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AIガバナンスを推進する日本IBM、双日の体制構築を支援

 日本IBM株式会社は28日、AIガバナンスに関する説明会を開催した。説明会の冒頭で、同社 技術理事 AI倫理委員会 日本チーム リーダーの山田敦氏は、「AIガバナンスとは、AI活用を前進させるために適切なガードレールを設置し運用すること。ブレーキをかけることではない点が重要だ」とした。

日本IBM 技術理事AI倫理委員会 日本チーム リーダー 山田敦氏

 世界的な動向としては、欧州委員会が2019年にAIに関する倫理ガイドラインを発表するなど、AIガバナンスへの取り組みが進みつつあるが、山田氏によるとIBMではそれに先駆け、2018年にAIの原則を公表するとともに、社内でAI倫理委員会を発足し、リスク審査やAIリテラシー教育、政府との対話に取り組んできた。日本もグローバル企業の一員としてこの取り組みを推進していたが、さらなる強固なガードレールを設置すべく、2022年にAI倫理委員会日本チームを発足している。

世界に先駆けAIガバナンスに取り組んだIBM

 システム面においても、「IBMは2018年にAI倫理に対応する基礎技術を構築した。それを社内システムとして活用し、その経験をベースに製品へと展開してきた」と山田氏は説明する。

 日本IBM コンサルティング事業本部 シニア・アドバイザリー・データサイエンティストの天白政樹氏は、多くの企業はAIガバナンスに十分対応できていないとし、IBMの「統合ガバナンス・プログラム」を紹介。同プログラムでは、「組織、プロセス、システムの3つの観点から、AIのユースケースを網羅的に把握し、リスクに応じた審査をしたうえで、開発されたAIを一元的に管理、継続的な評価とモニタリングを実施する」(天白氏)という。

IBMの「統合ガバナンス・プログラム」
日本IBM コンサルティング事業本部 シニア・アドバイザリー・データサイエンティスト 天白政樹氏

 システム観点でのガバナンス確立については、「ガバナンスの可視化、コンプライアンス管理、ライフサイクル運用、脅威検知、トレーサビリティという5つの技術を軸に、AIが管理できる仕組みの実装を推進している」と、日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 watsonx事業本部 事業部長の竹田千恵氏。特に、AIエージェントのリスクやセキュリティについては、「watsonx.governance」や「Guardium AI Security」などの製品群で対応するという。

システム観点のAIガバナンスの確立
日本IBM 理事 テクノロジー事業本部 watsonx事業本部 事業部長 竹田千恵氏

 こうしたAIガバナンスの仕組みを提供するIBMの支援によって、自社のAIガバナンス体制を構築したのが総合商社の双日株式会社だ。双日 デジタル事業開発部 デジタル事業開発第三課 課長の宮脇俊介氏は、「当社の中期経営計画2026では、成長戦略として“Digital-in-All”を掲げている。その中で、すべての事業領域において課題を解決する手段にAIが組み込まれているほか、業務効率化に向け双日専用のAIチャットを自社開発するなど、AIが当たり前に溶け込んでいる。そこで、本格的にガバナンスを進めようと考え、IBMの支援を得た」と話す。

双日 デジタル事業開発部 デジタル事業開発第三課 課長 宮脇俊介氏

 具体的には、まずIBMが策定したAI事業者ガイドラインの理解と適用に着手。双日独自の業務環境に合わせて現状を評価し、優先的に対応すべき項目を整理した。

 実務面では、6つのユースケースを選定し、現場レベルでの具体策に落とし込むことで、AI活用の即時性と実効性を高めた。初期段階では、社内の多様な立場からの意見が衝突し、議論が停滞する場面もあったというが、IBMの提案により1日集中討議を実施。「対話を通じて論点の整理と役割分担を明確化し、プロジェクトは加速した」(宮脇氏)という。

 特に重点対応項目として、AI審査プロセスの整備を進めた。「案件ごとのリスク量に応じて経営層にエスカレーションする体制を構築し、チェックリストによるリスクの特定と対応策の提示を開始した。残存リスクについては、導入による利益と比較し、実施可否をロジカルに判断する運用が始まっている」と宮脇氏は説明する。

 組織体制については、「新設するのではなく、既存のDX推進会にAIガバナンスを組み込むことでスモールスタートを実現した」と宮脇氏。営業本部からの案件に対し、デジタル事業開発部とコーポレートIT部が連携し、必要に応じて外部専門家の知見も取り入れているという。

 今後について宮脇氏は、「AI原則の策定やモニタリングツールの導入、インシデント予防策の整備などを通じて、ガバナンス体制を整えていきたい」とした。

双日のAIガバナンス検討(方針・計画策定の協議)