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日本IBM、“柔軟なハイブリッドクラウド”を実現するPower Systems新製品
(2015/5/13 06:00)
日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は12日、ビジネスサーバー「IBM Power Systems」の新製品として、「IBM Power Systems E850」を発表。また最上位機種「IBM Power Systems E880」のアップデートと、ハイブリッド環境構築のためのソリューション拡充も発表した。
日本IBMは、Powerシリーズを「ハイブリッドクラウド時代に向けたインフラ基盤を構成する重要な製品」(日本IBM 常務執行役員 システムズハードウェア事業本部担当の武藤和博氏)と位置づけている。
同社によれば、企業がハイブリッドクラウドを実現する際、クラウドとオンプレミスとの連携にとどまらず、基幹システム、SNSやモバイルといった新しいタイプのシステムとの連携が不可欠とのこと。新製品はSAP HANAとの連携を実現し、別途アプライアンスを用意することなく、1台でSAP基幹システムとSAP HANAとの連携を実現する。
また2013年にスタートした「Open Power Foundation」により、Powerベースのオープンな次世代テクノロジーの拡充を実現。IBM自身もSoftLayerでPowerベースのベアメタル基盤の提供を開始するなど、Powerベースのハイブリッドクラウド環境拡充を進めていく。
今回の新製品について日本IBM 理事 システムズハードウェア事業本部 ハイエンドシステム事業担当の朝海孝氏は、「今回の発表のポイントは、新たな使い方が実現できる点にある。そこで製品からではなく用途から説明を始めたい」と述べ、製品からではなく用途から説明を開始した。
その新しい活用の代表例となる、SAP基幹システムとSAP HANAとの連携は、「IAベースのサーバーを活用した場合、HANAについては別途アプライアンスが必要となる。今回、HANAを活用したSNSなど顧客接点を高めるためのシステム活用と、基幹システム連携を1台で実現する。さらに、HANAのような高パフォーマンスのシステムを稼働させる場合、どの程度メモリが必要となるのか、予測が難しかった。今回、従量課金型投資で済ませることができる」(朝海氏)という。
実際に、NTTデータがパフォーマンス検証を行ったところ、従来は1時間かかっていたSAPレポートの実装速度が、数分で完了したとのこと。
なお、メモリの従量課金型投資とは、キャパシティ・オンデマンド(CoD)による、未起動プロセッサとメモリの動的起動を指す。急激なシステム負荷増加に対して、未起動のプロセッサ、メモリを活用することで、HANAのようなハイパフォーマンスシステムを利用する場合でも、最大限のメモリをあらかじめ購入しておかなくても済むようになる。
オープンな次世代テクノロジーへの対応としては、IBM、Googleなどが集まって2013年8月に発足したOpen Power Foundationに22カ国、110以上のメンバーが参加した。日本企業としては日立製作所、東北大学、早稲田大学などが参加している。
早稲田大学では、基礎理工学部情報工学科の笠原研究室が、大容量トランザクションの省電力処理による社会イノベーションの実現研究のために、Open Power Foundationに参加。公開されているPOWER8チップの仕様を活用し、POWER8対応コンパイラを開発することで、さらなる省電力化の実現、Foundationへ参加するメンバーとのコラボレーションにより、実社会でのイノベーションの実現などを期待している。
日本IBM自身も、SoftLayerにおいてPOWERベースのベアメタル基盤の提供を開始し、プライベートクラウド環境での従量課金体系を提供することで、「パブリッククラウド、オンプレミスと自由にクラウド環境を行き来する真のハイブリッドを実現する基盤を提供する」(朝海氏)ことを進めている。
新製品となる「IBM Power System E850」は、4ソケット・システムクラスで初めて、メモリ容量やCPUを柔軟に拡張できるCoD機能を搭載。最大70%の使用率を保証する。ターゲットとしているのは、マルチテナントワークロードを安全かつ効率的に展開したいと考えるクラウドサービス事業者や、中規模から大規模の企業。ビジネスニーズの増減に合わせて最適化される最大2TBのメモリを搭載可能で、インメモリデータベースを使用してデータへのアクセスを高速化する基盤としても最適な製品となる。価格は最小構成で1398万円(税別)。6月5日から出荷を開始する。
「CoDにより、エラーが頻発しているなど故障が起きそうなプロセッサを切り離し、未起動なコアがあれば、自動的に稼働することで、アプリケーションを停止することなく、パフォーマンスの劣化なしに、連続稼働を実現する」(日本IBM システムズハードウェア事業本部 Power Systemsエバンジェリストの伊東成倫氏)。
機能を拡充した「IBM Power System E880」は、プロセッサを最大192コアまで、メモリを16テラバイトまで拡張可能となった。2015年6月5日から出荷を開始する。
またスケールアウトモデルについては、I/Oドロワーを構成することが可能となった。筐体にアダプタスロットを追加でき、「ホットプラグに対応し、稼働中に交換が可能。構成するI/Oの追加により、大量のデータ処理、可用性向上を実現する」(伊東氏)という。
今後の製品開発についても、「POWERプロセッサ開発には毎年3600億円の投資を行うことを表明。すでにPOWER9のデザインも完了し、製品化に向けた開発作業が進んでいる」(伊東氏)と、さらなる機能進化をコミットした。
新製品の拡販に向けた施策としては、SAPジャパンの社内にPower Systemsの実機を設置し、検証や導入支援を行う体制を確立する。
またハイブリッドクラウド構築に悩むユーザーに対しては、日本IBMのアーキテクトが無償でコンサルテーションを行い、インフラの対応状況診断、データ活用基盤のイメージ、ロードマップ作成などを行う。
さらに今回、顧客接点を拡充するため、POWER8搭載のLinux専用機を96万円で提供するキャンペーンをスタート。ハイブリッド環境構築を全方位体制で支援していくとしている。