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NTTデータグループの2025年度上期連結業績は増収増益、AIビジネスの拡大を図る新会社をシリコンバレーで設立

 株式会社NTTデータグループは4日、2025年度上期(2025年4月~9月)連結業績を発表した。それによると、売上高が前年同期比5.4%増の2兆3605億円、営業利益は同80.5%増の2690億円、当期利益が同189.6%増の1556億円、受注高は同10.0%増の2兆7497億円となった。

2026年3月期第2四半期実績(前期比増減概要)

 NTTデータグループ 代表取締役社長 CEOの佐々木裕氏は、「受注高では国内、海外ともに大型案件を獲得したことにより増加している。第2四半期におけるデータセンターのREIT活用の成果もあり、上期実績は増収増益になった」と総括した。

NTTデータグループ 代表取締役社長 CEOの佐々木裕氏

 日本セグメントは、売上高が前年同期比6.4%増の9436億円、営業利益は同7.4%減の805億円。受注高は16.7%増の1兆227億円。日本セグメントの内訳は、公共・社会基盤の売上高が前年同期比6.5%増の3699億円、営業利益は同25.2%減の326億円。受注高は4.3%増の4065億円。金融の売上高が前年同期比10.5%増の3580億円、営業利益は同22.7%増の411億円。受注高は12.2%増の3693億円。法人の売上高は前年同期比1.4%増の2829億円、営業利益は同2.6%増の317億円。受注高は12.2%増の2046億円となった。

 「公共・社会基盤、金融、法人のいずれも増収となり、金融、法人で増益となった。公共・社会基盤では、不採算損失が増加したほか、前年同期の中央府省における高利益率案件の剥落や、営業体制強化に伴う販管費が計画通りに増加している影響で減益になっている。また、日本セグメントの受注は各分野で好調であり、金融分野では大型案件の獲得があった」という。

日本セグメントの業績内訳

 海外セグメントでは、売上高は前年同期比4.8%増の1兆4375億円、営業利益は同269.9%増の1757億円、受注高は同6.5%増の1兆7197億円となった。

 North Americaの売上高が前年同期比6.8%減の2859億円、EBITAは同7.8%減の166億円。受注高は同21.5%増の3939億円。EMEALの売上高が前年同期比1.0%減の5035億円、EBITAは同10.0%減の204億円。受注高は同3.3%増の4941億円。APACの売上高が前年同期比7.1%減の1722億円、EBITAは同10.2%減の132億円。受注高は同5.9%増の1842億円。GTSS(Global Technology and Solution Services)の売上高が前年同期比30.5%増の5522億円、EBITAは同391.9%増の1820億円。受注高は同1.0%増の6476億円となった。

 「売上高は為替影響を除くと、North AmericaとAPACが減収になった。North Americaでは、ヘルスケア分野における大型案件の解約、政権交代による公共案件の縮小が影響した。EMEALはUKが増益に転じているものの、ドイツの景気悪化が影響。特に、米国の関税の影響を受けている自動車関連顧客からの売上減少が見られる。APACでは、クラウドおよびセキュリティ領域が成長しているものの、通信機器販売の不調や、オーストラリアでの受注回復遅れが影響している。一方で、NTT DC REITへの固定資産譲渡を完了し、第2四半期に譲渡益として、8億8000万ドル(1295億円)を計上している。受注では、North Americaにおいて複数の大型案件の獲得があったほか、GTSSでは、データセンター事業において、過去最大規模の受注があった。すべてのエリアで受注額は増加している」と述べた。

海外セグメントの業績内訳

 データセンター事業に関しては、売上高は前年同期比7.3%増の12億7700万ドル(1865億円)、EBITDAが同26.0%増の5億1300万ドル(749億円)、営業利益が同48.1%増の2億7700万ドル(404億円)となった。受注額は前年同期比9.2%増の32億8900万ドル(4802億円)、2025年9月末時点の受注残高は174億200万ドル(2兆5910億円)で、2025年3月に比べて24億2800万ドル(3519億円)増加している。

 「第2四半期までのデータセンター譲渡益を除いても、売上高、EBITDAは前年同期比で順調に拡大している」と述べた。

 また、2025年度第2四半期までの投資実績は9億6200万ドル(1404億円)で、順調に進捗。「データセンターに対する一定の投資は継続的に進めていく。REITを活用したキャッシュリサイクルを継続するとともに、今後は、JVなどの第三者資本を活用した投資により、持続的な成長を推進する」という。

 NTTデータグループは、データセンタープロバイダーとしては、中国企業を除くと、Equinix、Digital Realtyに次いで世界第3位となっている。

データセンター事業の投資等の状況
データセンター事業の受注・収支の状況

 一方、NTTデータグループの2025年度(2025年4月~2026年3月)の連結業績見通しは据え置き、売上高は前年比6.4%増の4兆9367億円、営業利益は同61.2%増の5220億円、当期利益が同71.0%増の2660億円の増収増益を計画している。受注高は4兆7200億円を見込む。なお、当期利益見通しは、前回までは当社株主に帰属する四半期利益としていたが、今回から非支配持ち分を含めた四半期利益を記載しており、増加している。

 佐々木社長 CEOは、「日本セグメントでは、業績予想に対してはやや低いが、日本全体で計画達成を目指す」とした。また、「海外セグメントは、各リージョナルユニットが厳しい状況にあるが、受注の売上への転嫁やコストコントロールにより計画達成を目指す」とした。

 海外事業の統合状況についても言及。「ユニット単位でのコーポレート機能や、ITシステムの統合に加えて、2025年度からはグローバル全体での競争力強化に向けて、ユニット横断での業務プロセスの高度化、事業運営の最適化に取り組んでいる」という。
2025年度第2四半期までに102億円を支出し、ERPのグローバル統合と、コーポレート機能の最適化を実施したという。

Quality Growthへの取り組み

 今回の決算説明会では、NTTデータグループが推進している「Quality Growth」への取り組みについても説明した。

 AI時代において、社会や顧客への提供価値を最大化し、Quality Growthを実現するために、既存の「Consulting」、「IT Services」、「DC & Connectivity 」、「Technology Solutions」の4つの事業ポートフォリオに加えて、「AI-empowered New Value & Productivity」と、「Next-Gen Infrastructure」への取り組みを強化することになる。

Quality Growthを実現するための注力領域

 「AI-empowered New Value & Productivity」では、AIエージェントの社会実装をリードし、生産性を向上させるとともに、さまざまな業界の顧客に対して、最適な新しい価値を創出する。

 「Next-Gen Infrastructure」では、NTTデータグループ独自のフルスタックな事業ポートフォリオを生かして、データセンターとITサービスを組み合わせた次世代インフラを提供する。また、これらを実現するために、多様なパートナーとの連携を強化するとともに、業界特化型AIやフルスタックでの価値提供に向けたM&Aにも取り組むという。

 2025年度上期のNTTデータグループでのAI活用の取り組み状況について言及。2025年10月に、NTTが純国産AIのtsuzumi 2をリリースしたことを受けて、今後は、機密性が高い顧客業務に対して、業務特化型生成AIの提供を実現できるとした。

 また2025年7月には、NTT DATAがMistral AIとプライベートAIを共同開発・販売するパートナーシップを締結。顧客の社内データを、安全に活用しながら、環境負荷を抑えたAI活用を目指すという。さらに2025年5月には、Open AIとグローバルを対象とした戦略的業務提携を開始。日本初の販売代理店として、OpenAI関連事業において、2027年度末までに累計1000億円規模の売上を目指すことになる。

 そして2025年8月には、Google Cloudとグローバルパートナーシップを締結しており、業界に特化したエージェント型AIの導入と、クラウドモダナイゼーションの加速に取り組む。

 こうした状況を踏まえて、佐々木社長 CEOは「さまざまな企業とのアライアンスや、NTTグループとの連携により、顧客ニーズや特性にあわせたサービス提供を実現する」と述べた。

パートナー企業とのアライアンス拡大やtsuzumi 2活用によりお客さまのニーズや特性にあわせたサービスを提供

 開発領域における生成AIの活用についても触れ、2025年度には500件のプロジェクトに生成AIを適用する計画であることを示し、開発工程全体で20%の生産性向上を目指していることを明らかにした。2027年度には適用案件比率を50%にまで高め、40%の生産性向上を目指す。

 「ソフトウェア開発の生産性向上は、生成AIが得意とする領域である。生産プロセスに大きなインパクトをもたらすことができる。しっかりとイニシアティブを取り、顧客にも価値を提供していく」とした。

 また、NTTデータグループでは、2025年11月中旬以降には、AIビジネスの拡大を牽引することをミッションとする新会社を米国シリコンバレーに設立することを明らかにした。

 新会社では、高度AI人材を外部から登用し、少数精鋭チームでAIビジネスを創発。シリコンバレーのAIテクノロジーベンダーや、AIスタートアップ企業との連携やアライアンス強化に取り組み、顧客の経営課題解決や事業成功への貢献を図るという。また、NTTデータグループ内でのAI利用を加速させるためにも新会社を活用するとのこと。

 NTTデータグループの佐々木社長 CEOは、「AIテクノロジーの進化が速く、グローバル水準の技術をしっかりと把握しておくことが肝要である。少数精鋭の専門知識を持った人材を数十人雇用し、最先端技術やAI実装スキルを、事業会社に転移させる役割を担うことになる」とした。

NTTデータグループ全体のAIビジネス拡大牽引をミッションとする新会社を米国シリコンバレーに設立

 一方、日本のIT産業における買収が進展していることについては、「AI時代になり、IT産業の社会的役割が注目される一方、より規模を目指した動きが出ている。競争環境が大きく変わるなかで、しっかりと戦っていけるように取り組みたい」とし、「M&Aは戦略的オプションとして、国内だけでなく、海外も含めて検討をしている。売上増加ではなく、質を重視したビジネスにシフトするなかで、どんなミッシングピースを手に入れるかが、お客さまの価値向上に直結する」と語った。