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日立、「2015 中期経営計画」を発表~2013年度連結決算は営業利益が過去最高に

 株式会社日立製作所(以下、日立)は12日、2015年度を最終年度とする「2015 中期経営計画」を発表した。

 2015年度の業績見通しは、売上高が10兆円、営業利益率が7%超、当期純利益が3500億円超、一株当たり当社株主に帰属する当期純利益は70円超、製造・サービス等株主資本比率は30%超を目指す。

 そのなかで、日立の東原敏昭 執行役社長兼COOは、「成長の実現と日立の変革」をテーマに掲げるとともに、「中期経営計画の着実な実行とさらなる成長を目指す」と宣言。サービス事業を強化し、イノベーションを実現する「イノベーション」、社会イノベーション事業をグローバルに提供し成長する「グローバル」、業務のグローバル標準化と変化に迅速に対応する経営基盤の確立による「トランスフォーメーション」の3点を挙げた。

日立の東原敏昭 執行役社長兼COO
2015年度の目標

インフラシステムと情報・通信システムが成長をけん引する

 事業成長の向けた施策では、継続事業として、社会イノベーション事業の伸長に触れ、さらに、新たな施策として今回の中期経営計画への取り組みを掲げた。

 社会イノベーション事業では、プロダクト、IT、サービスの提供により、イノベーションを実現。情報・通信システムグループではサービス事業への注力を進める一方、インフラシステムグループでは、グローバル事業の拡大に取り組む。また、中期経営計画達成施策として、アジアでの成果に加えて北米、中国での事業を拡大するグローバル戦略を推進。売上高拡大をけん引するためのプロダクト強化、収益拡大をけん引するサービス事業の拡大、キャッシュ創出力を強化するHitachi Smart Transformation Projectの進化に取り組む姿勢を強調した。

 社会イノベーション事業のなかの注力分野のひとつとなるITサービスについては、北米を中心にソリューション販売体制を強化。日立コンサルティングと、日立データシステムズを核として、ビッグデータソリューションを軸に展開する考えだ。

 例えば、ビル向け省エネルギーソリューションでは、日立コンサルティングがコンサルティングを行い、日立産機が商品としてのインバーターを提供。ファイナンス面では日立キャピタルと連携したソリューション提案を例にあげ、「日立グループが持つプロダクト、サービスをソリューションとしてまとめて顧客に提供し、収益拡大に結びつける」などとした。

 さらに、国内事業に関しては、国内のインフラ再構築に向けてイノベーションを提供する考えを示し、金融分野においては、24時間トレーディング対応などの国内大手銀行案件の拡大をはじめとして、年間で約1兆7000億円のIT投資規模があると想定。さらに、公共分野では、年金一元化や番号制度の導入、行政情報システム改革などにより年間1兆6000億円のIT投資規模を想定。また、電力改革による広域運用システムや需要家情報管理システムなどのIT需要が見込めるとしている。

 そのほか、プロダクト強化という観点からは、売り上げ拡大ポテンシャルの大きい製品群の重点強化、サービス・ソリューション事業の核となる製品群の育成を方向性に掲げる。そのなかでストレージにおいては、機能・性能で他社をしのぐ次世代ITプラットフォームの提供に取り組む姿勢を示した。

 また、ITプラットフォーム事業においては、ビッグデータ利活用の価値創出などの大容量データへの高速アクセスへの需要や、ビジネス環境の急激な変化に柔軟に対応が可能な拡張性を持ったシステムを提案。具体的な製品として、2014年4月に発表したエンタープライズ向けストレージプラットフォーム製品「Hitachi Virtual Storage Platform G1000」により、従来比3倍のデータアクセス性能を持ち、新開発の仮想化技術により、無停止のままシステム拡張が可能であるという特徴を強調してみせた。

 東原社長は、「中期経営計画の達成に向けては、インフラシステムと、情報・通信システムが成長をけん引することになる」と発言した。

中期経営計画の会見には中西宏明 会長兼CEO(左)も参加した

2013年度は増収増益、過去最高益を記録

日立の中村豊明 執行役副社長兼CFO

 一方、2013年度(2013年4月~2014年3月)の連結業績は、売上高は前年比6.4%増の9兆6162億円、営業利益は同26.3%増の5328億円、税引前利益は同64.9%増の5681億円、当期純利益は同53.1%増の3640億円となった。

 日立製作所の中村豊明 執行役副社長兼CFOは、「売上高は情報・通信システム部門、社会・産業システム部門、その他部門、電子装置・システム部門が前期を上回り、営業利益および当期純利益では過去最高益を更新。営業利益率では23年ぶりに5.5%を超えており、部門別では、すべて黒字化している。中期経営計画で掲げている2000億円の最終利益を維持するという水準を維持している」という。

 コスト構造プロジェクトであるHitachi Smart Transformation Projectでは1100億円の効果があったという。

 国内売上高は前年比1%減の5兆3034億円、海外売上高が前年比17%増の4兆3127億円。海外売上高比率は45%になった。

情報・通信システム部門の実績と見通し

 事業グループ別の売上高では情報・通信システムの売上高が、前年比31%増の2兆5661億円、営業利益は前年から3億円増の1265億円、EBIT(Earnings before Interests and Taxes)は前年から135億円減の1119億円となった。事業部門別による情報・通信システムの売上高は、前年比9%増の1兆9549億円、営業利益は前年から53億円増の1100億円、EBITは同56億円減の985億円となった。

 情報・通信システムのうち、ソフトウェア/サービスの売上高は前年比11%増の1兆3772億円。そのうちソフトウェアの売上高が同3%増の1662億円、サービスが同13%増の1兆2109億円。ハードウェアの売上高は同5%増の5776億円。そのうち、ストレージの売上高は同11%増の2255億円、サーバーは同5%増の832億円、通信ネットワークは同13%減の1072億円。その他の売上高は同11%増の1616億円となった。また、ストレージソリューション事業は、売上高が16%増の同4390億円となった。

 「サービスやATMなどの売り上げが増加。為替の影響も増収影響となった」という。

 なお、クラウド事業に関しては、2012年度の2000億円の売り上げ規模が、2013年度は2600億円の実績とした。2015年度には5000億円を目指す計画だ。

事業グループ別の業績

 一方、事業グループ別の業績は、インフラシステムの売上高は前年比10%増の3兆4542億円、営業利益は前年から362億円増の1205億円。電力システムの売上高は前年比14%減の7773億円、営業利益は前年から131億円減の167億円。

 建設機械は売上高が前年比4%減の7773億円、営業利益は前年から131億円減の167億円。高機能材料の売上高は前年比2%増の1兆5121億円、営業利益は前年から479億円増の1093億円。オートモーティブシステムの売上高は前年比11%増の8921億円、営業利益は前年から119億円増の473億円。

 金融サービスの売上高は前年比1%減の3385億円、営業利益は前年から38億円増の331億円。その他部門の売上高は前年比6%減の2630億円、営業利益は前年同期から18億円悪化の70億円となった。

 なお、部門別でのデジタルメディア・民生機器の売上高は前年比9%増の8908億円、営業利益は100億円改善し、46億円の黒字に転換した。

2014年度は減収減益予想

2014年度の連結業績見通し
部門別の業績見通し

 2014年度(2014年4月~2015年3月)の連結業績見通しは、売上高は前年比2.2%減の9兆4000億円、営業利益は同5.1%増の5600億円、税引前利益は同10.2%減の5100億円、当期純利益は同6.6%減の3400億円とした。

 事業グループ別の売上高では情報・通信システムの売上高が、前年比2%増の3兆4700億円、営業利益は前年から389億円増の1620億円、EBITは同412億円増の1510億円とした。また、事業部門別による情報・通信システムの売上高は、前年比1%増の1兆9500億円、営業利益は前年から294億円増の1360億円、EBITは同296億円増の1260億円とした。

 「情報・通信システムでは、2008年度の1384億円が過去最高。これを超えたい。通信ネットワーク事業が需要減少の影響があるが、ストレージソリューションや業務運用サービスなどの拡大を図ることで増収を目指すほか、サービスにおけるプロジェクト管理の強化を徹底することで増益を目指す」(中村副社長)とした。

 情報・通信システムのうち、システムソリューションの売上高は前年比4%増の1兆1709億円、営業利益は同48%増の701億円。プラットフォームの売上高は同5%増の8658億円、営業利益は同9%増の565億円。通信ネットワークの売上高は同19%減の1762億円、営業利益は同33%減の46億円となっている。

 事業グループ別の業績予想は、インフラシステムの売上高が前年比3%増の3兆4700億円、営業利益は前年から360億円増の1740億円。電力システムの売上高は前年比33%減の5200億円、営業利益は117億円減の50億円。

 建設機械は売上高が前年比2%減の7500億円、営業利益は前年から20億円増の760億円。高機能材料の売上高は前年比3%増の1兆4000億円、営業利益は前年から62億円増の1080億円。オートモーティブシステムの売上高は前年比5%増の前年から9400億円、営業利益は前年から126億円増の600億円。金融サービスの売上高は前年比3%増の3500億円、営業利益は前年から1億円減の330億円。

 なお、部門別のなかで、新たなセグメントとした生活・エコシステムは、売上高は前年並みの7400億円、営業利益は41億円増の240億円の見通しとした。

 「国内消費税率の引き上げ前の駆け込み需要の反動の影響があり、国内は4%減となるものの、海外事業は7%の拡大を見込む。国内白物家電は主要6製品において、28カ月連続でのトップシェアを維持している。その他部門となるデジタル家電については改革がほぼ完了した」と述べた。

大河原 克行