ニュース

富士通、「MetaArc」ブランドの新サービス3つを発表 記者会見を開催

「プライベートクラウドでは国内シェアナンバーワンを目指す」

 富士通株式会社は17日、デジタルビジネスプラットフォーム「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」(以下、MetaArc)を強化。新たなサービスとして、「FUJITSU Infrastructure System Integration MetaArcグランドデザインサービス」、「FUJITSU TransMigration K5移行サービス」、「FUJITSU Cloud Service U5」などを提供すると発表し、記者会見を開催した。

3つの新サービス

 富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏は、「今回の強化は、デジタル革新に対応できるスキル、ノウハウを持った人材がいない、検証および実証に時間がかかりすぎ、途中で頓挫してしまうこともある、あるいは投資額が莫大になるため、デジタル革新が進まないという顧客の声に対応したものになる。クラウドサービスというよりも、その周辺に位置づけるインテグレーションなどの上流サービスの強化になる。ここに富士通の強みがある」と位置づけた。

富士通 執行役員常務 グローバルマーケティング部門長の阪井洋之氏

 また、MataArcの現状については、「昨年9月のMetaArcの発表以降、半年間で約1000件の商談実績がある。4月末時点で、180システムが稼働しており、そのうち富士通社内が130システム、顧客が50システム。K5成約案件のうちSoRが7割を占め、既存システムからの移行案件は半数以上になる。2010年から本格導入された仮想化基盤の更改時期を迎え、クラウドファーストに沿って、仮想化からクラウド移行が進展している」などとした。

 また、富士通では、5年間をかけて640の社内システムをK5へ移行することを目指しているが、現時点で65システムと、約1割を完了していることを示す一方、SE部門では520部門中30部門、事業部門では160部門中70部門で移行が完了。SaaSインフラでは130種類中5種類が、K5に移行を完了したという。

 「社内システムのクラウド移行の結果、オートスケールおよびマルチテナントの活用により仮想マシンの数は2分の1に減少。インフラ構築の簡易化により導入期間を8分の1に、全社システム横串のインフラ監視と自動運用により運用工数を3分の2に削減できた」という。

デジタルビジネスプラットフォームのMataArc
最先端のオープン技術を採用
MataArcのデリバリ状況
MataArcの商談状況と稼働実績
K5の社内利用状況
社内システムのクラウド移行による効果

 今回発表したFUJITSU Infrastructure System Integration MetaArcグランドデザインサービスは、富士通のセキュリティやネットワークなどの専門家ら、約500人で構成される専門チームが、マルチクラウドやハイブリッドクラウドも含めた最適なシステムの全体設計と移行計画の立案、実際の構築までをトータルで提供。各業務システムに要求されるサービスレベルやセキュリティ要件など、複数の観点から分類し、それぞれのレベルごとに標準化を徹底する業務仕分けアプローチを適用することで、複雑化したシステム基盤を全体最適化した上で、モダナイゼーションを迅速に行える。価格は個別見積もりとなっている。

FUJITSU Infrastructure System Integration MetaArcグランドデザインサービス
さまざまなレベルに対応可能なクラウドモデル

 FUJITSU TransMigration K5移行サービスは、LinuxやWindowsをベースとした既存システムを、FUJITSU Cloud Service K5へ移行するサービス。同社が2015年10月に買収した仏UShareSoftの移行自動化ソフトウェア「UForge(ユーフォージ)」を活用。既存システムを移行する際に必要となるOSやミドルウェア、業務アプリケーション、個別設定情報などの必要情報を自動的に収集し、K5に一括して移行させるため、移行時間を従来に比べて約3分の1に短縮できる。価格は個別見積もりとなっている。

FUJITSU TransMigration K5移行サービス

 FUJITSU Cloud Service U5は、長年のUNIXサーバー開発ノウハウをベースに、Oracle Solaris環境をIaaSとして提供するサービス。国内で6万台が稼働しているSoralisをベースとした既存システムを、クラウド環境に移行できるほか、富士通のUNIXサーバーと連携したハイブリッドクラウド環境の構築が行える。価格は月額13万2900円(税別)からとなっている。

 富士通では、さまざまな要件に対応するため、UNIXサーバーとU5の両輪で、機能強化を継続していくとした。

FUJITSU Cloud Service U5

 また、富士通では、成功事例をベースとした提案により、デジタル革新を支援する「デジタル革新オファリング」の提供も開始する。300件以上のPoCのなかで得た知見やノウハウに基づいた、最新のICTを活用した成功事例を、ものづくり、デジタルマーケティング、モビリティなど8分野、24テーマをモデル化。これらのモデルの活用とともに、営業、コンサルティング、デザイナーといった各分野の専門チームを250人体制で確立。顧客のニーズを明確化することで、新たなデジタルビジネスの立ち上げに要する時間を、最大で4分の1に短縮できる。

 さらに、デジタル革新に向けた共創ワークショップの場として「FUJITSU Digital Transformation Center」を東京・浜松町に開設。富士通が提供する最新のICT活用事例の体験型デモの実施や、デジタル革新をテーマにした様々な分野の専門家によるセッションを開催。また、顧客との共創による新たなビジネスの立ち上げを目指すワークショップを提供する。

 「デジタル革新に取り組む際に、どこから手をつけたらいいのかがわからない、やりたいことが具体的にイメージできていないといったユーザーに向けて、ワークショップ形式によるデザインアプローチを実践。ビジネス拡大や業務プロセスの効率化に関する構想や、具現化に向けた施策などが明確にできるため、デジタル革新が加速できる」という。

デジタル革新オファリングのテーマ
FUJITSU Digital Transformation Center

 富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長兼CTOの香川進吾氏は、「デジタル革新とは、ビジネスの社会の中核的なプロセス、ワークスタイルをデジタル技術を活用して変革し、システムが人に近づき、人を革新するものであり、これにより、コモディティ化している環境を差別化しやすくすることができる。いまや、CEOやCIOは、ビジネスのデジタル化、デジタル革新に大きな期待を寄せており、ますますCIOの役割が重要になっている。CDOと呼ばれるデジタル革新担当役員も登場している」と前置き。

 「富士通は、4月1日付けで、デジタルサービス部門を設置。企業のデジタル革新の実現に向け、大きな変革を実行していくベストパートナーになることを目指す。人、モノ、環境のすべてがつながる社会が到来するなかで、安心、安全、便利、快適に生活や仕事ができる『場と価値』を提供する。ここでいう『場』がMetaArcになる。MetaArc上で、IoT、セキュリティ、ネットワークなどを提供することで、つながる、集める、分析する、価値に変換する、最適に制御できるといった特徴がある。こうした大きなサイクルを提供できるのは富士通だけ。これを極めていくことで富士通の価値を高め、グローバルでのエコシステムの強みを発揮したい。クラウド単体で競合と戦うのではなく、インテグレーションを強みにしたい」と述べた。

富士通 執行役員専務 デジタルサービス部門長兼CTOの香川進吾氏
デジタルサービス部門を設置

 なお、2016年度のMetaArcの展開については、金融分野、製造分野を中心に業種・業務特化のPaaS/APIの拡大で60種類を投入。AIやIoTなどのテクノロジーPaaS/APIの強化で20種類を投入するほか、K5では欧州およびアジアなど海外5拠点へ展開していくことを示し、「今後もほぼ毎月のように新サービスを提供していくことになる」(阪井執行役員常務)とした。

 クラウドビジネスの売上高は2015年度実績で前年比21%増の2900億円。2016年度は前年比21%増の3500億円を見込んでいる。

今年度の展開予定サービス

 SaaSの国内シェアは18%、IaaS/PaaSは9%、プライベートクラウドでは19%のシェアを持つ。「IaaSおよびPaaSでは苦戦しているが、今後力を入れていく」(阪井執行役員常務)としたほか、「ニフティを活用することで、PaaSの領域を強化。さらにK5との連携も図る。これにより他社と同等のPaaSが提供できる。富士通が蓄積したSoRの知見も活用していくことも可能である。プライベートクラウドでは、国内シェアナンバーワンを取る」(富士通 デジタルビジネスプラットフォーム事業本部の太田雅浩本部長)と宣言した。

クラウドビジネス目標

大河原 克行