ニュース

KPMGコンサルティング、製造業のAI活用で検討すべき課題やアプローチをまとめたレポートを公開

 KPMGコンサルティング株式会社は12日、製造業がAIを活用して長期的な価値を創出するために検討すべき課題やアプローチなどについてまとめたレポート「Intelligent manufacturing -AIを活用したものづくりプロセスの高度化」(日本語版)を発表した。

 レポートは、KPMGインターナショナルが、製造業でAIを活用してビジネストランスフォーメーションを推進しているシニアAIリーダー163人を含む、世界の主要市場における管理職1390人を対象に実施した調査を基に、製造業においてAIを導入・利活用している企業の現状や課題、トランスフォーメーションの実現を推進するエージェント型AIの変革的な役割、企業全体でAIを戦略的に統合するためのアプローチなどについて考察している。

 調査によると、93%の回答者が、AIは競争優位を高めるために必須条件であると認識している。さらに、20%がAIをすべての部門における中核的な要素として位置付けており、26%がAIを組織文化や業務に取り入れている。

 AIの活用については、74%の組織が機械学習を利用しており、72%が予測分析を活用している。業務の自動化においてもAIの活用が進んでおり、67%がAIをRPAと統合している。特に、67%がエージェント型AIを利用しており、20%がその用途のさらなる拡大を計画している。

 AIへの投資は加速しており、36%の組織がIT予算全体の10%超をAIに割り当てている。将来的には、77%が今後1年間でAIへの投資を増やす計画で、71%が10%超の増額を見込んでいる。

 AIの実装については、56%の組織がAIソリューションの実装に際してデータ関連の問題に直面しており、40%がスキルギャップや変化への抵抗など、従業員に関する課題を挙げている。その対応として、80%がAIツールに関する知識とスキルのトレーニングに投資している。

 AI導入のメリットとして、96%の組織が業務改善や効率向上を達成し、45%が財務面での改善を経験している。さらに62%が、10%を超える投資利益率(ROI)を達成していると回答している。

 AIのリスクについては、65%の組織がAIのリスク管理に対して体系的な管理体制を整備しており、綿密なプロセスでリスクを特定し、評価した上で、リスクを軽減している。また、57%がデータプライバシー、44%が規制コンプライアンスに重点を置いている。

 サステナビリティとの関係については、回答者の78%がサステナビリティ目標の達成をAIよりも重要であると捉えており、責任あるイノベーションに対する製造業界の確固とした姿勢を強調している。また、85%の組織はAIによるエネルギー需要の増大に対応するための戦略を策定しており、AIの導入が長期的なサステナビリティ目標と整合するように取り組みを進めている。

 レポートでは、製造業において、AIから最大限の価値を創出するためには、AI戦略の策定や導入後の変化などを綿密に検討することが重要だと指摘している。AIの導入と長期的価値創出に向けたリーダーの主な視点として、「コアコンピテンシーに整合する形で価値を生み出していくようなAI戦略を策定する」「AIトランスフォーメーションのロードマップに信頼を盛り込む」「持続可能なテクノロジーとデータ基盤を生み出す」「人とAIの協働関係を高める従業員文化を構築する」の4項目を挙げている。

 製造業におけるAI導入を成功させるためには、全社レイヤー(Enterprise)、部門レイヤー(Functions)、基盤レイヤー(Foundations)の3つのレイヤーによる多層的なアプローチが必要だと説明している。また、Enable(能力付与)、Embed(組み込み)、Evolve(進化)の3つのフェーズを段階的に進めることで、AIを活用した顧客中心のトランスフォーメーションの実現が可能になるとしている。