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オープン化へ舵を切った「IBM Power Systems」、POWER8搭載機が出荷開始

 米IBMは11日、POWER8プロセッサを搭載する「IBM Power Systems」サーバーの出荷を開始した。

 Linuxをイノベーションの原動力と位置づけるIBMは昨年、Power Systemsサーバー向けLinuxと、そのほかのオープンソーステクノロジを開発するため、10億ドルの投資を行った。主な投資対象は、新製品の開発、Power Systems Linuxセンターのグローバル拠点の拡大、およびx86ベースのアプリケーションをPowerアーキテクチャ上で無償でテストし移植できる開発者向けクラウド「Power Development Platform」などだ。

 また、これまでの方針を変更し、IBM独自のアーキテクチャをオープン化し、サードパーティに開示したのが、Power Systemsの特筆すべき動向。Power Systems上でサードパーティがさまざまな開発が行えるように「OpenPOWER Foundation」というコミュニティも2013年に設立している。今回の新製品でも、開発者はOpenPOWER Foundationを通じて、ライセンスの取得およびオープンな開発が可能となっている。

 今回投入するのは新4機種。このうち3機種はスケールアウト型コンピューティング環境向けに設計されており、Linux、AIX、IBM iなどさまざまなOSを実行できるという。残りの1機種はLinux専用となる。

 これら「新しいPower Systems」を発表した4月には、LinuxディストリビューションのCanonicalとの協業についても明らかにしている。CanonicalはUbuntuのスポンサーで、世界中に2000万人以上のユーザーを擁する。今回出荷開始する製品で、「Ubuntu Server」、「Ubuntu OpenStack」、およびCanonicalのデプロイツール「Juju」の最新版が利用できるようになり、「Power SystemsでUbuntuを利用することで、既存のLinuxアプリケーションをPowerアーキテクチャへ容易に移行できる」としている。なお、Ubuntu以外ではRed Hat、SUSE Linuxにすでに対応済み。

 もう1つ、Linux向けの機能強化として「PowerKVM」が提供される。Linuxベースの仮想化プラットフォーム「KVM」のPower Systems互換バージョンで、Linuxを専用OSとするすべてのPOWER8システムに搭載される。

 新製品は、24億ドルの投資と3年以上にわたる開発、数百件もの特許に基づく成果とのことで、IBMのオープンテクノロジへの取り組みを示すものとなる。企業は、ビッグデータ時代に向けて設計された新製品を活用することで、膨大なデータ要件に対応できるとしており、IBMの社内検証では、Power Systems上でBLU Accelerationを実行しているシステムは、同等構成のx86ベースのシステムと比べ、82倍の速度で分析が行えたという。

川島 弘之