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富士通がSupermicroとの提携を拡大、GPUサーバーのOEM提供や保守サービスなどを6月より開始

ハードと保守、統合管理ツールなどを組み合わせたマネージドサービスも

 富士通株式会社は23日、Super Micro Computer(Supermicro)との提携を拡大すると発表。富士通は、SupermicroからGPUサーバーをOEM調達し、「PRIMERGY GX2570 M8s」として2025年6月から提供を開始する。

 また今後も、同社からのOEMによりGPUサーバーのラインアップを拡充する考えも示した。あわせて、富士通のサポートインフラを活用して、世界初となる水冷サーバーとGPUサーバーを含む保守サービスを提供。さらに富士通の大規模言語モデル(LLM)「Takane」と、OEM製品、保守サービス、統合管理ツールなどを組み合わせたマネージドサービスの提供も開始する。

 本誌の取材に応じた富士通の古賀一司執行役員専務は、「Supermicroと提携することで、GPUサーバーを、スピード感を持って市場に提供でき、お客さまのニーズに迅速に対応できるようになる。今回の提携では、Supermicroが新製品を投入するのとほぼ同じタイミングで、富士通ブランドのGPUサーバーを提供できるようになる。そのために、事前に情報を共有したり、富士通の品質によるテストを行ったりする」と説明。

 さらに、「保守サービスを富士通が提供することで、日本のユーザーにも安心して利用してもらえる。Supermicroの製品を、Supermicro以外の企業が保守サービスとして提供するのは、富士通が世界で初めてとなる。生成AIを活用する際に、お客さまが持つデータをセキュアに活用しないとビジネスに使いにくい、という声に対応できる。今回の提携拡大によって、GPUサーバーをオンプレミスで活用できる環境を迅速に実現。安全な生成AI活用を促進する革新的な一歩となり、お客さまのビジネス拡大に貢献できる」と述べた。

富士通の古賀一司執行役員専務

 富士通とSupermicroは、2024年10月に戦略的協業を発表。富士通が開発する次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」を搭載したAIコンピューティングプラットフォームを、2027年から提供する計画を発表していたほか、次世代グリーンデータセンターやHPC向けの水冷ソリューションの共同開発を発表している。

 さらに2025年4月には、ニデックを含めた3社による協業を発表し、エネルギー効率に優れたデータセンター運営を可能にするソリューションを開発。富士通の館林データセンターにおいてソリューションの効果検証を行い、2025年度第4四半期までに、世界トップレベルのPUEを実現するデータセンター環境を提供することを明らかにしている。

 今回の富士通とSupermicroとの提携拡大も、昨年からの戦略的協業をベースにしたもので、4つの内容が盛り込まれている。

 ひとつめは、SupermicroのGPUサーバーを富士通がOEM調達。その第1弾製品として、エフサステクノロジーズを通じて「PRIMERGY GX2570 M8s」を販売する。

 同製品は、10Uサイズの空冷と4Uサイズの水冷の2種類から構成。最新GPUであるNVIDIA HGX B200を搭載し、大規模生成AIの活用提案などを行う。

 今後、SupermicroからのOEM調達を増やし、GPUサーバーのラインアップを強化する考えだ。

 古賀執行役員専務は、「GPUサーバーを品ぞろえするには、Supermicroとの提携が最適解であると考えた。日本のユーザーが必要とする製品は、OEMによって広くラインアップしていく。GPUサーバーであるPRIMERGY GXシリーズを中心にして、品ぞろえを増やしていくことになる」と述べた。

 基本的には、富士通がOEM調達したSupermicro製サーバーを販売するが、最新技術を活用した正式出荷前の製品をテストしてみたいといったユーザーの要望に応じて、富士通ブランドではないSupermicroのサーバーを先行的に販売するケースもあるという。さらに特殊な用途に限定するなど、数量が見込めない製品に関しては、Supermicroのサーバーをリセールすることも視野に入れている。「GPUサーバーは、OEMとリセールを使い分けていく」という。

 2つめは、富士通が販売したSupermicroのサーバーに対する保守・運用支援サービス「SupportDesk」の提供だ。約4000人のエンジニアと、全国約700カ所の常駐拠点を活用し、約2時間以内でのオンサイト対応を含む、高品質なサポートを提供する。専有環境で運用しているインフラ基盤を、安心して利用できる体制を整える。

 「富士通は、メインフレームやUNIXサーバー、富岳などを通じて、40年以上に渡って水冷技術に取り組んできた実績がある。これは他社にない強みである。さらに、Supermicroとの連携により、エンジニアのさらなるスキル向上にも努めている」という。「SupportDesk」は、2025年6月からサービス提供を開始する。

 3つめは、統合管理ツール「Infrastructure Manager」の提供だ。これまでのツールに、Supermicro製のGPUサーバーと、x86サーバーであるPRIMERGYの統合運用管理機能を追加。エンタープライズ企業が求めるサーバーの導入や監視のほか、GPUサーバーに対するアップデートなどのライフサイクルの管理を容易にするのが大きな特徴になるという。これらよって、ユーザーは、ミドルウェアやアプリケーションの活用に専念することができる。2025年6月から提供を開始する。

 そして、4つめが、これらのOEM製品や保守、統合管理サービスと、富士通の企業向け大規模言語モデルである「Takane」を組み合わせたマネージドサービスの提供だ。

 必要なサイズの生成AIの活用基盤をトータルに提供。ユーザーは、資産を保有することなく、手軽に生成AIを利用する環境が整う。2025年7月より提供を開始する。

 「富士通は、マネージドサービスの提供を通して、お客さまの生成AIの活用基盤の迅速な立ち上げや維持、管理コストの低減を実現でき、生成AI活用やビジネス変革に貢献できる。GPUサーバーをオンプレミスとして運用しながら、資産管理、運用管理、トラブル対応などをマネージドサービスとして、富士通に任せてもらうことができる」としている。

 今後、アプリケーションとの連動などを進め、同サービスを発展させることで、Fujitsu Uvanceのオファリングに位置づけるといった動きも出てきそうだ。

 なお企業において、機密情報や個人情報を取り扱う業務で生成AIを活用する際、生成AIの意図しない学習リスクや情報漏えい、情報の保管場所に対する社内規定などの課題があり、企業からは専有環境が求められている。

 また、生成AIを活用できる専有環境の基盤を構築する際には、サーバーの選定から導入、保守、運用に渡り、高度な専門知識をもつ人員が必要となり、生成AI活用の壁になっている。

 生成AIの活用に必要となる高性能なGPUを搭載したサーバーや保守、運用におけるサポート、サーバーの安定稼働を容易に支える管理ツールが求められており、今回の発表はこうした課題を解決するものになる。

 古賀執行役員専務は、「GPUは需要に対して供給が少ない状況が続くなかで、市場のニーズに最も迅速に応えることができるのが、Supermicroとの協業体制の確立であると考えた。これまでは、大規模データセンターへのGPUサーバーの導入が先行したが、これからは、エンタープライズ分野へのGPUサーバーの導入が本格化することになる。ここに、富士通のGPUサーバーとマネージドサービスが貢献できる。エンタープライズ企業に対して、スピードと品質を提供できる。生成AIを安心して使ってもらう環境を広げることで、日本の市場を元気にしていきたい」と語った。

 なお、欧州市場向けにも、Supermicroから調達したGPUサーバーの提供や、マネージドサービスの提供を行う考えも示している。