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日本HP、DevOps支援ソリューション群を発売開始

開発サイクルの全体最適化をサポート

 日本HPは30日、ソフトウェアの開発効率化・品質向上等を実現するALM(アプリケーションライフサイクル管理)ソリューションの新しいラインナップを発表し、同日より出荷を開始した。

 今回発表されたのは、統合プラットフォームの新版「HP Application Lifecycle Management(ALM) 11.52」と、テスト環境および本番環境のシステム構築を自動化する新製品「HP Continuous Delivery Automation(CDA) 1.2」、性能・品質を管理するツールの新版「HP Performance Center 11.5」および「HP Quality Center 11.5」の4種類。

 これらのソリューションにより、ソフトウェア開発における各種管理を効率化するのに加え、検証時に必要な環境構築を自動化し、開発部門と運用部門の業務効率と連携性を向上させる。開発のスピードアップとシステム変更のリスク軽減を目指した概念「DevOps」の促進につなげ、開発サイクル全体の最適化と短縮を実現するという。

 価格は「HP ALM 11.52」が90万7200円から、「HP CDA 1.2」が462万円から、「HP Performance Center 11.5」が1097万5650円から、「HP Quality Center 11.5」が67万2000円からとなる。

開発と運用の“壁”を打ち破る

日本ヒューレット・パッカード株式会社 常務執行役員 HPソフトウェア事業統括 中川いち朗氏

 発表では、初めに挨拶に立った日本HP 常務執行役員 HPソフトウェア事業統括 中川いち朗氏が、新しい製品群をリリースするに至った背景を説明。「弊社の運用を自動化する製品(HP Business Service Automation)が2012年に爆発的に売れ、1年間だけで日本のTOP 10のデータセンターのおよそ7割が導入した」という実績をアピールしつつ、日本全体の傾向としてもデータセンターにおける自動化が格段に進んでいると語った。

 同社の「QuickTest Professional」や「LoadRunner」といった機能・パフォーマンステスト用の自動化ツールが国内で40%のシェアを占める。しかし、自動化という意味ではまだそういった一部の機能に止まっているのが実情だという。自動化の領域を開発の分野にまで広げ、さらに運用への連携も踏まえた自動化を考慮した、まさしく「DevOps」を実現するためのソリューションが市場で求められているとした。

 多くの開発プロジェクトは計画、開発(デリバリー)、運用というサイクルからなっているが、その中の開発(デリバリー)にも要件・開発・テストというサイクルがある。最近ではこの開発におけるサイクル自体のスピードアップが求められており、一方で運用に関わるサイクルのスピードアップも望まれている。しかしながら、この両者のサイクルは「スピード感が必ずしもかみ合っていない」。

 中川氏は、「開発と運用の“壁”を打ち破って連携をスムーズにするため、ビジネスとして早く売って出ることが重要になってくる」と述べ、今回発表した製品群はこの“壁”を取り払うことをコンセプトとしていると述べた。

 これまでは、本番、ステージング、検証、開発というステージごとにシステムインフラ(サーバー)を用意しなければならず、それらの環境に即した形で新規開発した成果物をインプリメントし、テストを行う必要があった。しかしこの場合、人の手だけではなかなか対応しきれず、スケジュールの遅れや運用との連携ミスなども起こりがちだ。それを支援するのが同社が新しく提供する「CDA」であり、この「CDA」がうまく稼働するようにアプリケーションライフサイクル全体を見据えた設定、準備を行えるようにしたのが「ALM」の新しい機能強化ポイントだという。

HPソフトウェアポートフォリオ
HP ALMとDevOps
DevOps実現のためのソリューション
HPの運用自動化技術と品質管理技術でDevOpsを実現

多数の環境構築を迅速・効率化するオートメーション機能

日本ヒューレット・パッカード株式会社 HPソフトウェア事業統括 アプリケーションライフサイクルマネジメント事業本部 藤井智弘氏

 次に、今回の新製品である「CDA」について、同HPソフトウェア事業統括 アプリケーションライフサイクルマネジメント事業本部の藤井智弘氏が詳しく解説した。

 ソフトウェア開発のプロジェクトにおいては、コード開発・修正、ビルド、機能・パフォーマンス等の各種テスト、ユーザー受け入れテスト、リリース(運用)というステージに大まかに分けることができる。

 開発から各種テストの中盤まではテスト環境で、それ以降からユーザー受け入れテストまではより本番に近い環境で、リリース後の運用は本番環境でそれぞれ行われ、環境ごとにコンフィギュレーションなどが異なることがある。社内においては、開発は開発部門で、運用は運用部門で、といった切り分けがなされていることも多く、部門内ではコミュニケーションが取れていても、部門間ではしっかり連携が取れていないことも珍しくない。

 さらに細かく例を挙げると、テスト用のシステムと本番用のシステムが、自社内やクラウド上などに分散していたり、そもそもプロジェクト単位で別のシステムやツールを用意している場合もある。使用するツールの選定は現場任せで、組織的に統一して品質を担保していることはなく、成果物の品質に差が出やすい状態になっていることも少なくない。

 これらを踏まえ、まず、ソフトウェアのテストからリリースに至るまでのプロセスには4つの課題があると藤井氏は指摘。1つめは「手作業やコミュニケーションロスによる無駄が多く、環境の不整合やオペレーションのミスが頻発」すること、2つめは「テストが多様化・複雑化し、管理しきれず、ガバナンスも効かない」こと、3つめは「OS、ミドルウェアの維持管理が複雑化」していること、4つめは「テストに関わるリソースの無駄、低い稼働率、低いガバナンス」であるとした。

 これらを解決する手段として同社が新たに提供するのが、今回発表した「ALM」の新版と「CDA」となる。このうち「ALM」については、“ラボマネージメント オートメーション”と位置づけ、テストプロセスにおける自動化と業務改善を図ることが可能な機能が追加されている。

 たとえば、テストの内容によって、そのテストを実行するための適切な設定やモジュール、ツールなどがテスト環境に含まれていなければならず、次の別のテストを行う段階ではそれとは異なる設定やモジュール、ツールなどがセットされている必要がある、というような場合がある。

 ソフトウェアやハードウェアをどのように動かすか、といった動作特性を変えることもあるだろう。「ALM」では、これら各々のコンフィギュレーションや動作特性を“定義セット”として用意しておき、各環境ごとにあらかじめひもづけてパターン化しておくことで、テストごとに適切なコンフィギュレーションに切り替え、ミスなく環境構築してテストを行えるという。

 また、“スケジュールベース”のテストの一括実行という機能も備える。複数の異なるプロジェクトでテスト環境に別々のコンフィギュレーションが必要になる場合であっても、あらかじめテスト環境側でスケジュールに沿ってコンフィギュレーションを変更する仕組みを導入しておくことで、テスト環境を1箇所のサーバー群にまとめ、資源を有効活用しつつ、管理や維持にかかるさまざまなコストを低減することができるようになる。

 この仕組みを応用することで、日中はコーディングを行い、夜間はテストを自動実行する、といったスケジューリングも考えられる。部分的なテストを随時行うのではなく、トータル的なテストをスケジュールに則って前倒しで実施していくことにより、早い段階から高い品質で作り込むための助けにもなるとした。

 一方、新製品の「CDA」は“アプリケーションリリース アクセラレーション”という位置づけで、テストを行うソフトウェアの動作に必要なプラットフォームやアプリケーション等のデプロイに関する自動化を行うものとなる。

 前述の通り、テストプロセスでは開発環境、各種テスト環境、ステージング環境など複数の環境があり、それぞれで必要とされるプラットフォームやアプリケーション、システム構成も異なることがある。テスト環境まではMySQLを利用していたものが、ステージング環境ではOracleになったり、マシン構成においてはCPU数が変わることもあり得る。通常であれば、それらの組み合わせの数だけ物理マシンやVMを用意し、パッチもマシンごとに当てなければならず、管理の手間は膨大なものとなる。

 「CDA」では、「ALM」における“定義セット”のように、こういった各ステージで必要とされるプラットフォーム、アプリケーション、機器構成などといった環境定義をバラバラの状態でパーツ化しておき、それらを組み合わせることでマシンイメージを作り上げる、という手法を実現する。この中にデプロイのプロセスやアンインストールの手順までモデル化して組み入れることで、環境構成の複雑さにも無理なく対応でき、パーツごとにパッチを当てておくことも可能なため、維持・管理も容易になるという仕組みだ。

 構築、デプロイ、プロビジョニングという個々のステージや、テストから次のステージに移る際のプロセスも同様にモデル化。ステージ間の“ゲート”を通過するステップを設けることで、通過させるか否かの承認を経てから次のプロセスに移行でき、通過した場合は次のステージで必要となるプラットフォーム等が自動でデプロイされる。このようにテストプロセス全体のワークフローを定義できるのが「CDA」の最大の特長だという。

ALMやCDAを最大限に活用するための支援策も

 最後に、同HPソフトウェア事業統括 アプリケーションライフサイクルマネジメント事業本部 事業本部長の大塩禎之氏が登壇し、ALMソリューションの今後の販売戦略について語った。

 同氏は、「今回発表した製品を単に販売・提供するだけでなく、これらの製品を有効に活用するための品揃えが重要」とし、開発・運用の責任者を交えたワークショップを開催したり、同社の品質モデルに基づく品質改善コンサルティングなどを提供する計画を明らかにした。ALMやテスト自動化ツールに関するシステム構築、CDAの構築支援といったサービスメニューも取り揃え、コンサルティング会社や大手SI、販売パートナーとの協調も積極的に推し進め、「これらを最大限に活用して顧客のDevOpsの実践に貢献したい」と話した。

 なお、具体的な目標販売数については触れなかったが、DevOps関連製品で年間10億円規模の売上を見込んでおり、ALM製品への期待値は高い。同社では6月以降、ALM製品の事例セミナーや、パートナー・SI向け個別セミナー、ソリューション・事例紹介コンテンツの提供など、数々のプロモーション施策を立て続けに実施する計画だ。

(日沼 諭史)