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NEC、Web業務を自動化するエージェント技術「cotomi Act」を開発
ベンチマークで人間を超えるWebタスク成功率を達成
2025年8月27日 12:47
日本電気株式会社(以下、NEC)は27日、個人や組織が持つ暗黙知をデータ化して学習・活用し、Web上での業務を自動で実行するエージェント技術「cotomi Act」を開発したと発表した。同技術を活用したWebブラウザー自動操作のAIエージェントは、国際的ベンチマーク「WebArena」において世界で初めて人間のタスク成功率78.2%を上回り、80.4%を記録したという。
cotomi Actは、従来のAIでは扱いが難しかった現場に根付く暗黙知を自動的に抽出・形式知化し、業務コンテキストを理解できるパートナーとしてのAIエージェントへと進化させる技術。
これにより、複雑で専門性の高い業務も高精度かつ自律的に遂行できるようになる。今回の成果は、このような技術的優位性を示すもので、NECは今後、同技術を通じて企業や組織の生産性向上と業務改革に貢献していくとしている。
NECでは、少子高齢化や労働人口の減少を背景に、多くの企業や組織でAI技術の活用による生産性の向上が求められているが、現場に根付いた暗黙知の多くは、体系化やデータ化が進んでおらず、共有や継承が難しい状況にあると説明する。また、高度な専門業務の効率化と自動化を進めるためには、業務内容だけでなく、判断の背景や企業文化なども含めた全体像を理解することが不可欠だが、従来の一般的なAIエージェントでは、こうした暗黙知や業務のコンテキストに十分対応できず、精度や柔軟性に課題があるという。
そこでNECは、デジタル業務の起点となるWebブラウザー上での業務行動に着目し、属人化しやすく、共有や継承が難しい暗黙知をAIエージェントで活用できる技術を開発した。これにより、長年の経験や試行錯誤によって培われてきた個人の直感やノウハウまでもデータとして取り込み、従来は困難だった複雑で専門性の高い業務の高度化・自動化を実現する。
開発した技術は、専門家へのヒアリングなど従来の人手による作業では獲得が困難だった個人や組織の専門業務に内在する暗黙知を、デジタル業務の接点であるブラウザー上の操作履歴やログなどの行動履歴から自動的に抽出し、意味や背景まで理解した上で形式知化する。これにより、人手では捉えきれなかった領域の暗黙知をデータ化し、AIエージェントによる学習や業務への活用を可能にする。
ブラウザー上の業務行動からデータ化した暗黙知は、NEC開発の生成AI「cotomi」を含むさまざまな技術によって自動的に分析され、実際の業務に活用される。これにより、AIエージェントはユーザーからの曖昧な指示に対しても、膨大な暗黙知の中から必要な知識を的確に見分け、情報や手続きを自動で検索・選択できる。その結果、指示に対して何度も質問することなく、業務のコンテキストを理解した適切な対応ができるようになり、従来の一般的なAIエージェントでは難しかった複雑で専門性の高い業務も、高精度かつ自律的に実行できる。
技術を活用したWebブラウザーの拡張機能として動作するAIエージェントは、Webエージェントの国際的ベンチマーク「WebArena」において、世界で初めて人間を上回るタスク成功率を記録した。WebArenaは、実際のインターネット利用に近い環境で、ECサイトや掲示板、コラボレーション開発、コンテンツ管理、地図検索などを対象に、AIが自然言語の指示通りにWeb操作できるかを評価する指標。これらのタスクには、ページ遷移やフォーム入力、状態変更など、長い思考と複雑な操作が求められるため、AIにとって非常に難易度の高いものとなる。人間の成功率は78.2%、従来のAIエージェントは40%~70%前後にとどまっていたが、今回、cotomi Actを活用したAIエージェントは初めて80.4%を達成し、人間の成功率を上回った。
NECは、自社をゼロ番目のクライアントとする「クライアントゼロ」の考えのもと、最先端の社内DXを推進しており、今回開発した技術についてもNECグループ内で実証を進めており、今後もさまざまな検証を重ね、2026年度中のサービス提供を目指して取り組んでいくとしている。