ニュース
デロイト トーマツ、AIエージェント集団により顧客やユーザーの反応予測を可能にする「AI haconiwa」サービスを開発
2025年9月2日 16:39
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、デロイト トーマツ)は2日、
企業や自治体がより効果的に顧客・ユーザー・市場などの反応を予測するために、AIエージェントの集団を構築し、シミュレーションを行う新たなサービス「AI haconiwa」を開発したと発表した。同社では2025年12月の本格提供に向け、技術検証とベータ版提供を開始した。
AI haconiwaは、多様な人の個性・深層心理を再現したAIエージェント(住人AI)集団を構築し、さまざまなコミュニティの反応を事前に予測できるシミュレーション環境である人間社会のデジタルツインを作り出すことを目指して開発された。この取り組みにより、時間や場所に制約されることなく、生身の人間を対象とする場合には困難な質問や対話であっても、何度でもインタビューや検証を実施でき、決して表面的ではない人の深層の欲求や動機に基づいた反応情報を得られるとしている。
AI haconiwaにより、これまでの経験則や統計的手法などに基づいて行われることが多い意思決定プロセスから、事前シミュレーションの結果に基づく具体的根拠がある意思決定(試さなくても最善手が分かっている状態での意思決定)プロセスへの変革を実現すると説明。マーケティング戦略をはじめ、商品・サービス開発、IR戦略、社内制度変革など、多くの意思決定プロセスにAI haconiwaが組み込まれることで、クライアントがよりターゲット層のニーズに合った商品・サービスを、より正確かつスピーディに届けられるよう支援する。
AI haconiwaは、「AIインタビューエージェント」や「マルチエージェントアプリ」「多機能RAGアプリ」など、デロイト トーマツが独自開発した各種AIアセットの要素技術、およびデロイト トーマツ内で先端技術の研究開発を行っている人材が学術論文を調査、技術検証を重ねて蓄積したノウハウを活用する。
クライアントの利用目的に応じて調査対象となる人間社会のデジタルツインを作り出すために、複数のAIエージェントが連携し、ディープインタビューに耐えうる人の個性を再現した住人AIを高速自動生成できるシステムを構築する。
システムの構築方法は、1)クライアントの利用目的に合わせて、マネジメントAIが構造化されたインタビューシナリオ・設問を作成、2)インタビューAIが実在のインタビュイーにインタビューを実施、3)前項で取得した個性データからユースケースに適合したエキスパートAIがインタビュイーの特徴を解釈し、エキスパート目線の情報を付加したデータを生成、4)前項のデータを取り込み、実在のインタビュイーの性格や価値観、思考の癖などを再現した住人AIを生成――といった手順となる。
AI haconiwaの提供にあたっては、コンサルタントとエンジニア・研究者のハイブリッドチームで展開し、シミュレーション実施による反応情報収集だけでなく、クライアントの課題解決のためにユースケースの開発や導かれたインサイトに基づく施策実行まで一気通貫でサポートする。
マーケティング戦略立案の場合は、ターゲットとなる層の住人AIにマーケティング施策を事前に繰り返し試すことで、フィードバックを得て施策の精緻化に生かし、効果向上とコスト削減を同時に実現する。
商品・サービス開発の場合は、ターゲットとなる層の住人AIにN1インタビュー(特定の一人に対して深くインタビューを行い、その人の価値観やニーズを掘り下げる手法)を繰り返し行うことで、商品・サービス開発の各段階で豊富なフィードバックを得ながら、より精度の高い商品・サービスを市場に投入する。
優秀な営業のデジタルツインの実現の場合は、画一的/集合知ではない営業ノウハウを保有する複数タイプの営業優績者の住人AIを作成し、自分のタイプ・目指す営業像に即したデジタルツインに問い合わせながら営業力を強化する。
高度な営業トレーニングの場合は、複数タイプのターゲット顧客の住人AIを作成し、営業シミュレーションを実施する中でそれぞれの住人AIから返ってくる多様な反応をトレーニングに活用する。
社内制度変革のシミュレーションの場合は、企業内の人物の住人AIを作成することで、新たな人事制度や組織変更を実施した場合の社員の反応を、事前にシミュレーションする。
世論調査の場合は、特定の地域特性やペルソナに即した住人AIを大量に作成することで、世論調査の効率を向上させる。
デロイト トーマツでは、サービスに活用できるさまざまな黎明期AI技術の調査・実証実験を行うため、2025年6月から新たに「先端AIチーム」を創設しており、先端技術に関する情報とクライアントニーズの組み合わせにより、継続的にサービスの高度化を図るとしている。
具体的には、2025年12月の本格提供時には簡易的な住人AI同士の会話、マネジメントAI(インタビュー設計自動化)、インタビューAI機能を実装予定。また、将来的には住人AI同士の記憶を保持したまま相互会話することによる思考変化シミュレーションやマクロ情報などの外部情報のインプットによる住人AIの時系列成長、web3コミュニティを活用した住人AI情報のアップデート、脳波技術を活用したより高度な思考シミュレーション、仮想空間情報との融合による多彩な環境での住人AIシミュレーションなどの実現を目指すとしている。