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MCデジタル・リアルティ、AI時代のデータセンタートレンドと現状における課題を解説
2025年7月7日 06:00
MCデジタル・リアルティは6月26日、「AI時代のデータセンタートレンドとエコシステム拡大に向けた取り組み」に関するメディアブリーフィングを行った。データセンター業界では、水冷対応の可否によってすみ分けが進み、さまざまな企業との連携によるエコシステムが拡大している。
AI時代のデータセンタートレンド
AIサービスの活用が進み、データセンター内では高性能のGPUサーバーが稼働するようになりつつある。大量の電気を必要とするが、これは大量の熱は発するという意味でもある。NVIDIAの最新GPUである「GB200 NVL72」は、初期のV100 GPUと比較すると消費電力は30倍以上となっており、従来の空冷方式では冷却が不可能な域になっていると、MCデジタル・リアルティ ソリューションアーキテクトの丁硯冬氏は言う。
MCデジタル・リアルティでは、ニデックの大規模冷却装置(In-Row型CDU)の採用を決めており、8月からNRT12で試験運用を開始する。
ニデックは創立当初からハードディスクの冷却ファンを手がける、コンピューターの冷却についてはベテラン企業である。AIサーバーの効率的な活用に向けた消費電力と発熱の課題を解決すべく、現状主流であるラック単位のCDU(Coolant Distribution Unit)より大規模なデータホール単位の装置(In-Row型CDU)を開発したとのこと。従来型と比べて、電力高率が30%向上することを検証している。「これを機に、データセンターの低消費電力化、AIの日本での発展に貢献できれば」と、ニデックの田中裕司氏は言う。
MCデジタル・リアルティの最近の動向
企業においてAIの活用が進んでいるが、自社でGPUサーバーを購入して取り組むのはかなりハードルが高い。多くは、GPU as a Serviceのような形で、時間貸しの計算能力を利用する。この時、企業側のシステムとGPU as a Serviceとの接続における、帯域制限やレイテンシーが問題になることもある。
そこでMCデジタル・リアルティでは、今年3月に「AI XCHANGE」というGPU計算力提供サービスをリリースしている。これは、MCデジタル・リアルティのデータセンター内にGPUサーバーを保有するマクニカ、菱洋エレクトロのGPUリソースを、MCデジタル・リアルティの顧客向けに1枚・1時間単位から提供するもの。GPU計算力の需要企業と供給事業者をマッチングする、モルゲンロットによるサービス「Cloud Bouquet」の仮想化技術を用いている。
MCデジタル・リアルティのデータセンターは「キャンパス型構成」を採用しており、同一敷地内に複数棟のデータセンターを運用している。「AI XCHANGE」は、データセンター構内接続サービス「クロスコネクト」やキャンパス内接続サービス「キャンパスコネクト」を介して提供されるため、インターネット回線を介して提供される標準的なGPU as a Serviceの課題である、データ量増大による帯域制限やレイテンシーの課題を解消しつつ、セキュアに利用することが可能だ。
その他にも、MCデジタル・リアルティはJPIXやGLBBジャパンとの連携を発表しており、AI対応のデータセンター事業者として、エコシステムを強化していると、MCデジタル・リアルティ社長の畠山孝成氏は言う。
さらに事例として、IOWN APNを活用した製薬・創薬研究データ分析の実証実験や、衛星データによる宇宙ビッグデータ活用が紹介された。
電力問題と人材不足が業界としての課題
データセンター業界では、東京・大阪の大都市圏にニーズが大きく、データ処理集積地としての重要性はどんどん増している。一方で、特に東京電力管内では特高電力の不足がボトルネックとして顕在化している。このため、中長期視点で効率的な国土開発、特に電力インフラの強化が期待されているところだ。
畠山氏によれば「印西で今から特高電力を要望しても、10年待ち」といい、これについては短期的な改善が必要と考えている。データセンターは段階実装するのが一般的で、最終的な使用電力と開所時点での使用電力には開きがある。しかし、データセンター建設の際には、最終的な提供電力量で申し込む。このため、現時点で電力供給が逼迫(ひっぱく)しているからといって、実際に使われているとは限らない。これについて畠山氏は、使っていない分は開放するような、実需に見合った電力確保の仕組み作りの必要性を指摘している。
業界における課題はもうひとつある。電気主任技術者などの、専門家人材の不足だ。特に、大規模なデータセンターを利用するのはグローバル企業が多いため、バイリンガルの人材が求められている。MCデジタル・リアルティは三菱商事と米国Digital Realtyが50%ずつ出資したジョイントベンチャーであり、ローカルとグローバルの両方に強みがある。そこを生かしつつ、人財育成を進めているという。