバメントクラウドへのスムーズな移行と、安定した運用を支援していく」と語った。
さらに、新潟県や愛媛県などの自治体連携による地域創生支援、教育・研究機関との連携による科学振興支援、医療機関のDX支援などにも取り組んでいることを示した。
「自治体職員のデジタルスキル向上支援に向けて36都道府県で説明会を開催し、オンライントレーニングでは累計4000人が参加した。ガバメントクラウドのコスト最適化に向けたアクションも開始し、全国20カ所で226人の職員が参加した」などと報告した。
さらに、「地域創生は、自治体をはじめ、地域パートナーや地場企業、スタートアップ企業、金融機関、教育機関、医療機関など、さまざまなステークホルダーと協業する必要がある。AWSジャパンが持つこれまでの経験や実績を共有し、地域創生にとどまらず、日本全体の活性化に貢献したい」と語った。
信頼性への投資:AIエージェント時代を支える圧倒的なインフラ拡張
新たに掲げた「信頼性への投資」については、AWSジャパン 常務執行役員 技術統括本部長の巨勢泰宏氏が説明した。
「生成AIはエージェントの時代に突入し、変革の主役へと進化していくことになる。AWSは、AIエージェントを後押しするさまざまな機能を発表している。また、この1年で3.8GWのデータセンター容量を追加。新たに2つのリージョンの拡張計画を発表しており、高まるAIワークロードに応えていくことになる。また、次世代ネットワーク技術の開発にも取り組んでおり、2024年にホロコアファイバー(空孔ファイバー)を発表。数千kmのデータセンターネットワークに実装し、遅延速度を30%改善した」という。
また、過去12カ月でネットワーク基盤を50%拡張し、陸上および海底ケーブルの長さが、地球と月を11往復できる900万kmに達した実績についても触れた。
さらに、「セキュリティは最優先事項であり、すべての活動や開発がセキュリティの検討から始まる」と述べ、グローバルセンサーネットワークでは、毎日1億以上のインタラクションを分析して脅威を自動的に軽減したり、数十億ノードのグラフモデルで、毎日平均 12万4000の悪性ドメインを検出して阻止したり、毎日70億件の不正スキャンを観測して、数分以内にグローバル規模でシャットアウトしたりしていることを強調。「目標としているのは、AWSが攻撃者にとって、最も割に合わず、魅力のない標的になること。それにより、攻撃が減少する好循環を作ることに取り組んでいる」と語った。
ハードウェアとしては、AWS Nitroチップにより、チップの製造品質、プロセッサの識別情報、ファームウェアのバージョンが厳密に検証され、数百万コンポーネントの整合性をリアルタイムで証明していることを紹介。加えて、この認証の仕組みをプロセッサに拡張し、システム内のすべての重要な通信をハードウェアレベルで暗号化することができているという。
また、AIアクセラレータであるAWS Trainiumを開発。学習と推論では、業界最高クラスの性能を発揮するとともに、電力の最適化にも取り組んでおり、Amazon Bedrockの処理の大半を担っていること、すでに100万個が市場に導入されていることを報告した。
Anthropicとの協業によるPROJECT RAINIERでは、30のデータセンターにまたがる50万個のAWS Trainiumを活用できる世界最大規模の学習環境を実現。また、NVIDIAとの15年以上にわたるパートナーシップをベースに、AWSはNVIDIAのGPUを最も安定して提供できるクラウドとして評価を受けているほか、最新のNVIDIA Blackwellを採用したP6e GB300を発表し、最高クラスのコンピューティングを提供できるという。
新たに発表したAWS AI Factoriesは、顧客のデータセンター内に専用のAIインフラを展開でき、最新のAIチップやNVIDIA GPU、Trainium、AWSのAIサービスなどにプライベートでアクセス可能なものであり、デジタル主権に新たな選択肢を用意できると位置づけた。
一方で、AIエージェントを支援するサービスとして、Amazon Bedrock AgentCoreを発表。「安全にスケールさせて展開できるほか、エージェント基盤としてのツール群を用意。監視と評価を行うことができる。高性能なエージェントをスケールさせて実行するための基盤サービスになる」と述べた。
最後に挙げたのが、開発用AIエージェントが、顧客と対話をしながらシステム開発を支援するKIROだ。AI時代の新たな統合開発環境で、仕様駆動開発により、人とAIの対話を通じて、相互にコンセンサスを取りながらドキュメントを生成。人がAIを認識しやすい形式で開発を進めることができるという。AmazonでもKIROを採用しており、30人18カ月で見積もっていた開発案件が、6人76日間で完遂した例があったとした。
巨勢常務執行役員は、「信頼性の獲得は重労働を伴うが、AWSを利用することで、基盤レベルで信頼性を獲得できる。お客さまはビジネス価値に直結する活動に集中できる。AWSは、伴走しながら信頼性の確保を支援し、日本のお客さまのイノベーション創出に貢献していく」と語った。






















