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リコーと山下PMCが協業、360度カメラと施設管理クラウド「b-platform」との連携を強化

 株式会社リコーは、360度の画像および映像を中心とした業界横断型プラットフォーム「RICOH360」において、山下PMCの施設管理向けクラウドプラットフォーム「b-platform」との連携を強化し、共同マーケティングなどの協業を進めることを明らかにした。360度画像を活用して、建物および施設の情報管理の効率化と生産性向上を図る。これにより、オフィスビルやマンション、工場などの建物オーナー、行政関係者、ビルマネジメント会社、不動産会社などを対象に、プラットフォームの提案を加速する考えだ。

 リコー Smart Vision事業センター プラットフォームセールス室長の山本徹氏は、「これまでは、不動産や建設におけるプロモーション用途や、内装工事の進捗確認などで利用されていたが、今後は、b-platformのような360度画像と親和性が高い業務アプリケーションとの連携が重要であり、これによって、新たな価値を提供できると考えている」と述べる。

 その上で、「山下PMCが持つ建物や施設に関する事業戦略、設計・施工マネジメント、施設運営マネジメントにおける豊富な知見やノウハウを活用することで、施工管理や現地調査などの特定業務での価値提供だけでなく、プロジェクト全体の管理、竣工後の維持および管理を含めた価値を提供できる。また、品質の高位平準化や、属人化からの脱却、遠隔からの確認や意思決定、技術伝承や操作手順の共有といった現場からのニーズにも対応できる」とした。

 また、山下PMC プラットフォームビジネス本部b-platform担当部長の西村貴裕氏は、「山下PMCが持つ施設管理および運営に関するマネジメントノウハウと、360度写真を利用した施設情報管理サービスに、リコーが持つ360度カメラデバイスの開発技術と、高度な画像処理技術を組み合わせることで、この分野での市場開拓に乗り出す。b-platform 3.0と呼べる新たな段階に踏み出したい」としている。

リコー Smart Vision事業センター プラットフォームセールス室長の山本徹氏(左)と、山下PMC プラットフォームビジネス本部b-platform担当部長の西村貴裕氏(右)

 リコーは、ワンショットで360度撮影が可能なカメラ「RICOH THETA」を2013年に発売し、当初は、主にB2C向けに事業を展開してきたが、2022年からはビジネス用途に注力。ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた統合型サービス「RICOH360」を前面に打ち出して、360度映像ビジネスを推進。「RICOH360」を、360度の画像、映像を中心とした業界横断型プラットフォーム事業のブランドに位置づけている。

 リコーの山本氏は、「RICOH360は、リコーの強みである多様な業界の現場課題に寄り添った提案力と、ハードウェアとソフトウェア連携した開発体制により、ビジネスの現場が抱える課題に対して、的確に対応するサービスを提供している。デバイスの強みだけでなく、ソフトウェア、クラウドサービスとの連携により、撮影からデータ活用までのワークフロー全体を効率化し、よりよいユーザー体験を提供する。360度カメラを開発しているメーカーとしての特長を生かし、顧客のDXの推進に貢献したい」と語った。

コンシューマからビジネス用途へ

 リコーでは、2025年4月に、建設・設備管理業界などに向けて、360度カメラと画像活用アプリを組み合わせたトータルソリューション「RICOH360 ビジネスパッケージ」の提供を開始したほか、耐久性に優れたRICOH360 THETA A1を2025年8月上旬に発売するのにあわせて、建設・土木の現場への導入を促進するなど、ソリューションの切り口からの提案を進めている。今回のb-platformとの連携のように、サードパーティとのAPI連携も、RICOH 360のソリューション強化につながる。

 一方、山下PMCは、日本初のプロジェクトマネジメント(PM)/コンストラクションマネジメント(CM)専業会社であり、建物や施設に関する課題解決に貢献。エスコンフィールド北海道、水戸市民会館、バンヤンツリー・東山京都などの建設プロジェクトに参画。現在、開催中の大阪・関西万博でも、会場整備に関するプロジェクトマネジメント支援業務のほか、大阪ヘルスケアパビリオン、Better Co-Being、静けさの森アートプロジェクトなどの業務も担当している。

 b-platformは、2021年4月から提供を開始している施設管理向けクラウドプラットフォームで、360度カメラで撮影した画像を活用。直感的なインターフェイスを用いながら、施設管理に関する情報を一元管理できるのが特徴だ。b-platformの事業規模は、前年比4割増で推移。建物オーナーなどを中心に導入が進んでおり、当初掲げていた3年間で2000棟の利用目標を上回る実績となっている。

 建物に関する情報は、計画から除却までの時間軸が極めて長く、許認可申請や図面、コスト情報、改修履歴、不具合情報、定期報告など、大量の図面や各種情報を扱う必要があるが、それらが分散して管理されていたり、複数の事業者が取り扱うため、その間に書類が散逸したりといった課題が生まれていた。

 b-platformでは、大量の図面や資料を写真とひも付けて管理することにより、建物にまつわるすべての情報が長期にわたって散逸することなく、体系的に一元管理でき、情報収集や管理負荷の削減が可能になるという。

b-platform 1.0

 Googleのストリートビューのように、建物内の360度画像のなかを進むことができ、それらの画像にさまざまな情報を集約。クリックするだけで、関連するデータや図面などを閲覧できる。また、画像にひも付けた形でのコミュニケーションも可能であり、不具合を指摘したり、To-Doリストとして作業の進捗を管理したりといったこともできる。

施設の画像をクリックすると関連情報が表示される
図面などの表示も可能だ
画像とひも付けたコミュニケーションも可能にしている

 2024年からは、b-platform 2.0と位置づけ、サービスメニューを強化。b-platformの活用に向けて、企業におけるDXを推進するためのコンサルティングの提供を開始したほか、b-platformの機能をアップデートしたり、新たなオプション機能の提供を開始したりといった取り組みを加速した。

 さらに2024年8月からは、サイボウズ オフィシャルコンサルティングパートナーとして、サイボウズのkintoneとの連携を強化するとともに、kintoneのライセンス販売を開始。加えて、リコーの協力を得て、360度画像データの登録支援体制も強化した。

 山下PMCの西村氏は、「b-platform 2.0では、DX推進支援により、b-platformを活用して、どんなことをすべきか、といったところからコンサルティングを行い、b-platformとkintoneの組み合わせによってDXの効果を最大化することができている。Kintoneで開発したアプリを活用し、建物に関する情報、施工した企業の情報、工事履歴などと、b-platform上の資産情報を連携し、画像情報とデータベースをシームレスに行き来しながら、業務の生産性を高めることができる」としている。

b-platform 1.0から2.0へ

 山下PMCでは、Kintoneを活用することで、自治体向けに最適化した「b-platform for 公共施設マネジメント」を新たに開発。約1年の実証実験を通じて改良を加え、公共施設等総合管理計画や個別施設計画の各段階において、必要な機能をパッケージ化している。2025年6月10日から提供を開始したところだ。

3つの観点で協業を推進

 今回の協業では、3つの観点から推進することになる。

協業の3つの柱

 ひとつめは、共同マーケティングである。リコーの窓口で、b-platformの申し込みや、無料デモ体験の申し込みを可能にしたほか、山下PMCのb-platform窓口で、RICOH 360 THETA関連製品の購入申し込みが可能になる。山下PMCでは、建物内部の写真撮影時の推奨環境としてRICOH360 THETAを製品カタログに記載する。

 山下PMCの西村氏は、「両社が保有するノウハウと知見、ならびに販売チャネルをもとに共同マーケティングを実施し、さまざまな業種やチャネルに向けて、b-platformとRICOH 360 THETAを訴求する。これにより、顧客が抱える施設管理上の課題解決やDXの導入を支援する」という。

 また、共同でのオンラインセミナーを開催し、事例をもとにして、RICOH360とb-platformの組み合わせによる施設管理を提案する。

 2つめは、b-platformユーザー向けに、「RICOH360 プレミアムパッケージ」を提供することだ。360度カメラ「RICOH360 THETA X」と専用三脚、物損補償およびサポートをパックにしたレンタルサービスで、ソリューションを組み合わせたワンストップでの契約が可能になる。

360度カメラの「RICOH360 THETA X」

 山下PMCの西村氏は、「建物内部のデジタル化に必要な撮影機材をレンタルで提供する。機材を購入しなくて済むことに加えて、故障時は代替機が迅速に提供されるといったメリットがある。ヘルプデスクもリコーが対応するため、IT部門などへの負担も削減できる。さらに、b-platformの月額費用とレンタル費用を組み合わせたランニングコストとして計上したいという企業にも適している」という。

 そして3つめは、b-platformとRICOH360の機能連携である。それぞれの機能をAPI連携することで、撮影からデータ活用まで全体のプロセスを効率化するためのサービス連携の検討を進める。

 具体的には、リコーが持つAI技術を活用して画像に自動的なマスクをかけたり、暗く写っている箇所を、業務に使用する上で必要なレベルにまで明るくしたりといったことが自動的に行える。さらに、RICOH360 THETA Xで撮影した画像データを自動的にb-platformに集約したり、操作する人がデバイスに詳しくなくても、簡単に360度画像が撮影ができるように設定をシンプル化したりといったことを通じて、利便性の向上を図る。

 リコーの山本氏は、「リコーでは、独自開発のAIを含めて、ソリューション領域におけるAI活用に注力している。今後のb-platformとの連携においても、AI活用が重要なテーマになってくる」と述べ、AIを活用した進化を示唆した。

 また、山下PMCの西村氏は、「360度の画像を使用することで、現場の理解が進みやすいという認識はある。だが、現時点では、360度画像を活用した施設運営サービスが広がっていないのが現状である。この分野でのニーズは間違いなくある。リコーと一緒になって、360度画像を利用した新たな市場を開拓していきたい」と語った。