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デロイト トーマツ、AIによるインタビューにより企業内の暗黙知をデータ化する「AIインタビューエージェント」を開発

 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、デロイト トーマツ)は13日、企業のデータドリブン経営を飛躍的に進展させる方策として、さまざまな人材の中に眠る暗黙知を引き出すAI技術の実装を推進している中で、その技術を集約した「AIインタビューエージェント」アプリを開発したと発表した。アプリは、AIエージェントによる自然な音声対話から、データの構造化、データ検索までの一連のプロセスを複数のAI技術を用いてプログラム化している。

 デロイト トーマツでは、昨今の生成AI技術の普及により企業内のデータベースを活用する機会が一層広がる一方で、必要な情報が人の頭の中に眠っており、データ化されていないケースも多く、データドリブン経営の障壁となっていると説明。そうした暗黙知をデータ化するためには、情報を持つ人自身が文書に書き起こす、第三者によるインタビューで情報を引き出すといった手段が一般的だが、多忙で時間が確保できない、どのような情報を引き出せばよいかわからない、引き出せる情報の質がインタビュアーの能力に左右されるといった課題があるという。

 AIインタビューエージェントは、事前に設定されたシナリオに沿って、AIが音声でインタビューを行い、聞き出した情報を構造的に整理する。アプリにより、24時間、場所を選ばず、一定の品質で人とAIの対話を通じた情報取得が多数可能になる。

 取得した情報は、知識を整理するのに適した「グラフ型データ」と呼ばれるデータ構造でデータベースに格納される。グラフ型データとは、ノード(頂点)とエッジ(辺)によって構成され、データ間の複雑な関係性を表現するのに適したデータ構造で、情報を検索する際には自然言語で情報を取得でき、また、データ構造をたどることで検索の精度が高まる。

 AIによる音声インタビューを通じた情報取得および自然言語による情報検索を、音声インタビュー、会話ログ表示、グラフデータ表示、データ編集、データ検索、AIエージェントの各機能で可能にする。

 音声インタビュー機能は、あらかじめ設定されたシナリオに基づいて、音声AIがインタビューを行い、自然なかたちで人から情報を聞き出す(テキスト入力との併用も可)。会話ログ表示機能は、人とAIの会話内容をリアルタイムにテキストで表示する。グラフデータ表示機能は、会話内容を大規模言語モデル(LLM)が分析してグラフデータに変換し、画面上にビジュアル的に表示する。

 データ編集機能は、AIに誤認識されてしまった内容を、ユーザーが画面上から直接修正できる。データ検索機能は、グラフデータに対して音声で質問を投げかけることで、必要な情報を取得できる(テキスト入力との併用も可)。AIエージェント機能は、ユーザーとの対話内容に応じて、インタビューを実施すべきか、グラフデータへの変換を実施すべきか、データ検索を実施すべきかを判断し、複数の処理を自動的に切り替えられる。

AIインタビューエージェント概要

 AIインタビューエージェントは、あらかじめ設定されたシナリオに応じて音声インタビューを行うため、聞き漏らしや話の脱線などを抑えられ、一定の品質で情報を引き出せる。また、聞き取った内容を随時整理して会話ログを可視化するため、ユーザーが自身の話がきちんと伝わっていることを確認でき、安心感を与えられる。人に近い声質や人と同等のスピードでの会話でストレスのない対話、時間と場所を選ばないといった利点もある。さらに、グラフRAGという技術により、構造化データで情報を管理しているため、情報を検索する際に、断片的な情報だけではなく、関連性のある情報をひも付けて取得することにも特徴があるとしている。

AIインタビューエージェント実行中の様子(例)(ユーザーの業務経験やスキル、資格等の人材情報をインタビューしている様子)

 デロイト トーマツでは、企業のデジタル変革(DX)に対して、戦略策定のアドバイザリーとシステムの開発・導入、保守までの技術サービスを統合的に提供しており、業界や業務の知見を持つコンサルタントとエンジニアが連携し、クライアントサービスを行っていると説明。その一環として、企業内の暗黙知をデータ化するAIインタビューエージェントをカスタマイズして提供することで、個別クライアントの課題解決やイノベーションの促進を行うとしている。

 ユースケース例としては、人材スキル・実績の把握では、社員に対して定期的にAIからインタビューを行うことで、保有するスキルや経験した業務をデータ化し、適切な人材検索やアサインが可能になると説明。また、営業ノウハウの共有では、優秀な営業社員のテクニックや姿勢などのノウハウを引き出し、ミドルレベルの社員のスキルを向上させられるとしている。