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富士フイルムビジネスイノベーション、AIサービスの開発・提供加速へAWSと連携
AI開発プラットフォームの構築や人材育成などについて協議
2025年5月16日 11:45
富士フイルムビジネスイノベーション株式会社は15日、AIサービスの開発・提供を加速するため、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS)とAI開発プラットフォームの構築などにおける連携に向けた協議を開始する覚書を締結したと発表した。同日には、AWSをパートナーに選定した理由や連携の具体的な内容、今後の展開などについて記者説明会が行われた。
近年、AI技術は急速に進化し、ビジネスや社会のさまざまな領域で活用が進んでいる。一方で、AI技術の利活用においては、企業や組織によって享受できる恩恵に格差が生じる「AIデバイド」が課題となっており、特に日本企業の9割以上を占める中小企業ではAI導入がほとんど進んでいないのが実情だという。
富士フイルムビジネスイノベーションでは、この「AIデバイド」の解消を目指し、企業のビジネス成長に貢献するAIサービスの開発に取り組んでおり、今回、こうした取り組みをさらに加速させ、よりスピーディなAIサービスの開発・提供を実現するため、AWSとの連携に向けた協議を開始するに至ったとした。
富士フイルムビジネスイノベーション 取締役常務執行役員 CTOの鍋田敏之氏は、「昨年7月に私がCTOに着任後、10月にCTO戦略室を組織化・始動した。そして、AI開発・戦略に関する機能を集約しつつ、グループ内のリソースを最大限活用できる体制を迅速に構築。『AIデバイド』解消に向けたAIサービスの開発・提供を高速化するため、自社技術と外部パートナーの積極活用によるOpen&Close戦略を推進している。今回、このOpen&Close戦略の一環として、AWSとの協業を強化し、AI開発プラットフォームの構築などにおける連携に向けた協議を開始する」と述べている。
AWSをAI開発プラットフォームに選定した理由については、「AIビジネスの成長加速」「最新のオープンAI環境の活用」「グローバル展開」の3点を挙げ、「AIサービスの提供に必要なインフラ基盤はAWSの仕組みを活用し、当社はAIの開発や商品・サービス導入にリソースを集中することでAIビジネスの成長を加速させることができる。また、AnthropicやAmazon、Metaなど多様なプロバイダーのAI基盤モデルをAmazon Bedrock上で利用し、最新技術を活用したサービス提供が可能となる。さらに、245の国と地域でサービス提供しているデジタルストア『AWS Marketplace』を活用し、自社サービスをグローバルに展開できる」と説明した。
「当社のAIビジネスの成長ロードマップは、今年から第2ステージに入っている。昨年の第1ステージでは、AIプラットフォームのアーキテクチャ検証や生成AIの高速プロトタイピングの実装検討を行った。そして、今年の第2ステージでは、AWSとの連携によって独自のAI開発プラットフォームを早急に立ち上げ、AIサービス開発の高速化とサービス提供の加速を図る。さらに、次の第3ステージでは、国内だけでなく海外にもAIサービスを展開していく」と、海外展開も視野に入れてAIビジネスを拡大していく計画を明らかにした。
このロードマップを踏まえ、今回のAWSとの連携においては、「AI開発プラットフォームの構築」「人材育成」「グローバル展開」の3つの取り組みについて協議する。具体的には、「AI開発プラットフォームの構築」では、AWSの高い信頼性とセキュリティを備えたクラウドサービスで提供される、幅広いAIおよびML(機械学習)のサービス群を活用し、AIサービス開発者が迅速かつ効率的にAIサービスを開発できるAI開発プラットフォームを目指す。開発者は、AWSクラウド上に構築するこのAI開発プラットフォームを利用することで、これまで個別に行っていた開発環境の運用業務から解放されAIサービスの企画・開発に集中することが可能となる。
「人材育成」では、AI技術を活用した商品・サービスの開発をリードする人材の育成を目的に、新たな教育プログラムを始動する。この教育プログラムは、同社の開発者、サービス企画担当者、現場のシステムエンジニアなどを対象とし、AIサービスの企画・開発力と顧客へのサービス構築力を強化し、顧客への提供価値の最大化を図る。さらに、最新のAI技術を活用できる実践的なトレーニング環境や、新しいAIサービスの企画を迅速化するためのカリキュラムの採用を検討している。同プログラムでは、AWSの支援のもと、AWSが提供する最新のAI技術に関するトレーニング受講や認定資格取得なども推進していく。
「グローバル展開」では、国内市場だけでなくアジアパシフィックや欧米市場へのAIサービス展開を見据え、AWSパートナーが提供するソリューションを検索・試用・購入そして管理ができるデジタルストア「AWS Marketplace」を活用したAI商品・サービスの提供を目指し、協議を進めていく。
記者会見に同席したAWS 常務執行役員 エンタープライズ事業統括本部 事業統括本部長の堤浩幸氏は、富士フイルムビジネスイノベーションとの連携に向けて、「当社では、これまでも富士フイルムグループとさまざまな取り組みを行ってきた。例えば、富士フイルムホールディングスでは、コーポレートのITシステムにおけるクラウド共通プラットフォームにAWSを活用している。また、富士フイルムヘルスケアアメリカでは医用画像情報システム(PACS)『SYNAPSE』がAWS上で稼働しているほか、富士フイルムビジネスイノベーションにおいても、すでに主力サービスの『FUJIFILM IWpro』や『Revoriaシリーズ』がAWS上で稼働している。そして今回、新たにAI戦略の取り組みで連携がスタートすることは、今後の大きなイノベーションにつながることが期待される。当社が提供する高い信頼性とセキュリティを備えたクラウドサービスやAI関連サービスをフルに活用することで、AIビジネスの推進だけでなく、社会に大きなインパクトを与えると確信している」と期待感を示した。
富士フイルムビジネスイノベーションでは今後、富士フイルムグループのIT・AI技術アセットを活用したソリューション・サービスの提供を強化し、2030年度までにソリューション・サービス関連の売上高7000億円を目指す。