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MCデジタル・リアルティ、NRT12データセンターで水冷設備の試験運用を実施
2025年9月25日 06:15
MCデジタル・リアルティ株式会社は17日、同社のNRT12データセンター内に構築した、水冷設備の試験運用環境を公開した。2024年3月に運用を開始したNRTデータセンターでは、既にハイパースケーラーの水冷サーバーを受け入れているが、2026年1月から水冷サーバー対応のコロケーション提供を開始する予定だ。
今回の試験では、ニデック株式会社のAIデータセンター向け冷却システムの新製品である、In-Rowタイプの大型CDU(Coolant Distribution Unit)を使用した環境を構築した。1500kW程度の容量を想定した大規模な設備となっている。
試験は、冷却液の流量コントロールや温度管理等の制御の確認の他、模擬負荷装置を使ったヒートロードテストを2週間程度かけて行う。テスト環境は大規模CDUを2Nの冗長構成にしてあり、1台が壊れた場合やメンテナンスで止めた場合などを想定したテストも行う。
In-Row CDUとIn-Rack CDUを組み合わせる理由
現在、多くの水冷サーバーは、ラックの下段に小型のCDUを搭載し、CDUから循環する冷却液でチップ上のコールドプレートを冷却している。サーバー内のメモリや、ラックの上段に搭載するネットワーク機器などは空冷であり、データセンター内がすべて水冷という状況にはない。
NRT12は、従来通りの空冷サーバーも受け入れており、建物としての空調設備は壁面横吹きタイプの空冷空調。屋上のチラーで作った冷水をサーバー室横の空調機械室に配管している。空冷用の冷水なので、温度は10~20℃程度とかなり低温になる。
一方、チップを直接冷やす場合、温度があまり低すぎるとサーバー内で結露の心配がある。このため、ダイレクトチップ方式の場合、冷却水は30℃前後でいいとされる。ただし、データセンター内に空冷用と水冷用の2種類の熱源を設置するのは難しい場合もある。このため、In-Row CDUはサーバー室内に配管される冷却水を27℃程度に保つ働きをする。
In-Rack CDUでは、チップの熱を受け取ったコールドプレートの冷媒と冷却液で熱交換する。この時、冷却液があまり低温すぎると結露の心配があるので、冷却液が30℃前後に保たれるように一次冷却するのがIn-Row DCUという仕組みだ。
今回試験運用したニデックの大容量In-Row CDUは、複数台のAIサーバーラックをまとめて冷却できる。コロケーションの場合は顧客によって異なるIn-Rack CDUを入れることもあるため、In-Row CDUはその要求条件を吸収する役割も果たす。
また、床の防水加工や冷却液の親配管を済ませた水冷用サーバー室であれば、ラックへの配管を追加するだけで水冷サーバーを稼働させられる。まだ具体的な計画というわけではないが、2026年1月から開始される水冷サーバーのコロケーションの引き合い状況によっては、比較的短期で水冷サーバーの運用開始が可能なコロケーション環境ができるかもしれないという。