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従業員の75%はAIエージェントとの協働には前向きだが、AIに「管理される」ことには慎重~Workday調査

 米Workdayは現地時間8月12日、AIエージェントに関するグローバル調査レポート「AI Agents Are Here—But Don't Call Them Boss」を発表した。調査では、職場でAIエージェントの存在感が高まる反面、従業員は依然として役割の線引きを重視していることが明らかになったとしている。

 調査レポートによると、従業員の75%がAIエージェントと協働することに前向きである一方、AIエージェントに管理されることに前向きと答えたのは30%にとどまった。これは、企業がAIの可能性を取り込みながらも、人間らしさを損なわない方法を模索することが大きな課題であることを示しているとしている。

 また、AIエージェントの急速な普及の背景には広範な楽観論があるものの、従業員はAIとの関わり方に明確な線引きをしていると分析している。調査対象の組織の82%は、AIエージェントの利用を拡大しているにも関わらず、AIとの協業において、受け入れ可能な範囲とそうでない範囲を明確に区別している。

 日本もグローバルとほぼ同様の傾向となっている。日本の回答者の多くが「AIエージェントは生産性や業務の質向上に役立ち、組織の戦略も明確なビジネス目標に基づいて推進されている」と評価し、生産性や職務遂行能力に加え、エンゲージメント、従業員の定着率、ワークライフバランスといった従業員体験の向上にも強い期待を寄せている。しかし、重要な意思決定や管理職的な場面では、AIに自律性を与えることには慎重な姿勢が見られる。

 調査では、従業員の4人に3人は、AIエージェントと共に働き、新しいスキルを提案してくれることに強い安心感を抱いているが、AIエージェントに管理されることに前向きな人は30%にとどまった。さらに、人間の知らないところでAIエージェントが裏で稼働することに前向きな人は24%にとどまった。Workdayでは、従業員との信頼を築き、AIの導入をさらに広げていくためには、AIの役割の線引きを明確に定義することが鍵になるとしている。

 日本でも、AIエージェントに対する受け入れやすさは、協業・助言的な役割が最も高く、AIが新しいスキルを提案することに対しては88%が「抵抗を感じない」と回答している。一方で、AIに管理されることへの前向きな回答は24%にとどまっている。グローバルの結果とは対照的に日本では、人間の知らないところでAIエージェントが稼働することに前向きな考えを示した人が43%に上った。

 AIエージェントへの評価は、依然として4人に1人以上の回答者が「AIエージェントは過大評価されている」と考えているものの、利用経験が増えるにつれて信頼性が向上する結果となった。試験的に導入している段階では、自社のAI活用を責任あるものと信頼している人の割合は36%だが、本格的に活用している層では95%に達した。

 日本では、従業員と組織の両方の利益のためにAIエージェントを使用することに対する組織への強い信頼があり、92%が多少なりとも、または大いに信頼していると回答している。

 AIによる生産性向上については、約9割の従業員がAIエージェントが業務効率を高めると考えている一方で、「プレッシャーの増大(48%)」「批判的思考力の低下(48%)」「人間同士の交流機会減少(36%)」といった懸念があるとしている。これは、従業員のウェルビーイングを優先した慎重なAI導入が必要であることを示していると分析する。

 日本の回答者は、「健康・ウェルビーイング(43%)」に加え、「オンボーディング(50%)」の領域においてもAIによる効果への期待はそれほど高くなく、一部には依然として懐疑的な見方が残っている。

 AIエージェントと人間の役割については、多くの従業員がAIエージェントを重要なチームメイトと見なしてはいるものの、完全なワークフォースとは捉えていないという結果になった。AIへの信頼度は業務内容によって異なり、ITサポートやスキル開発では高く、採用、財務、法務などの機密分野では低い傾向がある。これらの結果から、AIを活用する際には、人間による監督と説明責任が不可欠だとしている。

 日本でも同様の傾向が見られ、ITインフラやテクノロジーのプロビジョニングなどの技術分野では、AIエージェントへの信頼が人間よりも高い、あるいは同等とされている。また、スキル開発の管理においては71%が「人間とAIを同等に信頼している」と回答しており、特定の役割ではAIと人間の信頼度がほぼ同等であることが確認された。

 財務分野での活用については、財務部門の従業員の76%が、AIエージェントがギャップを埋める助けになると考えており、解雇を懸念する人は12%にとどまった。財務分野における主な利用用途としては、「予測・予算策定(32%)」「財務報告(32%)」「不正検知(30%)」が挙げられている。

 日本に限っても、グローバル全体と似た動向が現れており、財務報告分野ではAIエージェントの導入は6%にとどまるものの、今後3年間で55%の組織が導入拡大を検討しており、日本でもAIエージェントへの期待が高まっている。

 Workdayでは、今回の調査はAIの潜在能力を引き出すための重要な指針を示しており、単に新しい技術を採用するだけでなく、透明性を確保し、人間の力を最大限に引き出し、信頼関係を構築することが不可欠だと指摘している。AIエージェントが人間の能力を高め、より生産的で充実した働き方を可能にする未来を慎重に設計する必要があるとしている。